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頼みごとは「断れる余地」を残したほうがうまくいくぞ!という研究の話

   

 

「頼みごと」ってのは意外と難しいもんです。仕事で手が回らないときに同僚に代わってもらったり、子どもの迎えに行けない日に家族へ頼んだりと、日常で小さな依頼をしなきゃいけない場面はたくさんありますが、相手との関係が近いほど、逆に頼み方に悩むこともあるもんです。

 

「これ、お願いしてもいい?」と気軽に言えればいいんですが、頼みごとの内容が大きくなるほど、相手に負担をかけるのではないか、図々しいと思われるのではないか、なんて思っちゃって、けっこう言い出すまでにエネルギーを使うんですよね。

 

では、こういう頼みごとはどう切り出すのがよいのか?ってことで、UCLAの社会学者アンドリュー・チャルフーン先生らが、「日常でうまくいく頼み方とは?」を調べた研究(R)を出しておりました。

 

ここで研究チームは、これまでの依頼研究や会話分析の知見を整理してまして、人が頼みごとをするときにどんな言い方をしているのかをチェック。その結果、研究チームは、まず頼みごとのし方を、大きく3つに分類しております。

 

 

頼み方パターン1.「断られる可能性をちゃんと見込む」頼み方

このパターンは、たとえば、

 

「忙しいところ申し訳ないんだけど、もし無理じゃなければ……」

 

みたいなやつです。相手が断りやすいように余地を残す頼み方っすね。これは社会学者ゴフマンの“面子”の理論に近くて、人は自分のイメージを守りたいものだから、相手にも逃げ道を用意しておくのが自然だ、って考え方であります。

 

 

頼み方パターン2.「状況に応じて頼み方を変える」頼み方

頼みごとの重さや関係性に応じて、楽観と慎重さを使い分けるやり方です。たとえば、

 

  • 小さな頼みごとをする場合:「これお願いできる?」ぐらいの軽い頼み方をする。
  • 大きな頼みごとをする場合:相手との関係がそこまで近くなかったりするなら、もう少し慎重に切り出す。

 

みたいな感じ。これは、かなり合理的な頼み方に見えますな。

 

 

頼み方パターン3.「なぜか通る前提で頼んでしまう」頼み方

相手が引き受けてくれることをかなり前提にした頼み方。たとえば、

 

「この会議、代わりに出てくれる?」

 

みたいな感じっすね。なんか印象が悪いですが、親しい相手なら自然な場面も多いんで、こいつを使ってる人も多いでしょうな。

 

 

さて、以上をふまえて研究チームは、アラビア語、英語、イタリア語などなど、複数の言語圏にまたがる約92時間の自然会話を分析して、194件の頼みごとを調べたんだそうな。その結果、なにがわかったかと言いますと。

 

  • 小さな頼みごとが承諾される割合は52〜67%ほどだったのに対し、大きめの頼みごとは承諾率が11〜25%程度にとどまっていた(そりゃそうですな)。

  • にもかかわらず、多くの人は、相手が受け入れてくれる前提の頼み方をしていた

 

といった感じだったらしい。普通に考えれば、大きな頼みごとほど、相手に断る余地を残したほうがよさそうなもんですけど、実際には多くの人は「たぶんなんとかなるだろう」と考えて、わりと直球で頼んじゃうみたいっすね。でもって、そのせいで頼みごとを受け入れてもらえる確率を、自ら下げてしまうんだ、と。

 

なんだか不思議なようですが、これを研究チームは「楽観バイアス」が原因だと考えておられます。人は頼みごとをするとき、失敗の可能性よりも成功の可能性に注意が向きやすいのではないか、みたいな話ですな。

 

その証拠に、研究で紹介されていた例では、10代の娘が母親に「そのドレス買ってもいい?」と頼む場面が挙げられております。ここで母親はすでに「あなたには十分ドレスがある」と伝えていたのに、娘はあまり慎重な前置きをせず、普通にお願いしてしまい、その結果、母親から断られたんだそうな。こんな感じで、相手が断る可能性が高そうな場面でも、人は意外と楽観的に頼んでしまうってことなんでしょう。

 

当然ながら、このバイアスにはいくつかの問題がありますが、なかでも大きいのは「頼まれた側の心理的な負担が増える」ってところです。親しい相手から「当然やってくれるよね」って姿勢で頼まれると、断る側はかなりしんどいんですよ。断れば冷たい人間のように感じるし、引き受ければ自分の時間や予定が削られますからね。これは、相手との関係を今後続けるって意味でも、あまりよくないですな。

 

そこで大事なのは、「相手が断っても関係が傷つかない形にしておく」ってポイントでしょう。たとえば、いきなり「明日の会議、代わりに出てくれる?」と聞くよりも、「明日の会議なんだけど、子どもの都合でどうしても出られなくなってしまって。かなり急なお願いなので、無理ならまったく大丈夫なんだけど、もし可能なら代わりに出てもらえないかな?」ぐらいにしたほうが、相手は判断しやすくなるじゃないですか。

 

ここで最も大事なのは、相手に「この頼みごとは断ってもいいんですよー」と明示してるところであります。頼みごとがうまい人は、相手を動かすのがうまいというより、相手の自由度を残すのがうまい人だったりしますんで。

 

これは、仕事でも家庭でも同じで、

 

「ちょっとお願いがあるんだけど、今余裕ある?」
「無理なら遠慮なく断ってほしいんだけど」
「急ぎではないので、難しければ別の方法を考える」
「負担が大きそうなら、ここだけでも助かる」

 

みたいな一言があるだけで、頼まれた側はかなりプレッシャーから解放されますからねぇ。

 

ってことで、今回の研究から得られる知見をまとめておくと、

 

  • 人は、自分が思っているよりも「頼めばなんとかなる」と考えがちである。
  • だからこそ、大きな頼みごとをするときは、意識して相手に断る余地を残したほうがいい。

 

みたいになります。これは意識しときたいですなぁ。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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