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「ココナッツオイルは純粋な毒だ!」はどこまで正しいのか?問題

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ココナッツオイルに関するご質問をいただきました。

 

「ココナッツオイルは純粋な毒」という記事がありました(https://gigazine.net/news/20180823-coconut-oil-pure-poison/)。ハーバードの教授が「ココナッツオイルはあなたが食べることのできる最悪の食べ物のひとつ」と発言したらしいのですが、どう思われますか?鈴木さんはココナッツオイル推奨派だと思われますが。

 

とのこと。こりゃあまた恐ろしげな記事が出てきましたねー。

 

 

この話のネタ元はYouTubeの講演動画(1)でして、疫学者のカリン・ミッシェル教授が「ココナッツオイルは毒だ!」と主張したというもの。ドイツ語の動画なんですが、一部のニュースサイトが英語に翻訳してくれてたんで、私はそっちを参考にしました。

 

 

で、この動画に賛成できるところと賛成できないところがありましたんで、そこらへんをまとめて行こうかと思います。

 

ミッシェル教授に賛成できるとこ

1 ココナッツオイルの効果にはウソが多い問題

教授は「世間で言われているココナッツオイルの効果はウソばかりだ!」と言ってまして、ここは非常に賛成できるところです。

 

 

たとえば、当ブログでも「ココナッツオイルでアルツハイマーが治る」みたいな説はどうなのよ?と思ってますし、「MCTオイル(ココナッツオイルのメイン成分)で痩せる!」といった話にもわりと否定的。もちろん、普段の料理油をココナッツオイルに変えれば体重が減るかもしれませんが、

 

  • 1日に大さじ一杯のココナッツオイルを飲む
  • コーヒーに入れて飲む

 

みたいなやり方は推奨しておりません。これじゃあ単にムダなカロリーが増えるだけなんで。

 

 

ってことで、この点については教授が怒るのもごもっともと申せましょう。まぁそんな凄い油があるわけないですもんね。

 

 

2 ココナッツオイルはハイカロリーすぎる問題

もうひとつ教授が強調してるのが「ココナッツオイルはハイカロリーだ!」ってポイントです。

 

 

これまた当然の話で、大さじ一杯だけでも100kcalを簡単に超えちゃいますからねぇ。そのくせビタミンやミネラルが豊富なわけでもないですから、そりゃあココナッツオイルを飲んでも健康にはなれないでしょう。

 

 

もっとも、これは他の油にも言えることなんで、ことさらココナッツオイルをやり玉に挙げる理由にもならない気はしますが。ちなみに、過去には私もアマニ油を飲んでたことがあったんですが、あとで「普通に魚を食べた方が良くないか?」と思い直しまして、いまではあえてオイルを飲むようなことはなくなりました。黒歴史!(笑)

 

 

ミッシェル教授に賛成できないとこ

1 ココナッツオイルには何のメリットもない問題

教授は「ココナッツオイルは何のメリットもない」と言ってるわけですが、これには疑問があったりします。

 

 

というのも、ココナッツオイルがHDLコレステロールをあげてくれるのはかなり有名な話で、2009年に40人の女性を対象にした実験(2)でも良い結果が出てたりとか。どうも他のオイル(大豆油とか)にくらべて、良いコレステロールを増やす働きが高いみたい。

 

 

また、116人が対象の別実験でも、やはりココナッツオイルでHDLが上がってまして、ここらへんの効果はわりと信頼できるのではないかと(3)。ちなみに、この考え方ははハーバード大学のヘルスレター(4)にも載ってる話だったりします(笑)

 

 

その他にも、ココナッツオイルには「酸化しにくい」とか「抗菌作用がある」といったメリットもあるかと思いますが、これは長くなるので別エントリにします。とにかく、ここでは「ココナッツオイルは無意味説」には賛成できないなーってことで。

 

 

2 ココナッツオイルで死亡率が高まる問題

教授は「ココナッツオイルは純粋な毒だ!」と言ってまして、おもに心疾患リスクの上昇を懸念しておられます。

 

 

が、こいつはかなり謎な主張でして、なぜならココナッツオイルを大量に消費しても健康な人たちがいっぱいいるんですよねぇ。

 

 

これはおもに南太平洋によく見られる現象で、たとえばニュージーランドのトケラウで暮らす人たちは総カロリーの60%をココナッツから摂取してるんですが、心疾患の発症リスクは異様に低かったりとか(4)。同じように、パプアニューギニアで暮らすキタバ族についても、大量のココナッツを消費するのに心疾患が少ないことがわかっております(5)。

 

 

では、なぜ教授が「純粋な毒だ!」とまで言うのかといえば、ココナッツオイルの大半が飽和脂肪酸だからです。と言うのも、2017年に、かの有名な「アメリカ心臓協会」(AHA)が、「ココナッツオイルは心疾患リスクをあげるぞ!」って論文(6)を出したんですよ。

 

 

これはAHAが「よくできてる!」と認めた4件のRCTをまとめたもので、そのいずれもが「飽和脂肪酸で心疾患リスクが激増!」って結果だったんですな。怖いですねぇ。

 

 

ところが、このAHAレビューには反論も多くありまして、なにより問題なのが「参照文献が古い」ってことです。事実、ここで使われた4つのデータは、それぞれ1969, 1970, 1968, 1979年に発表されたもので、それ以降の成果があんま反映されてないんですよ。

 

 

たとえば当ブログで紹介したところだと、

 

 

なんてのがありますね。もちろん、まだ科学的に最終決着がついたわけではないものの、少なくとも「ココナッツオイルが毒だ」と言い切れるコンセンサスはどこにもないかと思われます。

 

 

っことで個人的な見解

そんなわけで、なんでミッシェル教授が「毒」とまで言ったのかは謎。「ココナッツオイルを飲めば健康に!」みたいな主張をするグループに嫌気がさして、思わず強い表現を使ったのかもしれませんが、どうなんでしょうねぇ。

 

 

とりあえず以上の話をまとめますと、

 

  • ココナッツで健康に暮らす人もいるし、飽和脂肪酸と心疾患の死亡リスクは証明されてないし(というか否定の方が多い)、「毒だ!」とはとても言えないレベル

 

  • といっても、ココナッツを飲んでダイエット!とかココナッツで認知が改善!みたいな話がうさん臭いのも確か。結局、オイルはオイルなんで

 

ぐらいに落ち着く次第です。個人的にもわざわざココナッツオイルを飲もうとは思いませんが、普通に今後も料理油として使っていく所存です。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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