人間がもっとも素で幸せに生きられるのは何歳からだ?というメタ分析
「素の自分を偽って暮らすと体を壊すぞ!」って話がありまして、基本的に人間は遺伝的に備わった性格に従って生きたほうがよさげ。
なんだけど、10代のころはホルモンバランスの乱れに惑わされたり、中年になったら環境の変化で幸福度が下がったりと、いろんな原因のせいで、なかなか「素で生きる」ってのも難しいもんです。
そんな状況下、スイスのベルン大学が「もっとも素で生きられて幸せなのは何歳からだ?」って問題を調べた論文(1)を発表していて、おもしろかったです。
これは164,868人のデータをまとめたメタ分析で、科学的な信頼性は結構高め。調査の対象は4〜94歳までに広がっていて、おもに「人間の自尊心は何歳ごろでピークを向かえるの?」ってところを調べてくれております。
ここでいう自尊心ってのは「いまの自分について『まあいい感じだな』ぐらいに思えること」ぐらいの意味。いわば「素の自分でOKとしよう」と自然に感じてる状態で、「もっと違う自分にならないと!」とか悩まずに済むぶんだけ幸福度も高いんですよ。
で、なんで「自尊心の変化」を調べたのかと言いますと、昔からヒトの自尊心やパーソナリティは年齢によって変わることがわかってるから。
たとえば典型例がビッグファイブで、たいていの人は歳をとるとともに誠実性や協調性が増大していって、逆に神経症傾向は低くなっていきやすいんですよ。いわゆる「歳をとって丸くなった」現象っすな。
これは自尊心も同じことで、多くの研究で「年齢によって上がり下がりする」って結論が出てたりします。なので、いろんな研究を総合すると、「ヒトは何歳ごろに素の自分になりやすいのか?」ってのがわかるわけです。
では、分析でどんなことがわかったかと言いますと、
- だいたいの人は60歳で自尊心がピークに!
だったそうな。もちろん、この年齢になっても人生の危機や感情の波はあるものの、60歳前後だと破滅的な状態にまではいかないケースがほとんどなんだそうな。自尊心が高まったぶんだけ気持ちに安定感があるんでしょうな。
さらに、他の年代ではどうかと言いますと、
- 4〜11歳までは自尊心が順調に高まり続ける(なので、この時期に自尊心が壊れるようなできごとがあると、残りの人生にも影響がでる)
- 20代からはさらに自尊心が高まるが、30代で急に停滞期に入る
- そこから30年をかけてジワジワと上がり続けて、60代でピークに
- 70代まで自尊心は横ばいになり、90歳にかけて少しずつ低下していく
だったそうな。なので、30代では「あんま自分に正直に生きてないなぁ……」みたいな気分い襲われがちなんだけど、そこをぐっとやりすごせば、30年後には幸福がマックスになるかもしんないわけですな。長いですが(笑)
研究者いわく、
45〜55歳の段階では、多くの人は自分が関わる社会的な役割に多くの資源を投じる。その結果、自尊心が促進させていくのだろう。
とのこと。年齢によって自尊心が変わっていく理由はよくわからないものの、おそらく社会との関わり方が変わるのが大きいっぽい。まぁそうかもしれませんな。
ってことで、全体的に見れば、歳をとるごとに性格も良くなり、不安を感じにくくなり、自尊心も高くなる傾向があるみたい。私の不安症が改善してきたもの、ひとつには年齢のせいもあるのかもですなぁ。