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先進国の人間って、もしかして脳が衰えてきてるんじゃない?みたいな観察研究のお話



 

先進国の人間って、もしかして脳が衰えてきてるんじゃない?」みたいな怖いデータ(R)が出ておりました。かつては「人類の脳の働きはどんどん良くなってる!」みたいな数字も出てたんですが、あらためて計測してみたところ、

 

  1. 1890年〜1923年に生まれた世代から、1942年〜1947年にまでに生まれた世代までは、確かに認知テストの成績は上がり続けていた

  2. ところが、1954年〜1959年に生まれたベビーブーマーから後は、認知テストの成績が下がり始めた

 

みたいな結果だったんだそうな。

 

 

これは1996年〜2014年に行われた健康調査に参加したアメリカ人30,191人のデータを分析したもので、だいたい2年おきに全員に認知テストを受けてもらい、

 

  • 前に聞いた言葉をすぐに思い出せるか?
  • 暗算で100から7を引き続ける作業ができるか?
  • 提示された物の名前をすぐに言えるか?

 

といったタスクで認知機能を計測したらしい。すると、上記のようにベビーブーマーから後の世代には、記憶力、問題解決力、意思決定力、注意力といった機能の低下が見られたらしい。うーん、意外。

 

 

研究チームいわく、

 

認知テストの成績は、過去に何世代にもわたって増加してきた。ところが、ベビーブーマーからあとの世代で認知機能が低下し始めたのは衝撃的だ。

 

さらに驚かされたのは、このような認知の低下がすべてのグループで見られたことだ。男性、女性、人種、民族、教育レベル、所得レベルなどを問わず、同じ減少が確認された。

 

とのこと。この手の研究では、だいたい「富裕層ほど認知機能が高い」みたいな結果が出がちなんですけど、ここで認められた認知の低下はどのグループにも当てはまったんだ、と(今回のデータでも裕福な層が認知機能が高めに出てはいるものの、あくまでわずかなレベル)。

 

 

では、認知機能が低く出た人たちにどのような特徴があったのかと言いますと、

 

  1. 孤独感が大きい

  2. 抑うつの症状が出ている

  3. 運動をしていない

  4. 太り過ぎ

  5. パートナーがいない。または複数回の結婚をしている

  6. 精神医学的な問題を抱えている

  7. 脳卒中、高血圧、心臓病、糖尿病などのリスクが高い

 

って感じだったらしい。全体的には「運動をしないで社会から孤立した人」の認知が下がっているようで、現代の暮らしに特有の問題が原因になってそうだなーって印象が強いっすね。逆に幼少期の健康レベルや裕福さは、高齢になってからの認知低下とは相関しなかったそうで、「へー」って感じでした。

 

 

もちろんこれはアメリカのデータなので、日本で同じ結果が確認されるかはわからんのですが、孤独と運動不足の問題は本邦でも顕著な傾向ですからねぇ。まぁアメリカは日本よりも医療へのアクセスが悪いので、そのせいでもっと事態は深刻なのかもしれませんが。

 

 

チームいわく、

 

米国では高齢化が進んでいるため、これから認知症の人が増える可能性が高いと考えられていた。

 

しかし、今回の研究に照らせば、これから数十年における認知症の増加は予想を超える可能性があるかもしれない

 

とのこと。高齢化と孤独の問題は対岸の火事でもないので、コミュニティと運動の改善はしておきたいとこっすね。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。