今週の小ネタ:AIに健康アドバイスをもらう時に何を注意すべき? AIを使わないと不安!AIを使うと後ろめたい!って問題が増えてる? AIに依存しやすい人にはどんな特徴があるのか?

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
AIに健康アドバイスをもらう時に何に注意すべき?を調べた研究
ChatGPTに健康相談をする人が増え続ける昨今でございます。「頭が痛いけど病院に行くべき?」「コレステロールを下げるには?」「このサプリは飲んでも大丈夫?」みたいな疑問を投げると、AIは数秒で詳しい答えを返してくれますんで、下手に検索するより話が早いんですよね。
では、私たちはAIの健康アドバイスをどこまで信用しているのか?ってことで、近ごろおもしろい研究(R)が出ておりました。
ここで研究チームが集めたのは、アメリカの成人1,502人。参加者には架空の健康相談を読んでもらい、その回答が次のいずれかから提供されたと説明したんだそうな。
- 人間の看護師
- 医療データで訓練された「AI看護師」
- 汎用型のChatGPT
そのうえで、健康アドバイスの信頼性や、実際に従いたいと思うかを5段階で評価してもらったらしい。
すると、その結果、人間の看護師の信頼度は平均3.53点だったのに対し、AI看護師は3.13点、ChatGPTは3.21点だったというんですな。やはり人間の看護師がもっとも信用されていたものの、AIも完全に拒絶されていたわけでもないってことですな。
で、ここでさらに興味深いのが、アドバイスへの信頼度が「誰が答えたか」だけに左右されてるわけじゃなかったってところです。この実験では、一般人の感覚に合う「直感的な助言」と、医学的には正しいものの常識には反する「反直感的な助言」を用意してたんですけど、その結果、
- 直感的な助言の信頼度は平均3.46点だった。
- それに対し、反直感的な助言は3.12点だった。とくに胸の違和感のようなリスクの高い場面では、この差がさらに広がっていた。
って感じだったらしいんですよ。つまり私たちは、AIか人間かを見分けて判断する以前に、
そのアドバイスが、自分の常識と一致しているか?
をかなり重視しているってことになりましょう。みんな、自分の予想に合う説明は根拠が弱くても「もっともらしい」と感じやすいし、逆に正しい助言でも常識に反しているだけで拒否したくなるんだ、と。いわゆる確証バイアスですね。
ここから考えると、医療AIに必要なのは結論だけでなく、
- なぜその判断になるのか
- どんな根拠に基づいているのか
- どの症状が出たら医療機関を受診すべきか
- 判断にどの程度の不確実性があるのか
まで説明することなんでしょうな。特に、ユーザーの直感に反する助言ほど、理由を丁寧に示す必要がありますな。
あと、私たちが今回の研究から得られる実用的な教訓としては、AIの健康情報を見たときに、
これは根拠があるから納得したのか? それとも、自分が前から信じていた話だから納得したのか?
を自問してみることでしょうな。AIの回答を疑うのも大事ですが、それと同じぐらい、自分の直感を疑う必要もありそうなんで。
AIを使わないと不安!AIを使うと後ろめたい!って問題に悩む学生が増えてるらしい
大学生のAI利用が、ものすごい勢いで広がっております。レポートの下書きを作ったり、論文を要約したり、情報を検索したり……といった用途はすでに当たり前で、いまや大学生の80〜90%が生成AIを使っているとも言われますからね。
個人的にはこの傾向には賛成で、「まぁ、作業が早くなるなら結構な話じゃないか」ぐらいに思ってるわけですが、新しい研究(R)によると、ここには意外な心理問題があるらしい。
研究チームが集めたのは、アメリカの大学生と大学院生393人。全員がその学期に生成AIを学業で使った経験を持ってまして、参加者にはAIについて次のようなポイントを尋ねております。
- AIを使うと時間や労力を減らせると思う?
- AIによって課題の質や成績が上がると思う?
- 周囲に遅れないためにAIを使っている?
- AIが使えないと不安になる?
- AI利用を他人に知られるのが恥ずかしい?
- 今後もAIを使い続けたい?
でもって、みんなの回答を分析してみたところ、その結果、AI依存をもっともよく予測していたのは、「作業が楽になるから」とか「課題の質が上がるから」みたいな理由ではなくて、最大の要因は、
ほかの学生がAIで得をしているなら、自分も使わないと不利になる!
