【質問】いまさらですが、温泉って体に良いんですか？
こんなご質問をいただきました。
温泉って健康になる効果はあるんですか？なんとなく好きで入ってましたけど、いまさら気になってきました。
ということで、温泉の健康効果はどれぐらい実証されているのかってお尋ねであります。確かに、温泉はなんとなく体に良さそうなイメージですが、それがどれだけ証明されているかと言われると謎ですもんね。
ただし、この疑問へのお答えは意外と難しくて、それというのも温泉の効能についてガッツリ調べた研究ってめっちゃ少ないんですよ。普通の風呂や水風呂の健康効果についてはそれなりのデータがあるものの、温泉となると話が変わってくるんですよね。
研究が進みづらい理由は簡単で、それぞれの“温泉”の特徴がバラバラだからです。ひとくちに“温泉”と言っても、
- 温泉によって温度がバラバラで、30度以下のぬるいものもあれば、50度を超す高温のものもある。
- 温泉にふくまれるミネラルの種類もバラバラで、塩化物、炭酸水素塩、硫酸塩、硫黄などが、それぞれ独自の比率でミックスされてたりする（もちろん、ほとんどミネラルが入っていない温泉もある）。
- 温泉の成分は時間とともに変わっちゃうことがよくある。
- 温泉の酸性度もバラバラなので、肌への影響も一概には言えない。
って感じで、「これぞ温泉である！」といった定義がしづらいんですよ。そのせいで、「温泉にはこんな効果があるよー」「温泉にこれぐらい入れば変化を実感できるよー」みたいなガイドラインを設定するのはほぼ不可能なんですよね。
さらに言えば、温泉ってのは、だいたい自然環境のなかにあるんで、「温泉で健康になたのって、温泉の作用じゃなくて、自然のリラックス効果が大きいんじゃないの？」と指摘されちゃったら、なかなか反論が難しいんですよね。ラボに温泉水だけ汲んできて、普通のバスタブに1週間ぐらい浸かり続けるような実験ができれば別ですが。
事実、群馬温泉医学研究所の久保田先生も、こんなことを言っておられます(R)。
温泉地に暮らす人たちが皆元気で、病気にも罹らず、長生きするという証拠もない。転地効果であって、煎じつめれば温泉はあってもなくてもよいとも考えられる。
温泉地に住む人たちはたまには都会に出て、映画を見たり、美味しい物を食べたりすれば、それもまたリフレッシュ効果になるだろう。ある意味では総合的生体調整作用である。
温泉そのものの作用はよくわからず、たんに旅行のリフレッシュ効果が働いてる可能性も大きいのでは？って指摘ですね。ここらへんもまた、温泉の効果だけを調べる難しさにつながってたりします。
まー、とはいえ、数少ないながらも「温泉の効果っぽいもの」を示したデータはありますんで、主だったものをいくつか見てみましょう。
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皮膚トラブルがやわらぐかも？：2019年の文献レビュー(R)では、ペルシャの温泉水が、皮膚炎や乾癬の症状を軽減する可能性を指摘しておられます。ただし、上述のとおり、温泉によって酸度が違いすぎるので、「温泉はお肌によい！」とは言えないのが難しいところ。
- 血管の機能が改善するかも？：2016年(R)の研究によると、温泉に浸かることで血管機能と血圧が改善される可能性があるとのこと。まぁ温かいお湯につかれば血流は上がるでしょうから、これは当然ですね。ただし、こちらも実際に長期間にわたって血管機能の改善が見込めるのかは謎。
- カロリーが消費されるかも？：2017年の小規模な研究(R)によると、特に運動ができない人にがお湯につかる、カロリー燃焼がよりスピードアップするかもしれないとのこと。これも十分にあり得る話だとは思いますけど、カロリー燃焼のレベルは低いんで、あまり期待しないのが吉であります。
ここらへんの知見は、そんなに変なことも言っておらず、「あり得るんじゃないかなー」ってとこです。逆に言えば、これ以外のメリットについては、現時点で信頼できるようなデータはないとお考えください。
いまのところ、温泉の効果として無さそうなものを挙げておくと、
- デトックス効果（体内から重金属を排出したりとか）
- 特定の病気や健康状態の予防
といったあたりは信じないほうがよさげ。温泉地には無数の効能が書いてあったりしますけど、期待せずにご利用ください（あれを全部うのみにしてる人もいないでしょうが）。
というと、なんだか温泉には意味がないような印象を持ったかもですが、温泉は数千年にわたって世界中で続いてきた文化だし、温水や自然のリラックス効果は誰でも実感できるはずだしで、レクリエーションの一環として行うなら大いにアリでしょう。温泉でストレスが改善されれば、長期的な健康にも良さそうですしね。
私の場合は、熱いお湯に浸かり続けるのが苦手なタイプなんで、そこまで温泉に入りたいとは思ってなかったりしますが。
