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「マインドフルネスの効果が感じられない!」問題を解決する5つのポイント


「マインドフルネスの効果が感じられない!」みたいなお悩みは、よく耳にするところです。このブログで何度も紹介してきたとおり、マインドフルネスはメンタルを改善する効果があるようで、私も日々心がけつつ暮らしているポイントなわけです。

 

が、一方では、「マインドフルネスに大きな効果はないのでは?」と報告したものも多く、まだ明確な結論が出ていない段階だったりもします。事実、「マインドフルネスのメリットがよくわからん……」と思っている人は少なくない印象ですね。

 

その理由としては、

 

  • まだマインドフルネスに関する質の高い研究がない
  • 世の中が先に「マインドフルネス凄い!」と言い過ぎたせいで、実際の効果との落差が大きく見えている
  • そもそもが難しい概念なので、ちゃんと実行できている人が少ない

 

みたいな原因が入り混じって、いまの状況になってるんじゃないかなーと思っております。もともとマインドフルネスって概念がむずいので、研究も実践もうまくいかないのが当たり前と言いますか。

 

で、そんな状況の中、新しい研究(R)は、「マインドフルネスの効果が感じられない理由」について、またちょっと違う視点を提案してくれていて非常によかったです。文献のタイトルは「すべてのマインドフルネスが等しいわけではない!」というもので、簡単に言うと、マインドフルネスにもいろんな側面があるから、個人に合ったやり方をしないとダメじゃないの?って視点を提案して暮れているんですな。

 

研究の対象になったのは、14歳から90歳までの男女が1,600人。みんなの協力を得つつ、マインドフルネスが持ついろんな側面と、各人のメンタルヘルスについて調べたんですね。その際にチームは、マインドフルネスのことを「今この瞬間を意識すること」と捉えるのではなく、5つの側面から構成された状態だと考えたんですよ。

 

  1. 意識した行動:現在に注意を払って行動できる状態。

  2. 確認:思考、感情、感覚などの経験に注意を向けられている状態。

  3. 描写:自分の体験に言葉でラベルをつけることができる状態。

  4. 非判断:自分の中にネガティブな感情や思考が出てきても、それを「これは悪いことだ」とか批判しない状態。

  5. 無反応:自分の中にネガティブな感情や思考、またはポジティブな思考や感情がわき上がっても、脊髄反射で反応するのではなく、なにもしないままでいられる状態。

 

マインドフルネスというと、「いまここにあること」みたいなフワッとした定義がなされるケースも多いんですが、実際には、これら5つの状態で構成されていると考えたわけです。この整理は、とてもわかりやすくて良いですね。

 

この分類をもとに分析をしてみたところ、結果はこんな感じになりました。

 

  • 高齢者になるほど「意識した行動」をするのが上手く、「非判断」の傾向も高かった。 それと同時に「意識した行動」と「非判断」の量が多い高齢者ほどメンタルヘルスの調子が良かった。

 

  • 一方、若者の場合は、周囲で起きていることを「確認」する能力は高かったが、それ以外の4つの状態はあまり得意でなかった。このように「確認」だけがうまいマインドフルネスは、メンタルヘルスの悪化につながっていた。

 

ってことで、どうやら高齢者と若年者では、得意とするマインドフルネスの能力が違うみたいっすね。簡単に言えば、

 

  • 高齢者はマインドフルに今この瞬間を味わうのが得意。これは、ひょっとすると「人生の残り時間が少ない!」という思いが強いため、自然と現在の体験を味わう能力がブーストしたのかもしれない。

 

  • 若年層は、自分がどんなことを感がているか、自分がどんな感情を抱いているのかを把握するのが得意。これは、若いときほど社会から認められたい気持ちが強いので、常に自分のことを考え、自分の外見や行動を把握しようとがんばるせいかもしれない。

 

みたいな話じゃないでしょうか。若い人の場合は、自分の思考や感情に目を向けるのはうまいものの、それに対する「こんなことを感じるやつはダメだ!」みたいな反応を処理するのが苦手なので、そのせいでメンタルが悪化しやすいのかもしれないですね。

 

でもって、この研究をふまえて考えると、「マインドフルネスの効果を得たいなら、5つの側面を考慮してトレーニングしようぜ!」といったことが言えそうではあります。いっぱい瞑想をしていても、たんに「確認」のスキルばかりが身について、その他4つの能力が成長していなかったら、本来のメリットは得られなさそうですからねぇ。

 

そのため、マインドフルネスを鍛えるときは、まずは上の5つの中から「自分は何が苦手なんだろう?」と考えてみてください。その上で、自分に足りない要素ごとに、以下のようにトレーニングのバリエーションをつけてみると良いんじゃないでしょうか。どうぞよしなに。

 

  1. 意識した行動が足りない歩行瞑想マインドフルイーティングのように、日常のなかで自分の行動を意識するようなトレーニングを増やす。

  2. 確認が足りない:毎日の瞑想で、呼吸や体の感覚、周囲の音に注意を向ける練習を行う。感覚日記をつけて、気づいたことを記録する。

  3. 描写が足りない:ジャーナリングを日課にし、自分の体験や感情にラベルを付ける練習を行う。例えば、「今日感じた喜び」「今感じている不安」など具体的に記述する。

  4. 非判断が足りない:自分の思考や感情に対して批判や評価をせず、ただ観察する練習を行う。瞑想中に出てくる思考や感情を批判せずに受け入れることを心掛ける。

  5. 無反応が足りない:感情や思考に対してすぐに反応するのではなく、一呼吸置いてから反応する練習を行う。例えば、強い感情が湧いたときに、5秒間深呼吸をしてから反応する。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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