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性格はどこまで遺伝子で決まるのか?114万人の研究でわかったこと

   

 

「人間の性格は、どこまで遺伝子で決まるの?」って問題を調べた大規模研究(R)が、みんな大好き『Nature』に出てたんで、内容をメモっておきましょう。「性格は遺伝なのか?遺伝子で個人の性格を当てられるか?」って問題は昔からありますが、本当にDNAで個人の性格を当てられるのか?って話ですな。

 

 

 

最大114万人の遺伝子と性格を分析した

この研究は、46の研究コホートから集めた最大約114万人分のデータを分析したもの。ここでは、毎度おなじみ「ビッグファイブ」と呼ばれる5つの性格特性を使ってまして、ざっくりおさらいすると、

 

  1. 外向性:社交的で活動的か
  2. 協調性:他者を信頼し、思いやりを持つか
  3. 誠実性:計画的で責任感があるか
  4. 神経症傾向:不安やストレスを感じやすいか
  5. 開放性:好奇心が強く、新しい経験を好むか

 

みたいな感じです。すべての参加者には性格テストを受けてもらいまして、その結果とDNA上の違いを比べたんだそうな。具体的には、ゲノム全体をスキャンし、「この遺伝的変異を持つ人は、平均すると少しだけ外向性が高い」みたいな相関が出ないかどうかを探したわけですね。

 

その結果なにがわかったかと言いますと、

 

  • ビッグファイブに関連する遺伝子座が1260カ所見つかり、そのうち824カ所は、これまで性格との関連が確認されていなかったものだった!
  • さらに、これらの関連は国や年齢が違っても大きく変わらず、本人による性格評価だけでなく、友人などによる他者評価でも確認された!
  • 兄弟姉妹を比較した分析でも同じ傾向が見られたため、「似た家庭環境で育ったせいで、遺伝子と性格に関連があるように見えただけ」という可能性も小さい

 

だそうです。性格と遺伝子の関係は確かに存在しており、しかも国や年齢をまたいでも、かなり安定して確認されたってことですね。

 

 

 

「外向性遺伝子」が見つかったわけではない

ってことで、この研究だけ見ると「やっぱ性格は遺伝子で決まるんじゃん!」と思っちゃうわけですが、ここで注意したいのが、このデータによって性格を決める遺伝子が発見されたわけではないってところです。

 

というのも、今回見つかった遺伝的変異は、どれも単独では性格にごく小さな影響しか持たないんで。特定の変異をひとつ調べても、その人が社交的なのか、心配性なのかを予測することは、ほぼ不可能なんですよね。

 

実際、ここで調べられた一般的な遺伝的変異をすべて合わせても、性格の個人差の約4.8〜9.3%しか説明できなかったそうな。なので、現時点の遺伝子情報だけを使って、「あなたは外向的です」「あなたは誠実性が高いです」と判定するのは無理ってことですな。

 

 

 

遺伝率は40〜60%なのに、なぜ説明できるのは1割未満なのか?

となりますと、ここで「あれ?過去の研究だと性格の50%ぐらいが遺伝で決まるって言ってなかった?」って疑問がわく人もおりましょう。確かに、これまでの双生児研究では、性格の個人差の40〜60%ほどが遺伝が原因だと推定されてきましたからね。それなのに、今回の研究で説明できたのは最大でも1割弱ってのは、数字が食い違っているように見えるんですよ。

 

では、この差がなんで起きたかと言いますと、ズバリ「遺伝率」の測り方が違うためです。どういうことかと言いますと、

 

  • 双生児研究では、一卵性双生児と二卵性双生児の性格を比べて、遺伝の影響をまとめて推定する。ここには、一般的な遺伝的変異だけでなく、珍しい変異、複数の遺伝子の組み合わせ、遺伝子と環境の相互作用なども含まれる可能性がある。
  • 今回のゲノムワイド関連解析は、多くの人が持っている一般的な遺伝的変異を足し算する。そのため、珍しい変異や複雑な遺伝子の相互作用は十分に捉えられないし、性格検査そのものにも測定誤差がある。

 

みたいな感じです。こういうった測定法の差があるために、

 

  • 双生児研究:遺伝の影響を広くまとめて推定する
  • ゲノム研究:実際に測定できた一般的な変異から説明する

 

という違いが生まれるんですよ。要するに、双生児研究が示す遺伝率と、DNAから実際に説明できる割合の間には、大きな差があるわけですね。この問題は、一般的に「失われた遺伝率」と呼ばれております。

 

 

 

「遺伝率50%」は、性格の半分が固定されているという意味ではない

あと、これは『社会は、静かにあなたを「呪う」』でも強調したことなんだけど、もうひとつ「遺伝率は個人についての数字ではない!」ってのも大事なポイントであります。

 

たとえば、ニュースで「神経症傾向の遺伝率が50%!」って話が出てたとしても、これは「私の不安っぽさの半分は遺伝子で、残り半分は環境でできている」という意味じゃないんですよ。

 

くわしくは『社会は、静かにあなたを「呪う」』をお読みいただければと思いますが、遺伝率ってのは、ある集団に見られる個人差のうち、どれくらいが遺伝的な違いと関連しているかを表した統計なんですよね。そのため、どの集団を調べるか、どのような環境で暮らしているかによって数字は変わっちゃうんですよ。

 

さらに、「遺伝する」ことと「それが、変えられるかどうか?」ってのも別問題でして、たとえば、

 

  • 視力や体重にも遺伝の影響があるが、メガネ、食事、運動、生活環境などによって結果は変わる。
  • 筋力や持久力にも遺伝の影響があるが、運動を続ければ能力は大きく伸ばせる。

 

みたいな感じっすね。これは性格も同じで、遺伝子は一定の傾向を作るものの、それがどのような行動として現れるかは、いろんなもんに左右されますからね。同じ遺伝的傾向でも、置かれた環境によって結果は変わりまくるってのが、めっちゃ大事なところ。

 

 

 

性格は「遺伝か環境か」では説明できない

ってことで、ちょっとややこしい話になりましたけど、ざっくりと結論をまとめると、

 

  • 性格には多数の遺伝子が少しずつ関係しているため、遺伝子から個人の性格を予測することはできない

  • 遺伝的傾向は、環境や経験と相互作用しながら現れるんで、遺伝の影響が大きくても、性格が固定されているとは限らない

 

みたいな感じです。まぁ『社会は、静かにあなたを「呪う」』で言ってることとあんま変わらない結論ですけども、とにかく性格と遺伝の問題に関しては、「生まれつき変えにくい傾向があるのは確かだけど、その傾向がうまく働く環境や習慣を選べばいいよなー」ぐらいに考えておくと良いでしょうな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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