今週末の小ネタ:脳の電磁気刺激、音楽の好みと性格、他人に優しくされやすい服
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
電磁気で脳を直に刺激するとメンタルにめちゃくちゃ効果があるかも
「たった3日で鬱病が激しく改善!」みたいなデータ(R)が出ておりました。
これはスタンフォード大学が行った小規模なテストで、SAINTって技法が鬱に効くのかをチェックしたものです。SAINTはスタンフォードが開発した磁気系の治療法で、以前に「脳に電気を流すと筋トレのパフォーマンスが上がる?」で紹介したtDCSのお仲間です。電磁石の力で脳を直に刺激してメンタルを改善するすごい技術であります。
というと怪しげな雰囲気も漂いますけど、すでに一定の知見がありまして、うつ病の治療法としてFDA(米国食品医薬品局)に承認されてたりします。日本でも2019年から保険適用になりまして、かなり熱い分野なんですよ。
で、今回のがどんな実験だったかと言いますと、
- 重度のうつ病を患っている21人を集める(他の標準的な治療が効かなかった人ばかり)
- みんなに1日に10分間の磁気刺激を10回やってもらう
みたいな感じです。実験で使われた手法は標準的な方法ではなく、1秒間に送信される磁気パルスを3倍にした強化バージョンだったとのこと。
すると、その結果は劇的なものでして、
- 平均3日で90%の患者さんに治療の効果が見られ、一部には1日で回復した患者もいた
- 治療から1カ月たっても、60%の人はうつ病の寛解状態にあった
うーん、これはかなり良い成果っすね。研究チームいわく、
標準治療が効きにくいうつ病に対して、オープンラベル試験で55%の寛解率を達成した手法はない。この分野では電気痙攣療法がゴールドスタンダードと考えられているが、それでも寛解率は平均48%にすぎない。正直ここまでの結果は想像していなかった。
もちろんこれは標準的なプロトコルとは違うので、いま日本の保険適用で行われているやり方で同じ効果が出るかは謎であります(多分出ないでしょう)。が、いずれにせよ脳の電磁気刺激がかなり面白い技術なのは確実なんで、今後も注視していきたいっすね。
音楽の好みで性格がわかる
これはペンシルバニア大学の研究(R)で、22,252人にマイナーな音楽の動画を15秒だけ見てもらい、その結果を各自のビッグファイブとくらべたんだそうな。その結果がどうだったかと言いますと、
- もっとも性格がわかりやすいのは、「複雑な音楽を好む」か「シンプルな音楽を好む」かの違いである
- 複雑な音楽を好む人ほど「開放性」が高く、創造性や知的な好奇心が旺盛な確率が高い
- シンプルな音楽を好む人ほど「外向性」が高く、他人とつきあうのがうまい
って感じ。ここでいう複雑な音楽ってのは、オペラ、ジャズ、クラシック、ワールドミュージックとかそのへん。シンプルな音楽はフォーク、カントリー、ロックとかそのへん。
研究者いわく、
知的な刺激を求める人は、伝統にとらわれない複雑な音楽形態にひかれやすい。逆に社交的な人は、エネルギーがあって生き生きとした音楽を好みやすい。
だそうな。こりゃわかりやすいですな。
他人に優しくされやすい服がある
こちらはトレント大学の実験(R)で、「着てる服によって周囲の対応はどう変わるか?」を調べたものです。具体的には41人の男女に2種類の動画を見てもらっております。
- 露出が多いドレス、ハイヒール、バッチリメイクの女性が会話してるとこ
- ゆったりしたジャージ、ペタンコシューズ、軽いメイクの女性が会話してるとこ
そのうえで参加者の意見を聞きつつ脳波を計測したところ、
- みんなリラックスした服装のほうに「共感をおぼえる」「優しくしたくなった」と回答
- 実際、リラックスした人を見たときのほうが、脳の共感エリアが活性化していた
って結果だったそうな。ってことで、誰かに優しくしてもらいたいときは、ゆるーい服装を心がけたほうがよさげ。