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体に起きる謎の痛みは世界で激増してるけど、希望のある解決策も存在してるよねーという話

 


いま、世界中で慢性痛がヤバい!って研究(R)が出ておりました。かつては、日常で起きる不調といえば高血圧や糖尿病が定番でしたが、近ごろはすごい勢いで謎の痛みに苦しむ人が増えているというんですな。

 

この研究は、アメリカで暮らす1万人以上に「過去3カ月になんらかの謎の痛みがありました?」と尋ねたもので、その結果がどうだったかと言うと、

 

  • 2019年と2020年の回答を比べたら、1,000人年あたり約52件の慢性疼痛が新たに確認された。これは、高血圧、うつ病、糖尿病の新規症例の割合よりもはるかに高いものだった。

 

  • 2019年に痛みがなかった人のうち、6.3%が2020年に新しく謎の痛みに悩むようになった。

 

  • 50歳以上の人は若年層よりも慢性疼痛のリスクが高い。

 

ということで、あくまでアメリカの調査ですが、よくわからない痛みに苦しむ人の数が増えまくってるらしい。慢性痛の問題は日本でも増えているというから、先進国では珍しくない話なのかもですな。

 

 

研究チームいわく、

 

慢性疼痛はそれ自体が深刻な病気と言えるかもしれない。

 

また、人は体の複数の部位にわたって慢性的な痛みを経験することが多いが、腰痛が最も多く、頭痛や首の痛みがそれに続く。

 

とのこと。私もかつては夜に眠れないレベルの腰痛に悩んだことがあるので、これは非常に納得しちゃうところです。

 

 

では、この問題についてどうすればいいかってことですが、現段階では難しいところがありまして、

 

  • 現在、慢性的な痛みを治療するためには、イブプロフェンやアセトアミノフェンなどの軽い鎮痛剤の処方からスタートし、それからオピオイドなどの強い薬に移行するケースが多い。しかし、オピオイドが常に有用なわけじゃないし、強い中毒性もあるため、対処法としては難点も山積み。

 

  • 慢性的な痛みの治療に使われる他の方法としては、理学療法、心理療法、神経ブロック(痛みのある部位に麻酔薬や抗炎症薬を注射する)などがある。ただし、いまのところ、痛みに対する万能なアプローチはなく、まだまだ研究が足りない段階だと言える。

 

といった指摘がされておりました。私が腰痛を改善したときもそうでしたけど、体の痛みってのは心と体の変化が複雑にからみあってるので、「これをやればOK!」みたいな方法って見つけづらいんですよね。

 

 

もっとも、だからと言って、辛い痛みに対処する希望がなくなったわけではなく、近ごろは、以下のようなことも言われております。

 

  • 最近は、中毒性がない鎮痛剤を開発する方法の研究が進められている。このなかでは、痛みの感覚にかかわる神経細胞の特定が有望で、その細胞を遮断したり、活動を低下させたりできれば、いろんな人の痛みが改善する可能性はある。

 

  • 神経細胞を鎮める方法はいろいろあるが、近ごろは電極や磁石を使って神経細胞を刺激する方法は、だいぶ見込みがある。このような手法は「末梢神経刺激」と呼ばれ、脳や脊髄の外にある神経に沿って埋め込んだ電極から神経にパルスを送り、脳をだまして痛みの信号を消したり弱めたりすることができるようになってきた。

 

  • また、もうひとつの方法としては、「経頭蓋磁気刺激法」も効く可能性がある。これは、電磁コイルを使って脳にパルスを送り、痛みの信号を隠すというものである。

 

  • その他、「脳をだまして痛みの信号を下げる」という観点からは、認知行動療法にもメリットがあると考えられる。認知行動療法は、自分が痛みに対して持っている思考や態度を変えることに焦点を当て、脳の反応パターンを変えるというやり方である。

    認知行動療法によって、前向きな姿勢を育て、治療がうまくいくと自分を信じさせることができれば、痛みのコントロールが成功する可能性も高くなる。

 

  • もっとも、850人の参加者を対象とした試験では、認知行動療法により痛みの強さは減ったものの、オピオイド薬の使用量は減らなかったとの報告もあり、認知行動療法の使い方には、もうちょい研究が必要かもしれない。

 

ってことでして、全体的には、脳をだまして痛みの神経細胞をコントロールする方法が有望視されている印象でしょうか。「末梢神経刺激」とか、めっちゃ興味あるなぁ(そう簡単に体験できませんが)。

 

 

そういえば、私もかつて「経頭蓋磁気刺激法」を試したことがありまして、終わった後は頭がホンワカする不思議な体験を味わったことがありました。あれを定期的に続けたら、また何か別の感覚が得られたのかなーとか思ったりしますね。

 

 

また、ここで述べられている「認知行動療法による痛みの管理」については、以下の本などが参考になるでしょう。

 

 

私の場合は、独学で腰痛の認知行動療法を行いましたが、もしいま謎の激しい頭痛や腰痛に悩んでいる方がいれば、認知行動療法の専門家を頼ってみるのもいいんじゃないでしょうか。理想としては、上に挙げたような複数の治療法にくわしい専門家を探すことができたらいいですよねー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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