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今週末の小ネタ:人工甘味料で脳の働きが下がる?カルノシンで頭が良くなる?コーヒーチェリーで頭が良くなる?

Summary

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

 

 

人工甘味料で脳の働きが下がるかも?

人工甘味料はアリかナシか?って議論はまだ続いてて、いまんとこの傾向で言いますと、

 

 

ぐらいの感じがしております。一部には人工甘味料悪玉論もありますが、全体的には別に心配しなくてもよさげ。

 

 

が、新しいデータ(R)では、「人工甘味料がCNSによくないのでは?」みたいな結論になっててちょいビビりました。CNSってのは脳と脊髄のことで、数ある神経系のなかでも大量の神経細胞が集まってるエリアを意味しております。当然、ここに悪影響があるなら脳の働きも衰えちゃうかもしれないわけで、ちょっと怖い話なわけですよ。

 

 

これは6週間のRCTでして、39名の男女(18~35歳)を集めたうえで、

 

  1. 1週間だけ糖分や甘味料を使った食品をすべて摂らないように指示し、最初に脳波や認知テストで脳の働きをチェック

  2. 参加者を3つのグループに分けて、それぞれにスクロース、スクラロース、ステビオール配糖体という3種類の甘味料をランダムに割り付ける

  3. みんなに甘味料を6週間飲み続けてもらい、その後で脳波&認知テストを行う。スクラロースとステビオール配糖体のグループは、1日あたり4グラムを摂取し、スクロースのグループは1日あたり40グラムを摂取した

 

って感じで調べたところ、こんな結果になりました。

 

  • スクラロースを飲んだグループには神経学的な変化も見られ、記憶と実行機能が有意に低下しました

  • スクロースとステビオール配糖体には目立った違いは見られなかった

 

ということで、スクラロースは脳の働きに悪影響があるのでは?って結論になっておりました。そういえば、スクラロースについては、「インスリン感受性が悪化するかも?」とか「体重を減らすのでは?」みたいな報告もあって、なんか他と違う働きがあるのかなーみたいな印象ではありますね。まだはっきりした結論は出せない話ですが、ちょっと注意しとくといいかもっすね。

 

 

 

カルノシン/アンセリンで頭が良くなる?

カルノシンは高い抗酸化&抗炎症パワーが認められてきた成分で、アンチエイジング効果があるんじゃないかと言われてたりします。そのため、昔から「高齢者の認知とかうつ病を改善するのでは?」とも言われてきたんですよね。

 

 

そこで新たな試験(R)でも、カルノシンおよびアンセリン(カルノシンのメチル化体)のサプリを使うことで、高齢者の脳機能とメンタルは改善するのか?ってポイントを調べてくれております。

 

 

これは3件の先行研究を調べたメタ分析で、認知機能(3試験)、言語記憶(2試験)、抑うつ症状(3試験)への影響を調べたもの。メタ分析にしてはデータ数が少ないものの、カルノシンと脳機能の関係をまとめた研究は初めてなんで、わりと貴重な結論になってますね。

 


全体的なデータを見ると、ひとつの試験では参加者は健康だったが、他のふたつの試験では軽度または中等度の認知症と診断されてた模様。アンセリン/カルニチンの投与量は1日あたり1〜2gで、アンセリンとカルニチンの比率は2:1または3:1、テストの期間は3カ月から6カ月の範囲に広がっております。

 

 

で、結果はこんな感じ。

 

  • カルノシンとアンセリンのサプリで認知機能は改善するっぽいが、言語記憶や抑うつ症状は改善しないっぽい

 

全体的に見ると、各テストの質は高くてバイアスのリスクは低め。その点では結果への信頼性は高いんだけど、一方ではわずか3つの試験にしかもとづいていない点はご注意ください。ただ、やっぱカルノシンは見どころが多い成分ではありますね。

 

 

 

コーヒーチェリーで頭が良くなる?

コーヒーチェリーってのはあまり聞き慣れないかもですが、要するにコーヒーノキの果実です。一般に言う「コーヒー豆」ってのは、要するにコーヒーチェリーの種子のことなんですな。

 

 

コーヒーが体にいいのは有名な事実ですが、これはコーヒーにふくまれる大量のポリフェノールのおかげ。そうなると、当然ながらコーヒーチェリーにも大量のポリフェノールがふくまれてまして、結果として「頭が良くなるのでは?」って仮説が出てくるわけっすな。

 

 

そこで新たな試験(R)では、 8名の男女をもとに「コーヒーチェリーで頭が良くなるかも?」ってところを調べてくれておりました。めちゃくちゃサンプル数が少ないのがあれですが、とりあえず最初の一歩ということでよろしいのではないでしょうか。



これはランダム化のクロスオーバー試験で、「プラセボ」または「100mgのコーヒーチェリー抽出物」のどちらかを飲んでもらい、それぞれ90分後に血液サンプルとMRIスキャンを実施。BDNFレベルと脳活動を測定したところ、こんな結論になりました。

 

  • コーヒーチェリー抽出物を飲んだグループは、脳の反応時間が改善し、意思決定の能力に関わる脳のエリアのつながりが上がったらしい

  • BDNFレベルもコーヒーチェリー抽出物を飲んだ後に上昇した

 

あくまで初歩的な研究なんで判断が難しいんですけど、これらの結果を見る限り、コーヒーチェリーで認知の働きがアップするかも?って気はしますね。まぁコーヒーチェリー系のサプリはまだ手に入れづらいので、現時点では普通にコーヒーを飲んでおくのが良さそうですが。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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