説得力のプロ「相手を動かしたいなら、こんな言葉づかいをすべきでしょ!」
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「マジックワード」というジョーナ・バーガー先生の新刊を読んでおりました。著者はペンシルベニア大学ウォートンスクールの教授で、口コミとか社会的影響力の専門家でして、このブログでもよく名前が出てますね。
で、今回の本は、「自分の意図を具体的に説明し、意思を明確に伝え、目標を達成するには、どんなコミュニケーションスタイルを身につけるべきか?」ってあたりがテーマ。先生のマーケティング知識を、コミュニケーションに応用した内容になってます。
ということで、この本のなかから、個人的に勉強になったポイントを見てみましょうー。
- Eメールやプレゼン、ミーティングなど、私たちの行動にはほとんどすべて言葉が関わっている。言葉は、私たちを説得し、伝え、結びつける手段であり、私たちの個人的な思考をうながすツールでもある。
- しかし、多くの人は、自分が使っている言葉についてほぼ考えない。しかし、私たちが使う言葉の微妙な違いは、相手に与える影響力を大きく左右する。例えば、他人を説得するときに、「私はこの製品が好きです」ではなく、「私はこの製品を推薦します」と言うだけで、他人が製品を買ってくれる可能性が約3分の1になることが研究でわかっている。
- 他にも、ある人が会社で使っている言葉を分析するだけで、その人が昇進するか解雇されるかを予測できるという研究もある。また、同じ用に、融資の申し込みの際に使う言葉を分析すれば、私たちが融資を受けられるかどうかを予測することもできる。これぐらい、言葉の微妙な使い方の違いは、結果を大きく左右する。
- 言葉の影響を高めるには、相手の「アイデンティティ」に訴える言葉づかいが有効である。
例えば、スタンフォード大学の研究では、小学生の子どもたちに掃除の手伝いを頼む際に、半数の子どもには「掃除を手伝ってくれない?(Can you help clean up?)」とお願いし、残りの半数には「掃除のヘルパーにらない?」とお願いした。「help」と「helper」の違いはわずか2文字だけだが、helpではなくhelperを使うことで、実際に掃除を手伝ってくれる子どもの量が約30%増加した。これは、子どもの中に「ヘルパー」という新しいアイデンティティが生まれたおかげだと考えられる。
つまり、本人が望ましいと思うようなアイデンティティを保持する機会を与えてやると、相手はその行動を取りやすくなると言える。
- この現象は大人でも発生し、ある研究では、参加者に「選挙で投票してください」または「投票者になりましょう」と伝えたところ、後者のほうが投票率が約15%高くなった。こちらも、参加者の「私は市民としての義務を果たす人間だ」というアイデンティティに訴えかけたのが成功の理由だと思われる。
- さらに、同じような現象は、ネガティブな心理でも成り立つ。例えば、多くの人は「負けるな」と言われるよりも「負け組になるな」と言われたほうが焦りやすくなる。
研究では、「他人をだますな」と言うよりも、「詐欺師になるな」と言ったほうが、実際にズルをする可能性が低くなると報告されている。これは、「詐欺師」と言われたほうがアイデンティティに訴えかけるため、よりネガティブな気持ちになるのが原因だと考えられる。
- この他にも、「あなたは働き者ですね」と言うよりも、「あなたは努力家ですね」と言ったほうが相手のアイデンティティに訴えかけるし、「あなたはクリエイティブだ」と言われるよりも、「あなたはクリエイターだ」と言われた方が、実際に創造的な行動を取る確率は高くなる。
- 「言葉の影響」という点では、「質問」も重要なポイントである。自分がなにかに困ったら、詳しい仲間や同僚に聞けばいいのは当然だが、多くの人は「めんどうがられるかもしれない」「相手が忙しいかもしれない」「質問したら、私に能力がないと思われてしまう」などと考えて、実行に移すことができない。
しかし、ハーバード大学などの研究によると、他人に助言を求める人は、助言を求めない人よりも、より賢く、より有能に見られることがわかった。というのも、ほとんどの人たちは、自分のことを「私は誰よりも良い意見を持っている」と思い込んでいるため、アドバイスを求めてきた相手に対して「数ある人の中から私に尋ねてきたということは、この人は頭が良いに違いない!」と思うからである。
そのため、トラブルに出くわしたときは、他人にアドバイスを求めたほうが、必要な情報が得られるだけでなく、自分をより良く見せることができる。
- 「言葉の影響」という点では、「自信」も重要なポイントである。カリスマ性を感じさせる人は、必ず自分の態度に「自信」を持っており、その確信によって言葉に説得力を与えている。
ファイナンシャル・アドバイザーに関する研究でも、多くの人は自信に満ちたアドバイザーを選ぶ傾向がありますが、本当にそのアドバイザーが正しい確率は半々ぐらいだとの結果が出ている。
- しかし、だからと言って、不安さを隠して自信満々のように振る舞うのも、最終的には良くない結果につながってしまう可能性大きい。そのため、「このプロジェクトがうまくいくかどうかわからない」と言うのではなく、「これは素晴らしいプロジェクトだが、うまくいくためには3つの戦略が必要だ」のような言い方をしたほうがいい。
この方法であれば、プロジェクトに不確実性がある事実を示しつつも、こちらの確信を相手に伝えることができる。