ローフードダイエットが科学的におかしい3つのポイント
ここ数年アメリカで大人気だったローフードダイエットが、日本でもブームになりつつある感じ。ローフードがどんなものかと言いますと、
Raw(生の)Food(食べ物)のことをいいます。 生で食べることにより、植物の酵素や栄養素を効果的に摂れて、健康や美容・ダイエットにも効果が出ている食事法です。 アメリカのセレブの間でも流行り全世界に広がっています。
といった食事法のこと。熱をくわえると酵素や栄養素が減るので生がベストなんだ! って発想ですね。個人的にも、「ローフードってどうなんですか?」との質問を受けるケースが増えてきた気がします。
で、結論から言うと、ローフードの考え方はかなり微妙かと思います。その理由を具体的に見ていきましょう。
1 加熱調理で増える栄養素も多い
まずは「加熱すると栄養が減るからダメ!」ってのが引っかかるところ。というのも、確かにビタミンCなどは加熱調理で減ってしまうんですが、いっぽうでは熱によって増える栄養素もあるんですよ。
その代表が、ニンジンやサツマイモなどに多くふくまれるカロテノイド。ご存じのとおり、カロテノイドは強い抗酸化力を持ってまして、美容やアンチエイジングをこころざす者にとっては必須の天然色素であります。
具体的な実験例をあげると、
- 加熱したコーンと生のコーンをくらべたところ、加熱したコーンは抗酸化力が50%もアップしていた(2002年,1)
- 加熱したニンジンと生のニンジンをくらべたところ、加熱したニンジンはベータカロチンの吸収率が10〜20%ほど高くなった(2003年,2)
- 加熱したホウレン草と生のホウレン草をくらべたところ、加熱したホウレン草を食べたほうが血中のベータカロチン量が3倍も高かった(1995年,3)
- 加熱したトマトと生のトマトをくらべたところ、加熱したトマトのほうがリコピン(抗酸化物質)の量が増えていた(2002年,4)
といったところ。 必ずしも加熱調理は悪いわけじゃないんですね。
2 ローフードで健康被害も出ている
確かにローフードで痩せたってデータは多いので(5)、体重を減らす効果は高いんだと思います。
ところが、健康的に痩せられるのるかといえばかなり疑問でして、たとえば、
- 500人以上のローフードダイエッターを調べたところ、ローフード歴が長い女性ほど生理が止まってしまう傾向があった(1999年,6)
- 18人のローフードダイエッターを調べたところ、ローフード歴が長いほど骨密度が低くなる現象が起きていた(2005年,7)
- 長期間にわたって全体のカロリーの7割をローフードにすると、HDLコレステロール(善玉)とベータカロチンの量が減ってしまう(2005年,8)
などなど。こういった現象が起きる原因には諸説ありますけども、基本的には「あらためてベジタリアンをオススメできない理由を列挙してみる」で書いた理由と同じだと考えられております(9,10)。ひとことで言えば栄養不足ですね。ローフードな食生活を上手く維持するには、かなりの知識とバランスが必要になるかと思います。
3 そもそも食品から酵素を取り入れてもムダ
ローフードダイエットでは、やたら酵素を推してる印象が強いんですけども、そもそも酵素が体にいいって科学的な証拠はないのが現状であります。
その理由は「なぜ酵素ドリンクにお金を払ってはいけないのか?」でも書いたとおりで、食品からとった酵素は胃でアミノ酸に分解されちゃうから。なので、いくら低温調理で酵素を残したとしても、胃に入った時点ですべては無意味なんですね。
まとめ
そんなわけで、ローフードについては、
- 加熱調理で増える栄養素も多い
- ローフードは栄養不足におちいりがち
- 酵素を活かす意味が感じられない
といったあたりが問題なのかなーと思います。 もっとも上記にあげた研究は、あえてローフードに都合が悪いデータだけを抜き出したものなので、そのへんはご注意ください。いっぽうではローフードが高血圧や高コレステロールを改善したって実験もちゃんとありますので。
ここで言いたいのは、健康的にローフードを続けるのは栄養学の知識が必須だし、せっかくの抗酸化物質をムダにしてるケースも多いよーってことです。個人的には、ローフードにこだわらずに生と加熱を半々ぐらいで使っていけばいいのではないかと。