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日本人に売れる商品説明はこれだ!というスタンフォード研究の話

 
 

ネットで商品を売りたきゃ“この言葉”を使え!」みたいな報告(R)を、スタンフォードなどの先生方が発表しておられました。

 

オンラインショッピングでは、「商品説明」が売れ行きを左右するのは当然のこと。商品がいくら優れていても、説明がありきたりだったり、魅力を伝えきれていなければ、そりゃあ売れないですからね。

 

では、どのような言葉を使えば「売れる説明文」になるのかってことで、研究チームは、日本の「楽天」に掲載されている9万件以上の食品や健康商品を対象に、商品説明文と売上データを分析(この分析法がまた面白いんだけど、複雑になるので割愛)。そこから「売上に直結する言葉ってなに?」ってところを調べてくれたんですよ。この手の調査ってのは、文化によって結果が大きく変わることが多いですけど、日本のデータを使っているのがありがたいですね。

 

 

売上を左右するキーワードの正体

では、最も重要な結論から申し上げましょう。この研究で明らかになった「売れる言葉」には、以下のような共通点があったそうな。

 

 

売れる言葉1. 敬意を示す言葉の使用

日本のマーケティングにおいては、「敬意」や「丁寧さ」が非常に重要だとのこと。言語学的に見ても、日本語の敬語や丁寧な表現には、「お客様」「ご満足いただけるよう」など、相手を尊重する姿勢を表す特別な言葉や接頭語が豊富でして、このような言葉遣いには、以下のような効果があったりします。

 

  •  消費者に「自分が大切にされている」という印象を与える:商品説明や接客で「お客様」や「ご満足いただけるよう努めています」などの表現を用いると、消費者は「自分が大切に扱われている」と実感。この感覚が心理的な安心感や信頼感につながり、結果として購買意欲を刺激する。

 

  •  「品質」や「サービス」の信頼性が高まる:丁寧な表現は、「いい加減な対応ではなく、誠意を持っている」という印象を与えやすい。たとえば「ご満足いただける品質」や「丁寧な作り」のように、信頼性を感じさせる言葉遣いを用いることで、商品やサービスの品質への信頼が高まり、購買の決定スピードを高める。

 

とにかく、丁寧さや敬語表現が大事だ!って話でして、これが消費者との心理的な距離を縮め、ブランドの印象を底上げするってのは、いかにも日本って感じがしますな。

 

 

売れる言葉2. 文化的・伝統的なフレーミング

「老舗」「創業○年」などの表現は、日本の消費者に特有の「文化的価値観」を反映させているとのこと。日本人は、「伝統」や「歴史の積み重ね」を大切にする傾向があるので、こうした言葉が、商品に付加価値をもたらしてくれるんだそうな。具体的には、以下のような要素ですな。

 

  •  「老舗」や「伝統」を感じさせる表現が信頼性を強化する:「創業100年」「老舗の技術」などのフレーズは、そのブランドが長年にわたって信頼されてきた証拠と受け取られやすく、消費者に対して「長い歴史の中で築かれた信頼性」や「品質の高さ」を暗に伝える。これにより、消費者は「多くの人々に長く支持されてきた=安全で安心できる」という印象を持ち、購買につながりやすくなる。

 

  •  「季節のイベント」による購買意欲の向上:季節や行事に関連した言葉(「お歳暮」「クリスマス」「母の日ギフト」など)が商品説明に含まれると、消費者は「今がこの商品を購入するのにぴったりのタイミングだ」と感じやすくなり、消費者の購買意欲が自然に刺激される。特に日本は四季の変化が明確で、季節行事やイベントごとに異なる文化的価値が根付いているため、こうしたフレーズが非常に効果的となる。

 

  •  贈り物としての価値を強調:季節や文化に関連する表現は、贈り物としての商品価値も引き上げる。「お歳暮」や「母の日」などの言葉が含まれると、消費者はそれを「大切な人への贈り物として適している」と感じ、個人の使用目的以外の需要もアップする。

 

 

売れる言葉3. 商品内容の詳細を明示

日本の消費者は特に「商品の安全性」や「詳細な説明」に敏感なので、商品説明には十分な情報が求められやすいとのこと。たとえば、成分、産地、製造工程、使用方法などが具体的に記載されている商品説明には、以下のようなメリットがあるそうな。

 

  •  消費者が安心して商品を選べる:たとえば、食品や健康商品など、体に直接影響するものについては特に、産地や製造方法、成分が明確に記されていることが安心材料になる。細かな情報は「自分にとって安全かどうか」を見極める手がかりになるため、購買に至る可能性が高まる。

 

  •  「ニーズに合っているか」を判断しやすくする:使用方法や商品の特徴が詳細に書かれていると、消費者は「自分のニーズに合った商品かどうか」を判断しやすくなる。たとえば、「無添加」「オーガニック」「低アレルゲン」など、特定の特徴や利点が記載されていると、自分にとってメリットがあるかどうかをより明確に判断でき、購入の後押しになる。

 

  •  「長所と短所」をしっかり伝えることが信頼性につながる:詳細な説明があれば、商品が自分のニーズに合うかどうかを消費者がしっかり判断できる。「万能ではないが自分にぴったりの特徴を持っている」という安心感が信頼につながり、売上にも貢献する。

 

 

ということで、いずれも「そりゃそうだよなぁ」って感じですが、「モノを売ろうと思ったら、まず上記3つのポイントにリソースを投じてみればいいんだな……」ってガイドラインを与えてくれるのが良いですね。

 

研究チームいわく、

 

商品説明は単なる情報提供ではなく、企業が消費者と築くコミュニケーションの一環だ。企業は、消費者に対して商品をただの物体としてではなく、ある意味で「物語」として提供する必要がある。

 

とのこと。要するに、「老舗の伝統の味」「職人が一つひとつ手作り」みたいな表現は、いずれも商品にストーリー性を与える機能を果たしているんだって話ですな。

 

ちなみに、この知見は、私たちがネットで買い物をする時にも有用で、商品説明のフレーミング効果を知っておくだけで、「本当に必要な商品か?」と冷静に判断する助けになるでしょうな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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