という焦りだったんだそうな。「周囲に遅れたくない」という焦りから依存が進むってのは、なんとも現代的な話っすね。
研究チームは、この心理を「競争的同調」と呼んでおります。「まわりが使っているから自分も使う!」ってのはよくある同調行動なんだけど、そのモチベーションが、仲間に合わせることではなく「競争から脱落しない!」ところから出てるのがポイントですね。
ちなみに、AIへの依存度が高い学生ほど、AIが使えない状況で大きな不安を感じる傾向も確認されまして、研究チームは、この状態を「noAIphobia」と名づけております。スマホが手元にないと不安になる「ノモフォビア」のAI版で、「AIなしでは課題を終えられない気がする」「AIにアクセスできないと落ち着かない」みたいな感覚を意味しております。当然ながら、この不安が大きい学生ほど「今後もAIを使い続けたい!」と答えてまして、AIを便利だから使うというより、使わない不快感を避けるために使ってる感じが伝わってくるわけです。いかにも現代的な問題ですけど、私もすでに近い心理になってる感じがしますなぁ。
ところが、その一方では、逆方向の不安も確認されてまして、これもまた興味深いところです。それがどういうものかと言いますと、
AIへの依存度が高い学生ほど、「怠け者だと思われるのでは?」「不正をしていると思われるのでは?」というスティグマも強かった。
というものです。つまり現代の学生たちは、
AIを使わないと周囲に遅れそうで不安だが、使えば不正だと思われそうで怖い
という板挟みになっているかもしれないってことですな。
まぁ、一度きりのアンケート調査なので、AI依存が不安を生んだのか、不安が強い人ほどAIに依存したのかは謎ですけども、AIによって周囲との競争に対する不安がブーストしちゃう可能性は頭に置いておきたいところですなぁ。
AIに依存しやすい人にはどんな特徴があるのか?を調べた研究
生成AIは、いまや仕事や勉強に欠かせない道具になっております(本日3回目)。当然、私も毎日のようにAIを触ってるわけですが、便利な道具には「どこからが使いすぎなのか?」という問題がつきもの。ということで新しい研究(R)では、AIを問題のある形で使いやすい人の性格を調べておりました。
ここでいう「問題のあるAI利用」ってのは、単に使用時間が長いことじゃなくて、
- やめようと思っても使用を減らせない
- 悪影響が出ているのに使い続ける
- 思考や判断を必要以上にAIへ任せる
- 不安や退屈から逃げるためにAIを開く
- 仕事や睡眠、人間関係に支障が出る
といった状態を指しております。AIを長時間使っていても、生活に問題がないなら「依存」とまでは言えないわけっすね。
研究チームが調べたのは、生成AIを日常的に使っている677人。参加者には、問題のあるAI利用のほか、次の4つの「ダークな性格特性」を測るテストを受けてもらったそうな。
- マキャベリズム:自分の利益のために他人を操ろうとする
- ナルシシズム:自分は特別だと感じ、賞賛を求める
- サイコパシー:共感や罪悪感が乏しい
- サディズム:他人を傷つけたり支配したりすることを好む
そのうえで、不確実な状況にどれだけ耐えられないか、競争や地位をどれだけ重視するかも調べてみたところ、結果はこんな感じになりました。
- 問題のあるAI利用との関連がもっとも目立ったのが、ナルシシズムだった。
ってことで、マキャベリズムやサディズムとも小さな関連が見られたんだけど、AIへの依存はナルシシズムとの結びつきがとにかく強いっぽいんですな。
なんでこういう結果が出たのかと、研究チームが指摘するのが「垂直的個人主義」って考え方であります。これは、自立や自由を大切にしつつ、他人との競争、成功、地位、優劣も重視する価値観を指してまして、簡単に言えば「自分の力で勝ち、他人より上に行きたい」って志向のことっすね。
なんでも、この傾向が強い人にとっては、
- AIは短時間で成果を増やし、競争上の優位を得るための格好の道具になる。
- そのため、効率よく結果を出したい、周囲より先に進みたい……とAIを使ううちに、手放しにくくなる可能性がある。
って流れで、AIへの依存が進むらしいんですな。まぁ、一度きりのアンケート調査なので、これだけで「ナルシシズムがAI依存を引き起こす」とは言えないのでご注意あれ。AIへの依存が自己中心的な態度を強める可能性もあれば、別の要因が両方に影響している可能性もありますんで。
とはいえ、これからAIを使う際は、
いまAIを使っているのは、本当に必要だからか? それとも、負けたくない、正解がわからない状態に耐えられない、といった不快感を消すためなのか?
みたいに自問してみるのはありかもしんないですね。これで自分の依存傾向に気づきやすくなるかもなんで。


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