ぐっすり眠るためにはどんな運動がベストなのか?を調べたメタ分析のお話
よく眠るためには運動が必須!ってのはよく聞く話。運動をすれば日中の眠気が減るし、疲労物質がたまるせいで夜間の睡眠の質も上がるしで、かなり良いことだらけなんですよね。運動で睡眠の質を上げる方法については、「エクササイズの快眠効果を最大化するための、科学的な運動タイミングガイドライン」に書いてますんで、そちらをご参照ください。
こうなると、今度は「ぐっすり眠るためにはどんな運動がベストなのか?」ってポイントが気になりますが、新しい研究(R)はそこらへんを深掘りしてくれてておもしろかったです。
これは、運動と睡眠の関係について調べた過去の研究から、そこそこ質が高い27件の論文をピックアップ。すべてをメタ分析しまして、「どの運動が最も睡眠の質を改善したか?」を特定してくれております。データに組み込まれた参加者の数は2,142人(18~65歳)で、もともと睡眠不足に悩んでいた人だけを選んだらしい。
調査の対象になった運動は、主にヨガ、有酸素運動、気功など(それぞれ5~6ずつぐらいの研究がある)。 その他の介入には、ピラティス、教育(不眠症に対する認知行動療法など)、身体活動と組み合わせた教育などがあったそうな。
でもって、すべてをひっくるめて分析したら、結果はこんな感じになりました。
- 最も睡眠を改善する効果が大きかったのは“ピラティス”だった。ピラティスは、ヨガ、有酸素運動、教育などと比べて睡眠を改善する効果が高かった。
- 気功とヨガも、運動をまったくしない場合と比べ睡眠の質を大きく改善させ、有酸素運動は睡眠の質を中程度の効果で改善した。
ってことで、見事1位に輝いたのは“ピラティス”でした。おめでとうございます。
まぁピラティスについては全体のデータ数が少ないので、果たしてこの1位にどこまで正当性があるかは判断が難しいところではあります。一方で、ヨガはデータ数も多いうえに効果量も大きく出てますんで、「睡眠を改善するために運動をしてみようか……」とか思ったときは、まずはヨガから手をつけてみるのも良いのではないでしょうか。
ちなみに、睡眠に対するヨガの有効性を調べた研究は昔から多くて、だいたい以下のメカニズムで眠りの質が上がるものと考えられてます。
- マインドフルネス: ヨガは、現在の瞬間に注意を集中させるマインドフルネスを促進する。そのおかげで、ストレスホルモンのレベルが低下し、メラトニン(睡眠ホルモン)の分泌が増加する(R)。
- 呼吸の意識と調整: 深い呼吸はリラクゼーションを促進し、睡眠を誘発する効果がある。ヨガの多くのポーズや練習は、呼吸の意識を高めることを重視しており、それによって睡眠の質が上がる(R)。
- 運動のリラクゼーション効果: そもそも定期的な運動にはリラクゼーション効果がある。ヨガは軽度から中程度の運動として機能し、特に就寝前のリラックスした時間に適していると考えられる(R)。
といったところで、全体的に見れば、ヨガによって気持ちが落ち着くおかげで夜間の不安やイライラが減り、睡眠の質が上がるのだと言えましょう。人間のネガティブな感情って夜間にブーストしやすいんで、ヨガみたいな介入は効きやすいんでしょうな。
また、ヨガといってもいろんな流派がありますが、いまのところ「どのヨガが睡眠が改善しやすいの?」ってあたりはよくわかってません。
ただし、多くの文献を見ていると、「ハタヨガ」みたいに姿勢に焦点を当てたスタイルが採用されているケースが多く、ゆったりとした動きと深い呼吸を組み合わせたヨガが良さそうだとは言えるでしょうね(当たり前ですが)。
また、具体的なポーズとしては、
- バタフライポーズ(Supta Baddha Konasana): 足の裏を合わせて膝を外側に倒し、背中を床に付けてリラックスするポーズです。このポーズは腰や股関節を開放し、リラックス効果を高めます(R)。
あたりのリラックス系の体勢が、研究でよく見かける印象です。まぁパワーヨガ系のやり方だと逆に神経が覚醒しちゃうでしょうから、これは当然ですね。その他、ネットを探せば「ヨガニドラ」のガイド音声なんかも大量に見つかりますし、とりあえずここから手をつけてみるのも良いでしょう。
ちなみに、上記の研究では、睡眠の質の変化を判断するために「ピッツバーグ睡眠質問票」を使ってます。睡眠改善のために運動を取り入れるときは、この質問票を使って、主観的な変化をチェックしてみると良いでしょう。どうぞよしなに。