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砂糖と脂肪は麻薬よりヤバい依存性がある?というか食物依存って本当にあるの?

 

 

こんなご質問をいただきました。

 

気づくとチーズを異常に食べてしまいます。6Pチーズを1日に2-3ケースぐらいいくこともあります。これは食物の依存症なのですか?食事に依存が起きることはないという話を聞いたこともありますがいかがでしょうか?

 

とのことで、チーズをドカドカ食べまくるのは食物依存症なのか?そして、そもそも食物依存は存在するのか?というお話ですね。確かに食物依存ってのは最近良く聞く言葉で、「ピザは麻薬より危険!」とか「砂糖には依存性が!」といった煽り文句も耳にしたことがありますね。

 

 

で、この問題についてまずポイントから申し上げますと。

 

  1. 食物依存が実在するかはまだよくわからない

  2. ただ、特定の食物に依存が起きるとする研究者もいるはいる

 

ぐらいの感じです。なんかスパッとした結論にならないんですけど、現状では「食物依存が本当にあるのかどうか?」ってとこで議論が止まってる段階なもんで。なので、まだ依存症の標準的な定義もないレベルなんですよねぇ。

 

 

ただ、一部には「食物依存症の判断基準を作ろう!」みたいな動きもありまして(R)、薬物依存症の診断基準を食事に使った質問紙が作られてたりはします。これは25問のアンケートで、だいたい以下のような7つの特徴が出ていれば食物依存と判断する形になってます。

 

  1. 特定の食品を長期間にわたって大量に食べ続ける
  2. 特定の食品を食べることにとり、余暇や社交、労働の時間が減ってしまう
  3. 食品を食べたい欲望がずっと続き、その欲望を抑えようとするがうまくいかない
  4. 身体に悪影響が出ているのに、それでも食べてしまう
  5. 特定の食品を食べること入手に大量の時間を費やしてしまう
  6. 特定の食品に耐性が出てしまう(食べる量がどんどん増えていく)
  7. 離脱症状がある(食べないとぼーっとするとか)

 

こうして見ると、判断基準としてはかなり厳し目で、ご質問者さんのレベルだと食物依存には当てはまらないような感じもしますね。

 

 

で、このテストの基準では、食物中毒の割合はだいたい以下のような感じだとされてます(R)。

 

  • 一般集団の5~10%の人々

  • 肥満のある人の15~25

  • 重度の肥満またはむちゃ食い障害のある人の30~50%程度

 

あくまで専門家のコンセンサスはない状態ですけど、これが事実ならば食物依存は意外と一般的な現象なのかも?とは思えますね。事実、食物依存と判断された人は、薬物依存の人と似た脳活動パターンを示すって報告もあったりしますし。

 

 

では、具体的に食物依存(と思われるもの)がなぜ起きるのかと言いますと、

 

  • 現代の加工食品は脂肪と糖といった脳への刺激が強い栄養素が濃縮されており、人によっては依存症のような食行動につながる可能性がある。実際、精製糖と脂肪が多い加工食品が中毒みたいな行動を起こしやすいことは研究で示されている(R)

 

  • 薬物依存のリスクには遺伝が強く関わるので、食物依存にも同じことが言えるかもしれない。ただし、食物依存の遺伝的な基盤を示した証拠は非常に少ない

 

  • 一般に、食べ物はドーパミン(脳内のやる気物質)の放出を引き起こすが、これは薬物依存と同じシステムではある。調査によると、チョコレート、アイスクリーム、ピザのような食品は、ドーパミンを刺激やすいことが示されている(R)。 対照的に、低カロリーな食品や脂肪と糖が組み合わさっていない食品は、依存のような症状を引き起こしにくい。

     

みたいに考えられてたりします。このあたりは「最高の体調」でも指摘したようなポイントですね。

 

 

もっとも、くり返しになりますけど、本当に食物依存って存在するの?って問題についてはまだ決着がついておらず、危険因子に関する情報はまだ限られているとお考えください。たとえば、別の専門家は「食物は身体に必要な自然物質だから、乱用薬物の考え方は使えないず!」って指摘してまして、私も「それはそうかもですねー」とか思いますし(R)。

 

 

ってことで、長々と書いてきましたけど、いったん話をまとめると、

 

  • 食物依存は医学的ま概念として広く受け入れられているわけではないし、明確な判断基準もない(というか明確な定義がない)
  • ただし、食物への依存を思わせるような症状は確認されているので油断はできない

 

みたいな話になります。個人的な感想としては、「砂糖は麻薬よりヤバい依存性が!みたいな話は信用できないし、食物が薬物レベルの状態を引き起こすケースは少なそうだけど、ある程度の習慣性を作り出す働きがありそうだよなー」ぐらいに思ってますね。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。