「 言いたいことをはっきり口にできない!」 問題に立ち向かうにはどうすればいいのか?という本を読んだ話
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「沈黙を捨てる(Unlearning Silence)」ってタイトルの本を読みました。著者のエレイン・リン・ヘリング先生は、リーダーシップ開発ファシリテーターで、ハーバード・ロースクールの元講師。アメリカン・エキスプレス、グーグル、ナイキ、ピクサーなどの企業のリーダーを指導してきた方だそうです。
というと、私たちとはかけ離れた超人のように思われるかもですが、先生は他人に意見をするのが苦手だそうで、
もっと大きな声を出せと、いままで何度言われてきたかわからない。「もっと大きな声を出せ」と言われるたびに10セントをもらえるシステムがあったら、私はもう大金持ちになって引退しているだろう。
などとおっしゃっておりました。これは共感するなぁ……。
そこで本書では、ヘリング先生が「 もっと自分が言いたいことを言うためにはどうすればいいのか?」「私たちが 他人に発言を控えてしまうのは何故か?」といった疑問を掘り下げてくれていて、大変勉強になりました。「言いたいことも言えないこんな世の中だよなぁ……」と 思っているような人には参考になるんじゃないでしょうか。
ってことで、いつもどおり本書から勉強になったところをまとめてみましょうー。
- 社会心理学者や組織心理学者は、「従業員沈黙」を長い間問題視してきた。従業員沈黙とは、会社で働く人たちが組織のためになるような洞察を共有しない状態を指す学術用語である。多くの人は、「物事がどのように進んでいるのか」を観察する傾向があり、周囲を見渡して、ある問題について誰も反発したり発言したりしないのを見ると、「自分もこの問題を話題にしない!」と結論づける。こうして沈黙の文化が企業を支配する。
- 「従業員沈黙」が広がると、誰も組織の問題に何も言わず、結果的に問題を悪化させる。それにも関わらず、たいていの企業は社交スキルのトレーニングや会話スキルのトレーニングをやらせようとするが、これにはほとんど効果がないと思われる。「従業員沈黙」の問題が起きるのは、チームのメンバーたちが、誰も上司に反抗しない状態を長い時間をかけて観察してきたのが原因だからである。組織の下位に属する人物が、上位の人間にまったく反撃できないことを学習したような状態である。
- 企業のリーダーは、黙っている人たちに「もっと発言していいんだよ」「好きに話してくれ」などと言うことが多い。彼らは善意で発言しているだけだが、このような言葉が功を奏することはない。事実、ハーバード・ネゴシエーション・プロジェクトの調査でも、「職場で自分の考えを話している」と回答した人は、わずか半数しかいなかった。
基本的に、聞き手が防衛的になってしまう現象は、リーダーにはコントロールできない。この問題を解決するには、「もっと発言しなさい」と言う代わりに、「私たちが沈黙してしまうのには、どのようなシステムの働きが影響しているのか」を見つめ直す必要がある。もしあなたがリーダーなら、「何が彼らを沈黙させているのか?」と自問することから始めるとよい。
- 多くの人が発言を控えるのは、そちらのほうが楽だからである。ものごとには反対しない方が(少なくとも短期的には)、事態は効率的に進む。多くの人は、「一緒に仕事をしやすい」という評判を守ることで報酬を得ており、その評判を守るためには、周囲に反発したり反対意見を述べたりしないということにつながる。つまり、私たちのコミュニケーション嗜好は「沈黙」がデフォルトなのだと言える。
- この問題を解決するには、逆のことをするしかない。沈黙が沈黙を生むように、発言は発言を刺激する傾向があるからである。コミュニティ内部の人たちが自分の声で発言するのを目にすればするほど、そのコミュニティのなかで発言する行為が普通になっていく。そのためには、以下のポイントに気をつけるとよい。
- ポイント1 「なぜ?」から始める:ハーバード大学のキーガン博士らの研究によると、変わるための重要な理由さえあれば、たとえそれが困難なことであっても、変わる可能性は格段に高くなる。そのため、「なぜ危険を冒してまで発言するのか?」「人間関係をリスクにさらして発言する必要があるのか?」「人前で発言するという潜在的な不快感を乗り越えてまで、声を出す価値があるのだろうか?」を考えまくらないと、感情的な脳のブレーキを突破できない。
- ポイント2 点と点を結ぶ:当たり前だが、周囲のあらゆる人たちは、自分とは異なる意見を持っている。しかし、多くの人は、「みんな自分と同じ意見でいて欲しい」と思うため、周囲と自分の意見は同じだと思い込んでしまうバイアスを持っている。 これを防ぐには、自分の観察と解釈を明確に言葉にし、 それが周囲とどう異なっているのかを尋ねるしかない。
- ポイント3 自分の要求を明確にする:私たちが発言するとき、他の人たちは、たいてい相手に協力的でありたいと思っている。しかし、ほとんどの人は、 自分の希望を明確にしないため、周囲の善意を無にしてしまう傾向がある。 そのため、何かを発言する際は、「相手にただ話を聞いてほしいのか?」「問題解決のパートナーになってほしいのか?」「共感してもらいたいのか?」「壁打ちの相手になってほしいのか?」といった具体的な希望を、 最初に相手に伝えておく必要がある。 それさえできれば、相手が有益な返答をしてくれる可能性が高くなる。
- ポイント4 抵抗を受け入れる:私たちの多くは、相手が抵抗を示したり、身構えたり、質問してきたりすると、一気にやる気を失ってしまい「発言してもうまくいかない……」と結論してしまう。こちらがアプローチした相手がすぐに同意してくれないだけで気落ちしてしまうケースは、「従業員沈黙」を生み出す最大の原因のひとつである。
相手が抵抗を示すのはごく普通のことなので、それに揺さぶられなくなるように、抵抗を予期しておくのがよい。抵抗は「関与の一形態」でしかなく、相手がノーと言わない限りは、相手の懸念を理解する方法を考えるほうが有益である。 - ポイント5 強みを発揮できるコミュニケーション媒体を選ぶ:たいていの人は、 自分が得意なコミュニケーションの方法を持っている。 午前中の会議で頭が回る人もいるし、 対面よりもメールの方が伝えやすい人もいる。 これは人によって大きく異があるので、自分の好みの時間帯はいつか? 電話、ビデオメッセージ、Eメール、それとも対面が好きなのか? といったポイントを 明確にしておくと、 より的確な発言をしやすくなる。
- 最後に、私たちは往々にして、自分の発する言葉を軽んじがちな点に注意を向けたい。声とはたんなる言葉以上のものであり、あなたが発する言葉は、あなたの人生を形作っていくものであり、すべての言葉が私たちのユニークな自己表現を形作っている。
そのため、「自分がどのような人間でありたいのか?」を、定期的に自分自身に問いかけるとよい。人生をどのように生きたいのかの答えがわかれば、それによって自ずと言葉の使い方も変わっていく。