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詐欺やインチキにハマりやすい人の特徴トップ8

 


深そうなデタラメ」(pseudo-profound bullshit)って概念があるんですよ。これは、ぱっと見は深そうなことを行ってるんだけど、実際には何も言ってない無意味な言葉のことです。たとえば、

 

  • 「光の存在として、私たちは局所的であり非局所的であり、時間に縛られた存在であり時間を超越した実在であり可能性である」
  • 「隠された意味が比類なき抽象的な美しさを変える」
  • 「全体性は無限の現象を静める」
  • 「物質とは、より深い非物質的現実の意識における経験である」

 

みたいなやつです。この手の文章については、まったくなじみがない方もいるでしょうが、スピリチュアル系とか、ポストモダン系の哲学書とかを読むと、わりと普通に出てくる言い回しなんですよ。こういった小難しそうな表現で、読者に「なんかすごいことを言ってそう!」と思わせるわけですな。

 

深そうなデタラメ」に関する研究はわりと多くて、このような言い回しにハマる人たちには、以下の傾向があることが確認されてたりします。

 

  • 知能が低い
  • 宗教、超常現象、陰謀論にはまりやすい
  • 分析的な思考スタイルを取らず、直感的な思考スタイルを好む
  • 社会に役立つような行動の量が少ない

 

なかなか切ない結果ですが、「まぁそうかもなぁ」って ところじゃないでしょうか。

 

で、 近頃、「深そうなデタラメ」という 概念を世に広めたゴードン・ペニークック先生が、この考え方の背景にある心理現象をいくつかまとめる総説(R)を出してくれていたので、 簡単に内容をチェックしておきましょう。

 

この研究では、ディーパック・チョプラさんのツイートを参照しつつ、「深そうなデタラメ」の 心理を掘り下げてくれております。チョプラさんは代替医療の有名人で、日本では「宇宙のパワーであなたの心と体はよみがえる」「あなたの年齢は「意識」で決まる」などの本でおなじみですね。いかにもなタイトルですなぁ、

 

でもって、「深そうなデタラメ」を 信じる心理について、 研究チームは以下のポイントを指摘してます。

 

  1. デタラメ盲点がデカい:最近の研究によると、 多くの人は「デタラメ盲点」を 持っていることがわかった。これは、「俺にはデタラメを見抜く能力がある」と思うが、「他人にはデタラメを見抜く能力がない」と信じるバイアスのことで、これにより 自分がだまされていることに気づけない。


  2. メタ認知のレベルが低い:過去の研究では、デタラメを受け入れやすい人ほど、メタ認知の精度が低い傾向が 確認されている。つまり、自分の認知プロセスを正確に評価する能力が低いため、デタラメな文章の内容が理解 できないのだと思われる。


  3. でたらめ受容性と創造性過大評価の関係:別の研究では、デタラメを受け入れやすい人は、自分の創造性を過大評価する傾向も確認されている。この調査では、無意味な発言を深いと感じる人は、自分の創造性を、実態よりも高く評価する傾向があった。


  4. ボランティアをしない:ある研究では、「深そうなデタラメ」を受け入れやすい人ほど、慈善寄付をする傾向が低いことがわかった。この結論は、「深そうなデタラメ」に影響されやすい人は、利他主義のレベルが低く、向社会的行動の傾向が弱い可能性を示唆している。


  5. 右派のほうが多い:ある研究では、右派の人ほど「深そうなデタラメ」に惑わされやすい傾向も確認された。 この研究では、政治に関する「深そうなデタラメ」を描いた文章を参加者に提示したところ、右翼的イデオロギーをより強く持つ人々は、左翼的イデオロギーを持つ人々よりも、「深そうなデタラメ」をより意味深く、あるいは洞察的であると評価する傾向があった。


  6. エッセンシャルオイルで何でも解決すると思いがち:研究によると、「深そうなデタラメ」を受け入れる人ほど、エッセンシャルオイルの 効能を過大に評価する傾向があり、 実際にエッセンシャルオイルを利用する傾向があった。 例えば、エッセンシャルオイルで慢性病が治ると言った内容も信じやすかった。これは、こ認知バイアスや批判的思考の欠陥が、エビデンスを十分に 確かめずに代替医療を受け入れてしまうのが原因だと思われる。


  7. 権威をやたらと信じがち:ある研究によると、科学者が発言する「深そうなデタラメ」は、スピリチュアル系のインフルエンサーが話す「深そうなデタラメ」よりも信憑性が高いとみなされた。これは、本質的な内容とは関係なく、科学的な人物と結びつけば、その発言の信憑性を信じ込んでしまうメンタリティが表れている。


  8. 内省でデタラメに強くなりがち:ある研究では、説明的内省(物事の仕組みや発言の背後にある根拠について熟考すること)を行うことで、「深そうなデタラメ」に対する受容性が下がる傾向が確認された。 この結果は、より内省的で分析的な考え方を促進すれば、「深そうなデタラメ」に対する脆弱性が下がる可能性を示している。

 

というわけで、いろいろ書いてきましたが、「深そうなデタラメ」にはまりやすい人は、認知能力、自己認識、社会的影響力、バイアスといった いろんな要素がからみ合って、デタラメを見抜く能力が低下しているのだと思われるわけです。「いや! 俺は大丈夫!」と思う人も多いでしょうが、 メンタルが弱ったりすると、どんな人でも、こういう思考への耐性は下がるので、 定期的に自問しておいたほうがいいでしょうね。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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