今週の小ネタ:退屈感は感謝で乗り越える、表情を豊かにするだけでモテモテ、夜型は朝型より頭が良いのかも?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
「毎日が退屈だなぁ……」と思うなら感謝を鍛えよ
「感謝の気持ちにはメリットが多いよー」って話をよく書いております。意識して感謝の気持ちをブーストすると幸福度が上がるし、貯金も増えるし、エクササイズのモチベーションも上がるし、やたらと良いことが多いみたいなんですよ。
で、新しいデータ(R)も感謝のメリットについて調べていて、まずは研究チームの結論からまとめると、
- 感謝の気持ちが退屈を防ぐ!
って感じになります。 感謝の気持ちには、私たちに「自分の人生は有意義だ!」と感じさせる働きがあり、そのおかげで退屈さを防げるかもしれないらしい。
人間なら誰でも「退屈」を感じるもんですが、近年では、そのダメージは思ったよりも大きい可能性が出てきまして、退屈感をよく抱く人は人生から目的意識が失われ、いじめや暴飲といった破壊的な行動に出るケースが増えるらしいんですね。割と見過ごされがちな感情ですが、放置しておくと良くない結果につながりやすいわけです。
ということで、リムリック大学の研究チームは、4つの実験を行ってます。
- 研究1:81人の参加者に、感謝と退屈の評価を行う。
- 研究2:120人の参加者に、別の感謝の評価、同じ退屈の評価、人生の意味の評価を行う。さらに230人の参加者に、研究1の感謝テスト、研究2の他の2つのテスト、肯定的感情と否定的感情のテストをする。
- 研究3:300人の参加者で、「感謝をすると退屈しないら?」を検証する。
- 研究4:244人の参加者に感謝の気持ちを抱いてもらい、それで退屈さが減るのかを調べる。
その結果、いずれの研究でも、退屈と感謝の気持ちの低下との関連が示されまして、研究チームはこんなことを言っておられます。
研究1では、感謝する人は退屈しにくいことが明らかになった。
研究2では、感謝する人は退屈しにくいことが示され、この効果は、人生における意味の高まりによって統計的に媒介された。
研究3では、感謝の気質が、人生における意味の認知の高まりを介して、退屈の軽減を予測した。
研究4では、実験的に誘導された感謝の気持ちが、人生の意味の認知を高めることによって、退屈が軽減された。
もちろん、これは相関関係を立証しただけなんですが、感謝によって「人生の意味」の感覚が高まり、それによって退屈が減るってのは、直感的にもわかりやすい説明ではないでしょうか。やっぱ感謝を鍛えないとなぁ……。
表情を豊かにするだけでモテモテだ!
「簡単に好感度を上げたきゃ、とにかく表情を豊かにしろ!」ってデータ(R)が出ておりました。文献のタイトルは「豊かな表情は社会的に有利である」でして、人間の表情は相手に感情を伝えるだけでなく、いろんな対人関係の目標を達成するために使える社会的なツールなのだ!って観点が強調されておりました。
これらはノッティンガム・トレント大学の調査で、研究チームは、52人の男女が交わした自然な会話のデータを1,500以上ほど分析。さらに、この会話動画を170人以上の参加者に見てもらい、話し手の感情や表情、好感度などを評価させたらしい。
すると、研究チームの予想どおり、豊かな表情で話をする参加者ほど、
- 好感を持たれやすい
- 「この人はこちらに好意的だ」と認識されやすい
- 能力が高そうに思われる
- 人としての魅力が高いとみなされやすい
って傾向があったとのこと。昔から「感情表現が豊かな人ほど良い友人が多い!」みたいな研究は多かったですが、それを裏づけるような結果ですねー。
また、この研究では、顔の表情と性格特性との関係も調べてまして、表情が豊かな人は、協調性と外向性が高かったらしい。これもまた、顔の表情が人間の社会的なツールキットのひとつであることを示唆してますな。
研究チームいわく、
今回のデータは、顔の表情がポジティブな社会的結果と関連していることを示している。 表情が豊かな人ほど、社会的なパートナーを惹きつけ、人間関係を築くのに成功している。これは、紛争の解決においても重要だろう。
とのこと。とにかく、豊かな表情は社会的な優位性をもたらすカギなんで、意識して変えておくと良さそうっすね。
夜型は朝型より頭が良いのかも?
その昔、「夜ふかしな人にも意外な美点があるんだよー」みたいな話を書いたことがありました。現代では早起きがもてはやされがちだけど、夜ふかしにも意外と良いところがあるんだよーってデータは割と多いんですよね。
新しいデータ(R)も「夜ふかしの良いところ」を検証したもので、インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームは、2万6000人以上のイギリス人のデータを分析。みんなの睡眠時間や質と調べ、その傾向が認知能力にどのような影響を及ぼすかを調べたんですよ。
そこで何がわかったのかと言いますと、
- 夕方の活動を好む人(いわゆる"夜ふかし")は、"早起き"の人と比べて、認知テストで高いスコアを出すことがわかった。
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夜型の体内時計を持つ人は、朝型より一貫して脳の働きを示すスコアが高い。 あるグループでは、夜型が13.5%、別のグループでは朝型より7.5%高いスコアを出した。
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また、昼型(朝型でも夜型でもない人)も、朝型より6.3%から10.6%高いスコアを出した。
みたいな感じです。通常、人間の脳は7時間から9時間の睡眠で最適化され、記憶力、推理力、情報処理速度が高まるものなんですが、それとはまた別に、朝型か夜型のクロノタイプが認知機能に影響を与えているんじゃないかってことですね。ちなみに、これらの差は、年齢、性別、喫煙、飲酒、慢性疾患などの要因で調整した後でも有意だったそうな。
研究チームいわく、
すべての朝型人間の認知能力が低いというわけではないことには注意してほしい。しかし、この調査結果によれば、夜型の方が認知能力が高いという全体的な傾向があるようだ。
とのこと。夜型のほうが脳の働きが良いのかどうかは謎ですが、サトシ・カナザワ先生などは、「夜型だから頭が良いのではなく、頭が良い人は夜型のライフスタイルに適応できるのでは?」みたいな考え方をしてらっしゃいますね(R)。この考え方が正しいのかどうかはわからんですが、似たような報告は昔からあるんで、夜型のほうが脳がよく働いている傾向はありそうであります。
まぁ、そう言っても、朝型か夜型かの大半は遺伝で決まっちゃうんで、このへんは気にしても仕方ないポイントではあります。どちらかと言えば、自分が朝型か夜型かを判断したうえで、それに適した睡眠パターンを身につけるのが最も大事だと言えましょう。