今週の小ネタ:正しい言い訳の方法、頭が良くなる睡眠法、VRで恐怖症が改善
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
言い訳をするときは「時間がない」よりも「お金がない」と言おうぜ!
ほとんどの人が、自分で立てた目標を達成できないのは 有名な話。だいたい3分の2の人が新年の抱負を1ヶ月以内にあきらめ、約50%の人が昨年と同じ抱負を立てているといったデータもあるぐらいなので、 目標を守るのがいかに難しいかがしのばれると言うものです。
で、 新しいデータ(R)は、「 目標を達成できなかった時は、お金が足りなかったことを言い訳にしたほうがいいよ」と 示唆する内容になっておりました(あくまで私の解釈ですが)。この研究を手がけたジャニナ・シュタインメッツ博士いわく、
多くの目標には、時間かお金のどちらかが関わっているため、どちらか一方が欠けても、他人からの評価に悪影響を及ぼすことなく、それを破る良い口実になる。
とのこと。 何らかの目標を達成するときは、お金か時間のどちらかが必ず必要になるので、これを言い訳に使えば周囲から「 あの人は自制心がない」とか「 あの人はだらしがない」 と思われにくくなるのではないか、 みたいな話です。
そこで博士は、約1200人を対象に6つの実験を 行ってまして、 ざっくり以下のような結論を出しています。
- お金がないことを訴えるほうが、時間がないことを訴えるよりも、 周囲の印象が良い!
目標を達成できなかった 言い訳をするときは、「 時間がなかったんだ!」と 主張するよりも、「 お金がなかったんだ!」と 主張したほうが 自分のイメージが下がりづらいわけですね。
この結果について、博士はこんなことを言っておられます。
「時間がない」というのは よく聞く言い訳だが、この調査は、 どのようなタイプの言い訳をする時でも「時間がない」という言い訳は避けたほうがよいことを示している。
今回の研究によれば、私たちは、「誰でも十分にやる気を出せば、運動したり健康的な食事を作ったりする時間を見つけることができる」と考える傾向がある。 その一方で、 私たちは自分の時間をコントロールすることはできるが、お金をどこからともなく呼び出すことはできないとも考えてしまう。
そのため、「お金がなかった」と 言った方が、「それは自分ではコントロールしにくいから仕方ない」といった認識を生み、新年の決意を断念したり、約束を破ったりしても、「あの人は 目標の達成に失敗したが、それでも自制心がある」と 思われやすくなる。
それにもかかわらず、 多くの人が「時間がない」と言い訳しがちなのは、時間がないことと地位が高いことを同一視しているからだろう。
実際には、どんなに頑張っても時間を捻出できない 事はよくあると思いますが、ほとんどの人はお金がないのを 甘く見る傾向があるわけですね。 似たような報告は以前にもあって、 他人からの頼みを断りたい時も「時間がないんでできません」と言うよりは、「お金がないんでできません」と言ったほうが、相手に許して もらいやすくなるんだそうな。 これも、同じバイアスが働くからなんでしょうな。
さらに、博士いわく、
就職の面接や マッチングアプリのアンケートでは、人生における失敗談を求められることが多い。もちろん、 失敗は誰にでもあることだが、就職活動でも恋愛でも、その理由を説明するときに、 自分ではコントロールできない原因のせいにしたほうが、ポジティブなイメージを維持するのに役立つだろう。 このような場面では、時間不足のせいにするのは避けた方が賢明かもしれない。
というわけで、 自分が失敗した時は、とりあえず資金不足のせいにしておくほうがよさげ。 失敗の言い訳をしたい時や、誰かの頼みを断りたい時などにお使いください。
毎日同じ時間に寝起きすると 頭が良くなるかもしれないぞ
脳の健康を維持するためには、正しい睡眠が欠かせないのは常識。 新しいデータでも、30代から40代にかけて睡眠が乱れた生活を送る人は、その後の人生で 脳の機能が下がりまくるのではないか?って 結論になっておりました(R)。
研究の筆頭著者であるユエ・レン博士いわく、
アルツハイマー病の徴候は、症状が始まる数十年前から脳に蓄積され始める。そう考えると、人生の早い段階での睡眠と認知の関連を理解しておくのは極めて重要である。
ってことで、 脳機能の低下は、実は人生のかなり早い段階から発生するので、ここに睡眠が及ぼす影響を理解しておくのは非常に大事なんだよと言う指摘です。
そこで博士は、526人を11年間追跡し、みんなの睡眠の質をチェック。これに加えて睡眠調査と記憶テストを行ったところ、
- 睡眠が乱れている人は、最も乱れていないグループと比較して、認知能力が低くなる可能性が2倍高い!
