【質問】体脂肪を正確に判断したいのですが、どうすればいいですか?
こんなご質問をいただきました。
パレオさんは、自分の体脂肪率をどう判断していますか? タニタの体脂肪計を買ったのですが(両手でバーを持つやつです)、日によって結果がバラバラで、判断ができなくて困っています。
ということで、「体組成を正しく判断するにはどうすればいいのか?」とのご質問です。確かに、体組成計の結果ってのはバラつきが大きく、お困りの方も多いのかもしれません。
では、「どうすればいいのか?」ってことですが、まず私の結論から申し上げますと、
- もう体組成を測るのはあきらめた!
って感じです。出鼻をくじくようですみませんが、いろいろ調べるにつけ「自分の体脂肪率を正しく把握するのは無理だなー」って結論にしかならないもので。
というのも、現時点では、体組成を推定する優れた方法って存在しないんですよ。たとえば、いま市場に出回る体組成計はBIA法を使ったものがほとんどですが、この手法の精度が低いのは有名な話でしょう。
BIAってのは、電流が体内組織を通過する時間を測定する方法ですが、その精度を調べた研究(R)によると、測定の誤差は8%にも及んだそうな。つまり、本当は体脂肪が4%減ったかもしれないのに、体組成計では「体脂肪が4%減った!」という結論が出ちゃうかもしれないわけですね。
ここまで誤差が大きいのは、BIAの数値が、予測にもとづく予測でしかないからです。すごーくざっくり説明すると、一般的な企業がBIAの体組成計を開発するときってのは、
- メーカーがたくさんの人を集めて、別の方法で体組成を測定する(最も正確な4C法ではなく、水中体重測定が使われることが多い)
- その結果を、自社の体組成計の結果と照らし合わせて、予測式を作る。
みたいな手順をふむんですよ。しかし、このときに問題なのは、測定のネタ元となる水中体重測定にも間違いが出やすいところで、最大6%ぐらいの誤差があるんですよ。そこへさらにBIA自体の誤差が重なるので、いよいよ正確な数値からは離れていくわけですな。
しかも、ご存じのとおり、BIAは筋肉量の測定が苦手でして、筋肉が多い人が使うと「この人は脂肪が増えた!」と判断しがちだったりします。そのため、近ごろは筋肉量を考慮した体組成計も増えてますが、私がこのモードをオンにして計測すると体脂肪は13〜15%ぐらいですが、オフにすると30%台を叩き出しますからね。
これは逆もまたしかりで、筋肉の多い人がトレーニングをやめて脂肪が増えたときでも、BIAの体組成計では体脂肪率が変わらないこともあったりします。これも困った問題ですなぁ。
ちなみに、この問題は、大手のクリニックなどで使われるDEXAスキャナーも同じで、個人誤差が最大で4~5%、最悪の場合は10%を超える誤差が発生したりします。DEXAスキャナーは組織の厚みを直に測定できないので、2次元のスキャンから3次元の体組成を推定するしかなく、結果としてかなりのエラーが出てしまうんですよ。
つまり、クリニックの体組成計で「体脂肪率が20%でした!」と結果が出た場合、実際の体脂肪率はだいたい15〜25%の間にブレが出ている可能性が大。これだけ幅が広いと、参考にはならない感じがしますよねぇ。
ってことで、以上のデータをふまえて、私は「個人で体組成を評価するのって無理じゃない?」という結論に至りまして、いまでは体組成計は体重の変化しか見てなかったります(というか、最近は体重すらほとんど測っていない)。
では、体組成の計測エラー問題について、私がどう考えているかと申しますと、
- 別に体組成なんか知らなくてもいいのでは?
って感じです。なにせ、体組成を知らなくても、大半の目的は普通に達成できるもんですから。たとえば、以下のような感じです。
- 健康維持が目的である場合:いつまでも若々しくいたい場合、体脂肪率を気にするよりも、健康診断に行ってコレステロールや血圧、炎症レベルなどをチェックしたほうが、よっぽど正確で役に立つ。
- 見た目を改善したい場合:ルックスを良くしたい場合も、体脂肪率の変化に一喜一憂するよりも、毎日自分の腹を写真に撮っておいて、それを並べて見るほうが正確。ぱっと見で「前より引き締まった!」と思えたら、今の方法が正解である可能性が高い。
- 筋肉量を増やしたい場合:筋肉をもっと増やしたいときも、体脂肪率を見るよりは、上と同じく日々の変化を写真に撮っておくか、ジムで以前よりも思い重量を持ち上げられるようになったかどうかを計測したほうが楽で正確。
- 運動能力をアップしたい場合:スポーツのパフォーマンスを向上させたいときも、体脂肪がどうこうを気にするよりは、そのスポーツの成績(ジャンプの高さとかランニングのタイムとか)をチェックしたほうが楽で正確。
つまり、「体脂肪率を減らしたい!」と思うときってのは、その裏に別の目的があるはずで、そのゴールを達成するためには、もっとよい判断方法があるはずなんですよ。そんなわけで、いまの私はほぼ体重すら計測しておらず、人間ドックの血液検査を判断材料にしているのでした。どうぞよしなに。