ダメな性格は本当に変えられるのか?問題を掘り下げる
人間の性格は変えられるか?って議論は昔からありまして、いまもいろんな意見があるんですけど、わりと多くのデータで共通しているのは、
ってポイントじゃないでしょうか。ただし、その一方で「人間の性格は30歳ぐらいで固定されちゃう」って見解もあるんで油断はできないものの、そこそこまでなら変えられるんじゃないかなーってとこですね。
が、ここで問題になるのは、従来の研究の大半が「良い性格は伸ばせるか?」って方向の調査ばかりなところです。例えば、「誠実性を高められるか?」とか「外向性は伸ばせるか?」みたいな問題意識で実験をしたデータが多いので、
- ダメな性格は修正できるか?
みたいなとこは謎が多いんですよね。「怒りっぽい」とか「仕事を途中で放り投げがち」みたいな問題が変わるのかどうかは、まだ研究が進んでないポイントなんですよ。
ということで、新たにフロリダ国際大学などのチームが、「人はどこまで変われるか?」問題を調査したデータ(R)を発表しておりました。対象になったのは44歳のデンマーク人成人1,244人で、
- 1992年に、ミネソタ多面人格目録で全員の性格を調べる
- 2012年に、同じテストをして性格の変化をみる
みたいな調査になってます。最終的には65名の参加者が2回のアンケートを終えまして、これを元に「性格がどう変わったか?」をチェックしたわけですね。
ミネソタ多面人格目録ってのは、ビッグファイブと並ぶメジャーな性格テストで、ここでは5つのカテゴリーを計測してます。
- 攻撃性(AGGR-r): 攻撃的、怒りっぽい、議論好き、自己主張が強い、競争心が強い、地位を気にする、敵対的、人間関係で威圧的、権力志向、ステレオタイプなマッチョ的な行動を取る
- 脱抑制性(DISC-r): 退屈しやすい、判断力に欠ける、プロジェクトを完了しない、衝動的に行動する、落ち着きがない、権威者と問題を起こす、せっかち
- 負の感情性(NEGE-r): 不安、泣き言、心配性、自己否定、絶望感、悲観的、神経質、自己不信、ストレスによる身体的症状、人生で不当な扱いを受けているように感じる、健康問題への不安、自分は助からないと考える、人生は負担だと感じる
- 内向性(INTR-r): 内向的、性欲が低い、内気で他人を遠ざける、エネルギーが低い
- 精神病性(PSYC-r): 妄想的、異常な経験が多い、現実とのつながりが薄い、幻覚を見がち
いずれも人生を生きづらくする要因ばかりでして、ビッグファイブを使うと、こういったダークな側面は判定しづらいんですよね。その点で、なかなか新味のある研究だともうせましょう。
では、調査の結果がどうだったかと言いますと、
- 残念ながら、ダークな性格が歳をとって変化する可能性は非常に低い
だったそうです。参加者の大半は、20年後のテストでも似たようなスコアを示し、ダークな性格はとても安定してたんだそうな。著者いわく「これらの5つの不適応な性格は、絶対的な安定性を持っている可能性がある」と結論づけてまして、内向性バリ高人間としては実に辛い結果っすね。
不適応な性格が変わらない理由はよくわからないんですけど、いまのところの推測としては、
- 不適応な性格は人間の考え方や物の見方に深く影響しているため、長年の習慣的な反応パターンから抜け出すのが難しいから?
- シンプルに「ビフォー」と「アフター」を比べただけでは、外部の出来事や影響による微妙な変化を検出できないから?
といったあたりが考えられましょう。どっちが正しいかは謎ですけど、個人的には「性格の悪い癖って治すのが難しいのかもなー」という気がしております。ただの印象ですが。
ただし、この研究は、あくまで「なにもせずに悪い性格が変わることはない」と言ってるだけなので、まだ希望が消えたわけでもございません。事実、神経症傾向のような特性については、ちゃんとしたセラピーを使えば4週間である程度の改善が見込めるって話も出てますし、今回の研究チームも「不適応な性格を調整する手段としての介入を研究すべきだ」と指摘してますしね。
もし今の自分が上記の5特性のどれかに当てはまっている実感があるなら、まずはその点を明確にするのが改善の第一歩。その上でセラピストに協力を頼むもよし、自分の不適応なところを意識した行動を取るもよしでしょう。私の場合は、とにかく他人を遠ざけがちな内向人間なので、そこを意識しないとなぁ……とか思うわけですが。