ヒトの脳機能は70才まで上昇を続ける
年を取ると本当に頭は悪くなるのか
40代を過ぎてから、まわりから「物覚えが悪くなって…」とか「理解力が落ちて…」みたいな話をよく聞くようになった昨今。年齢とともに脳機能が低下するのは間違いなく、ある程度はしかたない話であります。
が、ひとくちに「脳機能の低下」とは言っても、衰えていく能力には年齢ごとに段階がありまして、そのへんをガッツリ調べてくれた論文(1)が出ておりました。
これはハーバード大の研究で、まずは誰でもプレイできる認知テストサイトをいくつか作成(2,3)。3年をかけて300万人分のデータを集めて、どの年齢ごとにどの脳機能が発達するか?を調べたんですね。
経験知は70代まで上昇を続ける
その結果を並べると、
- 情報を処理するスピードは18〜19才でピークを迎え、その後はひたすら下り坂に
- 短期記憶は25才まで上昇を続け、35才のあたりから下り坂に入る
- 他人の気分や感情を読み取る能力(EQに近い)は40〜50代のあいだにピークを迎える
- 言語を操る能力や経験知は、60代から70代前半でピークを迎える
みたいな感じになっております。世代ごとに、各能力のピークがだいぶバラけております。わたしのようなアラフォーは、どうやら共感力が上昇を続ける世代みたいっすね。
また、ここでいう「経験知」とは、その名のとおり過去の体験や知識の積み重ねを活かす能力のこと。若いうちは頭の回転の速さと短期の記憶力が高いけど、年をとると過去の経験をベースに問題を解く力が増すわけですな。これは納得しやすいですね。
どんな年齢でも脳機能は成長を続ける
ちなみに、昔の研究だと経験知は40代が最高潮ってデータもあったんですけど、近年では、そのピークがだいぶ人生の後半にスライドしたみたい。その原因としては、知的労働の増加や教育レベルの変化が考えられますが、いまいちよくわかってりません。
研究者いわく、
どんな年齢になっても、成長を続ける機能はある。いっぽうで、その年齢で低下する機能もあれば、それ以上は変化が起きない機能もある。脳のすべての機能が最高レベルに達するような年齢は存在しないのだ。
とのこと。どの年齢でも脳には得手不得手があるんだから、「年を取って頭が悪くなったかも…」と嘆くよりは、世代ごとの得意分野を活かしたほうがよさげであります。
もちろん、その前に不摂生で頭が衰えたら意味がないんで、脳に優しい適切な食事と、知能の低下を防ぐための運動は必須なわけですが。