「心ここにあらず」はどこまで人生の幸せを下げるのか?
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「心ここにあらず」な人は不幸?
マインドフルネスブームのため、とかく「マインドワンダリング」が悪者にされがちな昨今でございます。マインドワンダリングってのは目の前のタスクから注意がそれた状態で、要するに「心ここにあらず」のこと。気がつくと同じ文章を何度も読んでたりと、誰にでも起きる現象でしょう。
目の間の出来事に集中していないのだから、幸福度が下がっちゃうのも当然。実際、2010年の有名な実験(1)では、「マインドワンダリングが多い人ほど不幸だ!」みたいな結果が出てたりします。
現実世界の「心ここにあらず」はどうなのよ?
が、ここで難しいのは、これまでのマインドワンダリング研究が、実験室のなかだけで行われたケースが多かった点です。これでは「リアルな世界でのマインドワンダリングはよくわかんなくない?」って疑問もわくってもんでしょう。ってことで新しく出た論文(2)では、「実験室のマインドワンダリング」と「現実世界のマインドワンダリング」の違いをくらべていて非常におもしろかったです。
これはノースカロライナ大学の実験で、247人の学生が対象。具体的には、
- 実験室バージョン:実験室で退屈な作業をしてもらい、どれだけマインドワンダリングが起きたかを調べる。
- 現実世界バージョン:ランダムなタイミングで1日8回ずつマインドワンダリングの発生度と内容を聞く。
みたいな感じで2つをくらべたんですね。
実験室の「心ここにあらず」はヤバい
そのうえで全員の性格(ビッグファイブ)や注意力をチェックしたところ、まず次のようなことがわかりました。- 実験室でマインドワンダリングが起きやすい人は、実行機能が低くて神経症傾向が高い
実行機能は「物事に注意を払ったり目の前のタスクに集中できる能力」のこと。つまり、注意の切り替えがヘタで不安になりやすい人ほど「心ここにあらず」になりやすいんだって話です。これは当たり前っすね。
現実では注意力がある人ほど「心ここにあらず」になる
ところが、現実世界だとやや様子が変わってくるのがおもしろいところ。日常でのマインドワンダリングを調べたら、こんな結果だったんですね。- 現実の世界では、
- 実行機能が高い人ほどマインドワンダリングが起きやすい
- ついでに「開放性」が高い人ほどマインドワンダリングが起きる
- 現実世界では「神経症傾向」とマインドワンダリングの回数に関係がなかった
開放性ってのは「新しい体験を受け入れる性格」のこと。こいつが高いほど良いアイデアを思いつきやすいため、創造性には欠かせないポイントであります。
まぁ「気が散る人は創造性が高い」 ってデータは前からあったんですが、注意の切り替えが上手いひとのほうが「心ここにあらず」になりやすいってのはちょっとビックリ。一般的には、実行機能が高い人ほど判断力や意志力が高いので(3)、そう考えるとマインドワンダリングが多い人は人生に成功しやすいともいえるのかもですな。
まとめ
そんなわけで、この実験から得られる教訓としましては、- マインドフルネスとマインドワンダリングのどっちがいいって話ではない:どちらも「自分の注意をどのように運用するか」の問題でしかない
- 神経症傾向がベースのマインドワンダリングには注意!:不安になりがちな人は「反すう思考」におちいりがちなので、AWAREテクニックなどで対処してくとよさげ
- 逆に良いマインドワンダリングはガンガンすべし!:「反すう思考」でないマインドワンダリングには、逆に創造性や情熱などを高める効果がある。
ってことでしょうか。いずれにせよ、実行機能の高さがとても大事なのは変わらないので、そのへんは意識しとくといいかも。
いまのとこ実行機能を働かせる方法としては、
みたいな感じなんで、とりあえずアウトドアでスポーツをするのが最強かと思われます(ちなみにマインドフル瞑想は効かないっぽい)。どうぞよしなに。