「自分の考えや感情は隠さずにガンガン正直に話したほうがいいよ!」というシカゴ大学実験
「どこまで正直に相手と会話するか?」って判断は意外と難しいもんです。別にウソを重ねた会話をするって意味ではなくて、
- 気まずくなりそうだから、この話は黙っておこう……
- 機嫌を損ねちゃいけないから、あえて批判はしないでおこう……
- 自分の考えを言ったら引かれそうだから秘めておこう……
ぐらいのことは誰でも思ったことがございましょう。これも大人の処世術とでも申しますか。
が、シカゴ大学の論文(1)では「気持ちや考えを隠すのは悪手!ガンガン正直に行きなはれ!」って結論になってて勉強になりました。
これは3つの実験で構成された論文で、研究チームは以下のように申しておられます。
私たちは、正直すぎる会話をためらいがちだ。相手に正直な批判をぶつけたり、自分の秘密をバラしたりすると、お互いのあいだに気まずい雰囲気が流れてしまうと思うのだ。
うーん、なるほど。まさに私がこんな感じなので、身につまされるところではあります。
で、最初の実験では約150人の男女を集めて、3つのグループに分けております。
- 3日だけできるだけ正直にコミュニケーションしてね!と指示する
- 3日だけできるだけ親切にコミュニケーションしてね!と指示する
- 3日だけできるだけ自分の会話や行動に意識的になりながらコミュニケーションしてね!と指示する
その後、全員には「会話をどれぐらい楽しめたか」や「社会的なつながりの感覚はどうなったか」や「長期的に相手との関係がどうなったか」などを採点してもらったんだそうな。その結果、なにがわかったかと言いますと、
- 「正直に会話したら関係性が悪くなるだろうな……」と思う人がとても多かった
- ところが、実際は「正直な会話」を重ねても問題はなかったし、コミュニケーションへの悪影響も観察されなかった
だったんですな。みんな「正直な会話」に偏見があるんだけど、実際は別に悪いものではないんだ、と。その意味で人間には「正直な会話」を避けるようなバイアスがあるのかもしれないぞ、と。
さらに、もうひとつはラボで行われた実験で、参加者達を2つに分けております。
- 研究者が作った「話題リスト」に沿って会話をする
- 「できるだけ正直に会話しあってくださいね」とだけ指示をする
このあと、全員に会話の満足度などを尋ねたところ、結果は最初の実験とほぼ同じ。たいていの人は「正直に話したらヤバいでしょう……」と予想したにもかかわらず、実際にはなんの悪影響もなかったどころか、関係性を深めるのに役立ったんだそうな。
研究者いわく、
すべてを総合すると、今回の結果は、正直さを避ける戦略の間違いを示している。正直さを避けると、私たちは長期的なチャンスを逃してしまう。
とのこと。人間はつい正直な反応や感情を避けてしまいがちなんだけど、そこをぐっとこらえて口にしてみたほうがいんだ、ってことですな。
もちろん、これは「あえて嫌なことを言え!」って話じゃなくて、「自分の感情や思考と一致した発言をしよう!」って意味なんでご注意ください。どうぞよしなにー。