「高校時代の人気」が50代の体型を決めていた件について
高校時代の社会的ポジションや学校の質が、いまの健康状態(特に体型)を左右するぞ!ってヘンな研究(R)が出てて面白かったです。
話の出どころはアメリカの社会疫学系の研究で、1980年当時に高校2年生と3年生だった若者を対象に、そこから40年近くにわたって追跡調査を続けたという超長期プロジェクトになっております。対象者は全国でランダムに抽出されていて追跡率も高めなので、「まあまあ信頼できるデータ」と言えるんじゃないでしょうか。
ここで研究チームが注目したのは、高校時代の以下のような要素と、50代になったときのBMI(体格指数)との関係です。
- 通っていた高校の社会経済的地位(SES)
- 自分の家庭のSES
- 進学校かどうか(進学コース vs 非進学コース)
- 高校で人気者だったかどうか
- 高校時点での体重、学歴、収入など
こんな感じで、わりと細かい変数をコントロールしたうえで、「高校の体験はどれぐらい未来の体型に影響を与えるのか?」を調べたわけです。
その結果をざっくりまとめると、以下のような傾向が出ております。
- 高校がお金持ちの地区にある学校であるほど、50歳になってから痩せてる傾向があった
- 進学コースにいた人ほど、未来の体重が低い傾向もあった
- 女子に限り、「高校時代に人気者だったかどうか」が将来の体型に関係し、人気者ほど痩せてるケースが多かった
ということで、「高校の環境」+「家庭の経済状況」+「学校内での立ち位置」が合わさって、人生後半の体型に大きな影響を与えるのではないか、と。
特にこの研究で面白かったのが、「高校時代と中年になってからの体型」という関係が、大学に行ったかどうかや、成人後の収入が多いかどうかを考慮しても残ったという点です。普通は、「良い高校に入る人は、良い会社に入ったりしてお金を持つから痩せやすいのでは?」などと考えたくなりますが、それだけでは説明がつかないわけですね。要するに、高校という思春期の環境そのものに、未来の体験を左右する要素があるわけです。
では、高校時代の何が未来の体型に影響しているのかと言いますと、おそらく以下のような感じかなーと思うわけです。
- 文化的な体型プレッシャーの違い:特に女性は思春期のころから「痩せていないと価値がない」といった社会的プレッシャーを強く受ける傾向がある。そのため、「人気者=痩せてるべき」という価値観が内面化されやすいのだと思われる。
- 早期の社会的成功体験が健康習慣を強化する:高校時代に人気がある人は自尊心や自己効力感が高まりやすいので、ストレス管理や健康習慣の形成が上手いことが多い。結果、長期的に健康状態を保ちやすくなる。
- 人間関係の密度とサポートの違い:高校時代の人気者は友人関係が豊かで、情緒的なサポートが得やすい。これは健康維持に直結する要因の一つで、ストレスや暴飲暴食を抑える力になる。
「高校時代に人気者だったか?」なんてめっちゃ主観的&一時的に見えますけど、実際には数十年後の健康にまで影響してくるってのは面白いもんですなぁ。人間の行動や健康がいかに「社会的文脈」に左右されているかの証拠でありましょう。
ちなみに、この研究では、男子にもある程度の影響は見られたのですが、その効果の強さは女子よりもかなり低かったそうな。その理由としては、やはり「文化的な体型への関心度の違い」が考えられております。男性ってのは、一般的に、体型よりも「収入」や「ステータス」で評価される文化が強いので、思春期の時点で「痩せなきゃ!」というモチベーションがわきにくいんでしょうな。
ってことで、この研究から導き出せる結論は、わりとシンプルでしょう。
- 学校は、知識やスキルだけでなく「健康的な自己認識」を育てる場でもある。
- なので、学校内の社会的格差を減らす施策はマスト。
- 栄養教育や運動の習慣づけは、高校の段階からスタートするのがよさそう。
個人的には、「自分が通っていた学校の空気が、自分のメタボリック傾向に関係してる」ってのは、なんとなく周囲を見ていると納得する結果でしたね。
というと、高校時代に人気がなかった人は落ち込むかもですが、人間の自己認識は、いくつになっても変えられるんでご安心を。「自己像」ってのはわりと変化しやすいシステムであることがわかってきてまして、たとえば以下のようなアプローチを使うことで、高校時代の記憶から自由な自己像を作っていくことができますんで。
- 「小さな成功」の積み上げ:なにはともあれ、「自分はやればできる」という感覚が大事なので、ちょっとした「成功体験」を積み重ねるのが効果的であります。たとえば、「1日10分のウォーキングを2週間続ける」「毎食の野菜量を1品増やす」「夜スマホを30分早く置く」みたいな感じっすね。これぐらい「やれば達成できる」レベルの小さなチャレンジを、無理なくこなしていくのが重要なポイントです。
- ボディ・スキャン:高校時代に健康的な自己像を持てなかった人の多くは、「自分の体に対して批判的すぎる傾向」がありまして、そんな方にはボディスキャン瞑想なども有効であります。詳しくは「ボディスキャン瞑想入門」ご覧いただければと思いますが、これをやってると自己への評価が一時的にオフになって、自分への厳しさがやわらぎますんで。
- 「新しいコミュニティ」を育てる:大人になったら「自分の価値観に合った人たち」を選んで付き合い、自分を肯定的に見てくれるコミュニティを作っちゃうのも、めっちゃ効果があります。新たな人間関係で小さな承認体験を得られれば、高校時代に失われた「社会的自己価値感」を回復させてくれますので。
いずれも実践すれば確実に効果が出る手法なので、お困りの方はお試しをー。