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「タンパク質を減らすとオートファジーが働いて若返る!」はどこまで本当か?みたいな話

   


「タンパク質を減らすと老化が遅くなる!」みたいな考え方が、昔からあるんですよ。これは長寿研究の世界で昔から議論されてきた話で、

 

  1. タンパク質を摂りすぎると、細胞の成長を促すシグナルが活発になりすぎるのでは?
  2. タンパク質を制限すると、細胞の修復機能(オートファジー)が高まるのでは?
  3. その結果、老化のスピードを遅らせることができるのでは?

 

みたいな仮説が提唱されてるんですな。

 

「オートファジー」ってのは、細胞の中にある古くなったタンパク質や傷んだ部品などを分解して、再利用する仕組みのこと。私たちの細胞は、日々の活動のなかで不要な成分や傷んだ構造物を生み出してるんですが、こうしたものを適切に処理しないと、細胞の働きに悪影響が出ちゃうんですよ。

 

なので、オートファジーが働くと、細胞の中を掃除して、使える材料をリサイクルできるようになりまして、これが「アンチエイジングに効く!」と言われてるわけです。実際、過去の動物実験では、タンパク質や特定のアミノ酸を制限することで、寿命や代謝に良い変化が起きたケースが報告されてまして、人間でも同じような効果が得られるんじゃないか?と期待されてきたわけです。

 

では、本当に「長生きするためにタンパク質を減らすべきなのか?」ってことで、新しい実験(R)ではそのあたりを確かめてくれておりました。

 

これは、オーストラリアの研究チームが行った試験でして、63人の男女に以下の2種類の食事を試してもらったそうな。

 

  1. 通常タンパク質食:摂取カロリーの20%をタンパク質から摂る
  2. 低タンパク質食:摂取カロリーの10%をタンパク質から摂る

 

それぞれの食事は4週間ずつ続けてもらい、途中には4週間の休止期間を設けたとのこと。つまり、参加者全員に両方の食事を経験してもらい、タンパク質の量による違いを比較したわけっすね。

 

これは、具体的な数字で考えると、1日2,000kcalを食べる人の場合、

 

  • 通常タンパク質食:タンパク質100g
  • 低タンパク質食:タンパク質50g

 

みたいな計算になります。その上で、みんなのオートファジーがどれぐらい働いているかを測定したんですな。

 

でもって、実験の結果がどうだったかと言いますと、

 

  • タンパク質を減らしても、血液中の免疫細胞のオートファジーには有意な変化が見られなかった!(p=0.28)

 

だったそうです。どうやら、タンパク質の摂取量を減らしたところで、期待されていたオートファジーの活性化は確認できなかったらしいんですよ。

 

それどころか、体組成を調べると、

 

  • 低タンパク質食では、体重がわずかに減少した

  • 筋肉量もわずかに減少した

  • 一方で、脂肪量には明確な違いが見られなかった

 

という結果になっていたとのこと。さらに、空腹時血糖や血中脂質、生活の質などにも、食事条件による明確な違いは確認されなかったってことで、これはなかなか考えさせられる結果っすね。

 

というのも、ご存じのとおり、「筋肉量」ってのは健康寿命を左右する重要な要素のひとつですからね。人間の筋肉量は加齢とともに減少するんで、特に中高年以降は、筋肉の維持が健康寿命を守るうえでめっちゃ重要なんですよ。

 

なにせ、筋肉が減ってしまうと、

 

  • 筋力が落ちて、日常生活の動作が難しくなりやすい

  • 転倒や身体機能の低下につながる可能性がある

  • 身体活動量が減って、さらに筋力が衰える悪循環に陥りやすい

 

といった問題が起きちゃうもんで、長生きを目指すうえでは、できるだけ筋肉を減らさないことが大事。まぁ、今回の実験で見られた筋肉量の減少は小さいので、これだけで将来のサルコペニアや身体機能の低下につながるとは言えないですけど、長寿を目指してタンパク質を減らしたのに、筋肉が減っちゃうのはやっぱよろしくないっすよね。

 

ただし、今回の研究から「タンパク質は多ければ多いほどいい!」と結論づけるのもまた早計なので、ご注意ください。

 

というのも、タンパク質の摂取量と長寿の関係は、まだわからないことが多くてですね、

 

  • タンパク質の摂取量によって、mTORC1やIGF-1といった成長に関係するシグナルが変化することは知られている
  • 動物実験では、特定のアミノ酸を制限することによって代謝や寿命に良い影響が出るケースも見られている

 

みたいな知見もあるもんですから。また、タンパク質の適切な摂取量は、

  • 年齢
  • 運動習慣
  • 筋肉量
  • エネルギー摂取量
  • 健康状態

 

などによっても変わってきますんで、必要なタンパク質の量は条件によって大きく変わると考えたほうがいいでしょうね。つまり、タンパク質については、単純に「少ないほうが長生きする」「多いほうが健康になる」と考えるのではなく、自分の身体に必要な量を確保することが大事ってことなんでしょうな。

 

というわけで、今回の話をまとめると、

 

  1. 低タンパク質食でも、血液中の免疫細胞のオートファジーに有意な変化は見られなかったが、一方で低タンパク質食では体重と筋肉量がわずかに減少した。

  2. ただし、ほかの組織のオートファジーや長期的な老化への影響まではわからない。

 

ってとこでしょう。一部のアンチエイジング界隈では「タンパク質制限」が流行ってたりしますが、現時点では、若返りを期待してタンパク質を積極的に制限するよりも、必要量をきちんと確保しつつ、筋トレや日常的な身体活動によって筋肉と身体機能を維持するほうが、根拠の確かな老化対策と言えそうですなぁ。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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