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有酸素運動と筋トレで健康になるための「最小量」はどれぐらいなの?


有酸素運動と筋トレって、どっちを優先すれば良いのか?」って問題が昔からあるわけです。ランニングするのとダンベルを上げ下げするのでは、どちらが健康に良いのかってことですね。

 

この問題については諸説あるんですが、近ごろピッツバーグ大学のリー・ダックチョル先生が、良い研究(R)を出してくれていて勉強になりました。この先生は、運動の長期的な健康に関する多くの論文を執筆している有名な博士ですね。

 

これは35歳から70歳までの成人406人を対象にした調査で、1年にわたって以下のエクササイズを指示したんだそうな。

 

  1. 週3回、1時間の筋トレをする
  2. 週3回、1時間の有酸素トレーニングをする
  3. 週3回、30分の筋トレと30分の有酸素トレーニングをする
  4. まったくトレーニングをしない

 

筋トレだけ、有酸素運動だけ、筋トレ+有酸素運動ってグループを作り、それぞれがどれぐらい健康になったかを確かめたわけっすね。この手の研究としては参加者も多いし、1年も実験を続けているしで、非常に良い調査ではないでしょうか。

 

でもって、1年後にみんなの心臓や血管の健康をチェックしてみたら、結果はこんな感じになりました。

 

  • 運動をしなかったグループと比べて、運動をしたグループは、いずれ心臓や血管の健康が大きく改善した(これは当たり前)。

 

  • 有酸素運動だけに集中したグループと、筋トレ+有酸素運動グループを比べた場合、心臓や血管の健康におよぼすメリットは同じぐらいだったが、筋トレ+有酸素運動グループは筋力や筋肉量といった別の要素にさらなる改善が見られた。

 

これだけ見てもポイントがわかりづらいかもですが、研究の結果をめっちゃ単純にかみ砕いてみると、

 

  • 1時間の有酸素運動の半分を筋トレに切り替えても、健康になれる効果は同じぐらいだし、ついでに筋力や筋肉量の増加といった追加のメリットを得られるぞ!

 

みたいになります。これを見ると、有酸素運動の量って意外と少なくてもいいんじゃないかなーって感じがしてくるわけです。

 

似たような報告は過去にもあって、2014年の研究(R)では、55,000人以上の男女を集めて、ランニングと全死因死亡率や心血管系死亡率との関係を調べたところ、

 

  • 1日わずか5~10分、ゆっくり走るだけでも、週に3時間以上走ったのと同じぐらいのメリットを得られる

 

って結果だったんですよ。1日わずか5~10分で良いってのは、かなり少なくてホッとしますね。ちなみに、この研究は、当時かなり有酸素運動好きから叩かれまして、「有酸素運動はもっとやるべきだ!」みたいな意見が大量に上がったのを覚えております。

 

また、「運動の量って思ったより少なくて良いのでは?」って報告は筋トレにも存在していて、2022年に門間陽樹先生が行った研究(R)によると、

 

  • 筋トレは全死因死亡リスクを減少させるものの、週30分から60分で最大の効果を得られる!

 

みたいな結論になっています。当然ながら、適切な筋トレの量を掘り下げるためには、もっと多くの研究が必要ではあるんですが、有酸素運動も筋トレも、世の中で言われてるよりは少なくてもいいんじゃないかって気がするわけです(バキバキの体を作りたい!ってのが目的ならまた別ですが)。

 

その意味で、まだまだわからないことだらけではありますが、今回の調査から得られる知見を現実に生かすのであれば、以下のようなトレーニングメニューを実践してみると良いかもしれません。

 

  • 月曜日、水曜日、金曜日の週3回ずつ、以下のトレーニングを行う

    • 30分の有酸素運動:
      • ウォーミングアップとして5分のストレッチ
      • 20分間のジョギングやサイクリング(呼吸がハァハァするぐらいの中程度の強度でOK)
      • クールダウンとして5分のストレッチ

    • 30分の筋力トレーニング:
      • ウォーミングアップとして軽いストレッチとダイナミックムーブメント
      • 主要な筋群をターゲットにしたエクササイズ(各エクササイズを1セット8回ぐらいで3セットずつ)
        • プッシュアップ(胸、腕)
        • スクワット(脚、臀部)
        • ダンベルロー(背中)
        • プランク(コア)

    • クールダウンとして5分のストレッチ

 

こんな感じでトレーニングのメニューを組むと、心臓や血管の健康は改善するし、寿命も延びやすくなるんじゃないかと思われるわけです。さらに、これよりも少ないトレーニングをするならば、以下のようなパターンもありかもしれません。

 

  • トレーニング例 1: 短時間ランニング

    • 頻度: 毎日
    • 時間: 5~10分
    • 強度: ゆっくりとしたペース(会話ができる程度のペース)

    • 実践方法
      • 毎朝、または夕方に5~10分の時間を確保し、軽いストレッチで体をほぐす。
      • 自宅周辺や近くの公園で、ゆっくりとしたペースで走ります。
      • 終了後、再び軽いストレッチを行い、クールダウンします。

 

  • トレーニング例 2: 短時間筋トレ

    • 頻度: 週2~3回
    • 時間: 1回あたり15~20分

    • 実践方法
      • ウォームアップ(5分)
      • 軽い有酸素運動(ジョギングやジャンピングジャックなど)
      • ダイナミックストレッチ(腕回しや脚振りなど)

    • 筋トレ種目(15分)
      • スクワット(脚・臀部): 3セット×10回
      • プッシュアップ(胸・腕・コア): 3セット×10回
      • プランク(コア): 3セット×30秒
      • デッドリフト(脚・背中): 3セット×10回
      • ダンベルロー(背中・腕): 3セット×10回(各腕)
      • クールダウン(5分)

 

どのパターンを使うかは個人の好みですが、いずれにせよ1日5分から10分という少量の運動でも、まったく何もしないよりは確実に体が若返りますんで、ぜひお試しください。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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