なぜ、あの人はすべてを人のせいにするのか?の科学
すべてを人のせいにする人がいますな。自分のミスを他人に押し付けたり、自分の欠点は周囲が原因だと考えたりと、なかなか厄介な現象でございます。
では、なぜすべてを人のせいにする人がいるのか?ってことで、新たな研究(R)は、そのあたりを調べてくれておりました。
ここでは3つの実験が行われてまして、おおまかなデザインはこんな感じです。
- 参加者に「秘書として働いているところ」を想像させ、48の事務作業をやってもらう。
- そのプロセスで、みんながどれぐらい『投影』を行ったかを判断する。
- みんなの感情コントロール能力をチェックする。
ここでいう『投影』ってのは、人間が自分の心を守る際に使う防衛メカニズムの一種で、自分が不安を感じるような場面や、自分が持つマイナスな特性を否定し、その代わりに他人の中にそれらを投影して考える、という現象です。
たとえば、浮気を何度もくり返すような人ほど、自分の彼氏/彼女に対して「お前は浮気をしようとしている!」と非難する現象がよく見られるんですよ。これは投影の代表例で、本当は自分が浮気をしたいのに、その事実を認めると罪悪感や恥といった不快な感情に悩まされるので、そこから逃げるために他人を非難して身を守るわけですね。
このメカニズムはほぼ無意識のうちに行われるため、本人に投影を起こしている自覚はゼロ。たいていは、自分でも気づかぬうちに、自分のミスや欠点の投影がはじまるので、かなり難しい問題だと申せましょう。
でもって、3つの実験でわかったことをざっくりまとめると、こんな感じになります。
- 実験1の結果:感情のコントロール能力が低い人は、ネガティブな感情を経験したときに、自分のダメな部分を他人に投影する行為の量が増えた。つまり、ネガティブな感情への対処が苦手な人は、自分の選択ミスを他人のせいにする傾向があるのだと思われる。
これに対し、感情コントロールが上手な人は、ネガティブな感情が増加しても同じような影響を受けなかった。
- 実験2の結果:感情のコントロール能力が低い人は、強い怒りを感じているときほど、自分のダメな部分を他人に投影する行為の量が増えた。一方、感情コントロールが上手い人は、強い怒りを感じていても、他者への投影は起きなかった。
- 実験3の結果:感情のコントロール能力が低い人は、ネガティブな感情を抱いたときほど、自分のミスや失敗を他人に投影するようになった。このような投影現象は、過去に体験したネガティブな出来事を思い出しただけでも増幅した。また、投影が多い人は、他人を責めることにより、実際にネガティブな感情が低下した。
そんなわけで、どうやら感情コントロールが下手な人ほど投影を起こしやすく、それゆえに「すべてを他人のせいにしてしまう」現象が起きるのではないか、という結論です。ネガティブな感情に弱いから、その不快さをやわらげようとして他人のせいにしちゃうってのは、非常によくわかる話じゃないでしょうか。
研究チームいわく、
この研究では、 感情調節の違いによって、 自分のミスや不幸を自分で責めるか、他人を責めるかが予測された。
とのこと。自分のミスを他人のせいにするかどうかは、かなりのところまで感情コントロール能力で予測できるのではないか、と。
つまり、ここまでの話をまとめると、
- 感情のコントロールが下手な人ほど 、ネガティブな感情を経験すると、自分のミスは他人のせいだと思い込む傾向がある。
- 人のせいにする人は、他人を非難することで、実際に否定的な感情 (怒り、罪悪感、恥など)が減る 。そのため、自分のミスを他人のせいにしがちな人は、この傾向がどんどん増していきやすい。
みたいになりますね。当人にとっては他責は気分が良いので、いよいよ他人のせいにする傾向が加速するわけです。
そう考えると、このデータを現実に活かすならば、
- 人のせいにする人に巻き込まれた場合:「あー、この人は、いま不快感から逃れるために、自分のミスをこちらのせいにしているんだなー。この人がいま感じているのは恥の感情だから、そこらへんをやわらげてやることで、自分のミスを認めてもらう方向に持ち込めないかなー」と考えてみるとよさげ。逆に、「いや!自分のミスじゃん!」と正論をぶつけても、相手にはまったく無効であるどころか、反発を呼ぶだけに終わる可能性が大きい。
- 自分の失敗を他人のせいにする傾向がある場合:セルフコントロールのトレーニングや「無(最高の状態)」で紹介したマインドフルネス系のトレーニングを行い、果的な感情調節の方法を学んでみる。
みたいになるでしょうね。まぁ、「自分のミスを人のせいにしたい!」という気持ちは、誰もが多かれ少なかれ持っているでしょうから、普段から意識しとくといいかもですねー。