との結論だったそうな。ただし、中等度の睡眠障害がある人たちは、中年期の認知能力に有意な差が出なかったそうで、こちらはやや意外っすね。
さらに、もう一つの研究では、 以下のポイントをチェックしています。
睡眠に関するアドバイスでは、推奨される睡眠時間(1日7〜9時間)を確保することに重点を置くが、規則正しい睡眠スケジュールを維持することはあまり重視されていない。
要するに、ちゃんとした睡眠時間を確保するだけでなく、「常に同じ時間に寝たり起きたりできているか?」ってとこも、 脳の働きを維持する大事な 要素なのではないか ということですね。
そこで、今度は平均年齢62歳の88,094人を調査しまして、7年間にわたって全員の睡眠パターンを追跡。睡眠の規則性を測定したあとで、 みんなの認知症レベルと比較しております。 その結果はどうだったかと言うと、
- 睡眠パターンが最も不規則な人は、認知症リスクも最も高かった。
- 睡眠が不規則な人は、中間のグループに比べて認知症リスクが53%高かった。
- 最も規則正しい睡眠パターンの人は、中間のグループよりも認知症リスクが低かった。
という感じだったそうです。単にいっぱい寝るだけではなく、毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きることを意識するだけでも、認知症リスクが大きく低下する かもしれないわけですね。
このデータを見ると、毎日確実に同じ時間に寝るのではなく、だいたい同じ時間に寝起きしてるなぁぐらいのレベルでも 認知症は改善するみたいなんで、 例えば、週末と平日の睡眠パターンが違うような方は、ここを直すだけでも大きなメリットが得られそうですね。
VRで恐怖症が改善するかもよ
わたくし、VRの 発展にはめちゃくちゃ期待してまして、単にゲームや仕事に使えるだけではなく、メンタルの改善にも 非常に役立つはずだと考えているんですよ。
で、 新しいデータ(R)も、 VRがメンタルの改善に役立つことを示した内容で、「 VRで恐怖症が改善するぞ!」との 内容になってました。 どんな研究だったかと言うと、
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嵐、クモ、犬への 恐怖症を持つ12歳前後の女の子2人と男の子1人の計3人を集める。
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子どもたちにHTC Viveヘッドセットを渡して、嵐、クモ、犬に遭遇する様子を疑似体験させる。 この時、子供が怖がりすぎないように、適切なレベルのVR動画を表示させる(最初は、遠くにいる子犬を眺めるところから、始めたりとか)
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VR治療により、子どもたちの不安症状が どれぐらい減ったかをチェックしたところ、 不安のレベルが下がり、 血圧の上昇やストレス反応のレベルなども低下した。
という感じです。治療のトータル時間は平均50分で、だいたい13〜19パターンの VR動画を見せたとのこと。 これで恐怖症が改善するならめっちゃ楽ですね。
研究チームいわく、
このテストは、VRによる 恐怖症の治療が実行可能であり、不安を抱える青少年への治療効果を示す予備的な裏づけとなる。規模は小さいが、VRによる治療効果は、小児期の不安に対する他のOST(1セッション治療)で観察された所見と類似している。
とのこと。 もちろん、 めっちゃ小規模な研究なので結論には限界があるんだけど、 過去には「 VRを使った英会話レッスンの方が、コミュニケーションの不安が減って効果が高くなる」 みたいな報告もありましたんで、 個人的にはかなり期待しております。コミュ力改善用のVRアプリとか 早く出ないかなぁ……。