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「許し」の感情はどこまで健康レベルを改善してくれるのか?のメタ分析が出てたぞー

 

メンタルヘルスの改善には『許し』が大事!」なんてことをよく申します。これはいろんなデータで認められている話で、セラピーで「許し」の感情を育んだ人は、うつ病や不安障害の症状が有意に減少したりするんですな(R)。

 

 

ここでいう「許し」ってのは、嫌いな人や憎い人のことをどうにかして受け入れることを指しております。もちろん犯罪の被害に遭われたような人が相手を許すのは難しい作業ですし、なんでもかんでも寛容の精神を持てってわけでもないんですが、つねに怒りと憎しみにあふれた状態でいるのが良くないのも間違いないとこでしょう。

 

 

ただし、これまで「どこまで『許し』の効果が高いのか?」ってのはよくわかってなかったんですが、近ごろ良い感じのメタ分析(R)が出まして、そこらへんの問題をくわしくチェックしてくれておりました。

 

 

これはウィスコンシン大学の研究で、「許しのレベルが高い人は、健康レベルも高いのか?」って疑問をチェックしたものです。先行研究から28件を選び出し、58,531人分のデータをまとめてくれたんですな。データの大半は観察研究がメインなんで「本当に他人を許せば健康が改善するのか?」って因果関係はよくわからんのですが、それなりに信頼性が高くていいのではないでしょうか。

 

ここでは136もの健康指標を扱ってまして、代表的なところを紹介すると、

 

  • コレステロール値
  • 線維筋痛症の症状
  • 高血圧
  • HIVの症状
  • 皮膚病の症状
  • 慢性痛
  • 睡眠の質

 

などが挙げられております。こうして見ると、「許し」の研究ってのも結構な量があるもんなんですねぇ。

 

 

さて、そこでどのような結果が出たのかと言いますと、

 

  • 許しと健康の相関係数は「r = .14」だった!(検定力は1.00)

 

だったそうです。とりあえず、それなりの関係性は確認されたわけっすね。

 

 

あれ?数字がショボくない?」と思われた方も多いでしょうが、この研究はいくつかの問題を抱えてまして、

 

  • なにせ取り扱っている変数がめちゃくちゃ多い
  • 「許し」のテスト法もデータによってバラバラである

 

といった難点があるなかで、統計的に有意差が出ただけでもすばらしいのではないでしょうか(検定力も強いし)。

 

 

もっとも上述のとおり、この結果を見ただけだと「許しによって健康になるのか?」ってとこはわからないわけですが、いまんとこ2つだけ実験室で行ったデータが存在しております。

 

  • 心疾患集中治療室に通う24人の男性に「許し」の重要性を教えたところ、有意に血流が改善した(Waltman et al., 2009) 
  • 線維筋痛症に悩む女性に「許し」の方法を伝えたところ、症状が有意に改善した(Lee & Enright, 2014)

 

ってことで、なかなかよさげな雰囲気を醸してますねー。

 

 

くり返しになりますけど、この研究は「なんでもかんでも相手を許せ!」と言ってるわけじゃないです。ヒドい犯罪に巻き込まれた人に許しを強要するのはなかなか辛いもんがありますしね。

 

 

が、とりあえず「『許し』の感覚は健康レベルを確実に向上してくれそうだ」って知識は頭の隅に入れておくといい感じ。ネガティブな感情にとらわれて前に進めないような人には重要な知識ではないかと思う次第です。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。