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いまの腰痛治療はデタラメだらけ!プロでも誤診ばっかりだ!みたいな話

Pain
いまの腰痛治療はデタラメだらけ
「いんちき(Crooked: Outwitting the Back Pain Industry and Getting on the Road to Recovery)」って本を読みました。なんの「いんちき」に関する本かと言うと、「いまの腰痛治療はデタラメばっかりだ!」ってのがテーマ。


著者は有名なジャーナリストで、現時点で最良の論文をガンガンまとめて「ベストな腰痛の治療とは?」についてまとめたナイスな一冊になっております。






腰痛手術の成功率は超低い
本書がなにを問題にしているかというと、アメリカ人は年に1000億ドルも腰痛の治療に費やしてるのに、まったく効果が出てないじゃないか! それは今の腰痛治療がデタラメばかりだからだ!みたいな感じ。私もかつて怪しい腰痛治療にまどわされたクチなので、非常に共感できるところです。


具体的ないんちきの事例としては、

  • 定番の腰痛治療である「脊椎固定術」(背骨の一部を切り取っちゃう手術)は、成功率が35%しかない。それも、太りぎみの人や痛み止めの乗用者ほど、手術で痛みが減る可能性は低くなる。つまり、本当に手術が必要な人ほど、手術のメリットが出づらい。

  • 2009年にフロリダで行われた会議では、100人中99人の外科医が「脊椎固定術はオススメしない」と解答した。それにも関わらず、1990年代から近年にかけて、手術が行われる件数は600%にもはね上がっている。

  • もうひとつの定番である「減圧治療」は、「脊椎固定術」にくらべれば良い成績が出ている(1)。しかし、やはり神経組織にムダなダメージを残す可能性がある。

みたいな感じ。定番の手術はムダなどころか、身体にダメージを残すかもしんないんだ、と。


しかも、多くのデータでは、たとえ手術に成功しても2年後には痛みがもどってくる確率がかなり高いそうで、なんとも困っちゃいますな。


プロでも8割は腰痛の原因がわからない
こういった事態になってるのは、プロでも腰痛の原因を特定するのが難しいから。およそ80〜85%のケースでは腰痛の原因がわからず、X線写真の結果をもとに当て推量に近い診断をくだしているのが現状だそうな。そもそも診断がデタラメなせいで、いんちきな手術も広まっちゃうわけっすね。こわー。


確かに、近年では「脳のセンサー異常が腰痛の原因!」って考え方が普通ですからねぇ。いくら骨の損傷をみても、よくわからないのも当然でしょううな。


カイロプラクティックはスピリチュアルが起源
また、カイロプラクティック系の治療にも1章分を割いてまして、これまたおもしろい。

  • カイロプラクティックは、1845年にスピリチュアル系のヒーラーが始めたのが起源。その根底には、「背骨には生命の力と知性が宿っているのだ!」というトンデモ理論がある。

  • 2010年のコクランレビュー(2)では、カイロプラクティックは、他の治療法と組み合わせたときにだけ短期間の効果がある。しかし、背骨に圧力をかけるため、症状によっては痛みが悪化するケースもある。

  • カイロプラクティックやマッサージの後で痛みが消えた場合、それはエンドルフィン(天然の鎮痛ホルモン)の分泌が原因。なので、1日もすれば痛みはもどってくる。

 ってことで、ボロボロに叩いております。このあたりは、以前からイギリスの腰痛ガイドラインでも言われてまして、まーそうなんだろうなーみたいな感じ。


結局、腰痛を治すベストな方法は?
 で、大量の文献をあさりまくった末に著者がたどりついたのが、

  • 運動療法こそ至高!腰が痛けりゃとにかく動け!

って結論であります。

現代人は週に50〜60時間も座り続けている。週末に3時間の運動をするだけでも、多くの問題は解決するだろう。

とのこと。とにかく現代人は動かないから、いたずらに痛みを増長させてるんだ、と。このへんは2016年のメタ分析でも似たような結論でして、やはり腰を保護するぐらいならとにかく動け!と言い切っておられますね。


個人的には、運動に加えて認知行動療法も組み合わせたら最強なんじゃない?と思いますが、なにせ腰痛用のカウンセリングをやってるクリニックってほとんどないので、現実的にはエクササイズがベストの解決策ってことになるんでしょうな。


そんなわけで、いまの腰痛業界のデタラメを暴くおもしろい本でありました。私のように腰痛持ちの方は、くれぐれも怪しい治療にダマされませぬよう。

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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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