小さな会社が大企業に勝つための「4つのソフトパワー戦略」を調べた研究の話
「資金も人材もブランド力もない新しい会社が、どうすれば大企業に勝てるのか?」って問題を考えた論文(R)が面白かったのでメモしときます。
これは過去の事例や文献をもとに理論を作った研究でして、小さな企業が大企業に対抗する方法を調べたもの。ここで研究チームがどのような問題意識を抱いたのかと言いますと、
- 普通に考えれば、スタートアップや個人事業主が大企業と戦うのは、かなり不利だよねー。だって、大企業は大量の商品を安く作れるし、広告に大金を使えるし!
- となると、資金の少ない新興企業には勝ち目がないように思えるけど、弱者には別の戦い方があるんじゃないの?
みたいな感じです。大企業ってのは、お金、設備、人材という「ハードパワー」が凄すぎるんで、ちょっと考えたら弱小が立ち向かうのは無理っぽいわけですけども、実際にはそんなこともないんじゃないかってことっすね。
弱者は「資源の量」で勝負してはいけない
ということで、研究チームは、小さい会社が大企業に立ち向かう手段として、「ソフトパワー」を挙げております。こいつは、もともとは国際政治で使われてきた言葉で、武力や経済制裁で相手を従わせるのではなく、価値観とか物語で相手の考え方を変える力を指しております。
これを企業の世界に当てはめると、
- この会社を応援したい!
- この商品を使うことに意味がある!
- このブランドの価値観に共感する!
みたいに消費者に感じてもらう力……ってとこですかね。資金力では大企業に勝てなくても、消費者の感情や市場の空気を動かすことはできるんで、この力をうまく使えば戦えるんじゃないの?って考え方っすね。
そこで研究チームは、小さな企業が取るべき戦略を、
- 自社の方針や資源をどれだけ自分でコントロールするか
- 大企業に対して、どれだけ対立的な態度を取るか
という2つの軸で分類。その結果、弱者が使えるソフトパワー戦略を、大きく4つほどピックアップしてくれております。
戦略1「幻影」
ひとつ目は「幻影(illusion)」戦略であります。これは、自社だけで戦おうとせず、大企業や有力組織と関係があるように見せる方法のことでして、研究チームいわく、
この戦略は、児童書の『グラファロ』のようなものだ。この物語に登場する小さなネズミは、森の捕食者たちに「自分は恐ろしい怪物と知り合いだ」と思わせることで、食べられずに済む。
とのこと。要するに、小さな会社でも、
- 「○○社と共同開発」
- 「大手企業の公式パートナー」
- 「有名大学との共同プロジェクト」
といった肩書きがつけば、周囲から見た印象は大きく変わるよねー、みたいな話です。実際に資金力が増えていなかったとしても、「この会社には強い後ろ盾があるのでは?」と思わせられれば勝ちだ!という。
もっと身近なところでは、権威ある専門家から推薦をもらったり、有名メディアに掲載されたりするのも、広い意味での幻影戦略でしょうね。まぁ相手への依存度が高くなるのが弱点ですけど、この作戦が使えるなら試すにこしたことはないでしょうな。
戦略2「からかい」
2つ目は「からかい(teasing)」戦略であります。こちらは、大企業と正面衝突せず、小回りの良さを使って相手の弱点を突く方法で、研究チームは『トムとジェリー』にたとえております。
ジェリーはトムよりも圧倒的に小さいものの、狭い穴に逃げ込んだり、動きの遅さを利用したりして、相手を翻弄する。
これと同じように、小さな会社は、大企業が手を出しにくいニッチ市場を狙おうぜ!ってことですね。まぁ、大企業は小回りが利かないってのは、よく言われることですし。
また、ここで研究チームは、「ユーモアのある広告やSNS投稿を使って、大企業を軽くからかうのもアリだよねー」とも主張しておられます。このやり方は、うまくいけば、「巨大企業に立ち向かう頭のいい小企業」みたいな物語が生まれて、消費者から応援してもらいやすくなるってことだそうな。ただし、相手を攻撃しすぎると、単なる悪口や炎上商法にも見えちゃうんで、「小気味よさ」を感じさせるのがポイントとのこと(まぁ、このさじ加減が難しいんだけど)。
戦略3「連帯」
3つ目は「連帯(solidarity)」戦略です。これは、一社では弱い企業どうしが協力し、新しい市場ルールや価値観を作る方法のことで、研究チームは、映画『バグズ・ライフ』を例に挙げております。
映画の中では、一匹ずつなら弱いアリたちが、自分たちの数の多さに気づき、支配者に対抗していく。
ビジネスでいえば、クラフトビール業界などがわかりやすい例でして、
- 小さな醸造所どうしが製造ノウハウを共有し、イベントを開く
- これによって「大量生産ではない本物のビール」という価値観を広める
- そのおかげで、個々の企業は小さくても、業界全体として大手メーカーとの差を打ち出せる
みたいな感じっすね。会社どうしが助け合って、「私たちは大企業とは違う価値を提供している!」という共通の物語を作るのがポイントっすね。
まぁ、これも参加企業が増えるほど意見がまとまりにくくなるんで、そこは注意ですけども。
戦略4「勇気」
最後は「勇気(courage)」戦略です。これは、大企業の問題点を正面から批判し、自社の技術や価値観によって市場を変えようとする方法であります。たとえば、
- 「従来の商品は環境を破壊している」
- 「業界の価格設定は不透明だ」
- 「既存企業は顧客のデータを乱用している」
などと訴えて、大企業との違いをハッキリさせるパターンですな。大企業を批判する行為そのものが、「勇気ある挑戦だ!」とみなされるわけです。
ただし、これは4つのなかでも危険な戦略で、相手から値下げ攻勢を仕掛けられたり、流通網から締め出されちゃったら、小さな会社は簡単に倒れちゃうんで。正面から戦うなら、相手が反撃してきても耐えられるだけの準備が必須。
どの戦略を選べばいいのか?
ってことで、いずれも「まぁそうですよねー」って感じの戦略ですけども、これらの分類を実際に使うなら、まずは次の2点を考えると良さそうであります。
- 自社のブランドや技術を、どこまで自分でコントロールしたいか?
- 既存の大企業と、どこまで対立する覚悟があるか?
でもって、
- 大企業と協力してもよく、ある程度の主導権を手放せるなら「幻影」
- 自社の独立性を保ちつつ、正面衝突を避けたいなら「からかい」
- 一社では勝てないものの、同じ価値観を持つ仲間がいるなら「連帯」
- 独自の技術や強い理念があり、反撃を受ける覚悟もあるなら「勇気」
みたいに判断していく感じになるんでしょうな。もちろん、この研究は実験や大規模データを使って「この戦略なら成功率が○%上がる」と確認したものじゃないんで、そこはご注意ください。この4分類は、あくまで「自分がどのような力を使って戦おうとしているのか?」を考えるための土台としてお使いいただくといいでしょう。どうぞよしなにー。



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