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記憶力の改善に効く成分17種類の実力を データでチェックしてみたぞ!という 論文の話


記憶力の改善に効くサプリはどれだ?」って 疑問について深掘りしたレビュー(R)が勉強になるので、 内容をチェックしておきましょう。

 

これはセントルイス大学医学部など調査で、 どんなことをやったのかと言いますと、

 

  1. 「記憶力の改善に効く!」と 宣伝されている商品に含まれている成分をチェック

  2. その成分に関する過去の研究を調べて、どれぐらいの妥当性があるのかをチェック

 

て感じです。結果として、研究チームは、脳機能の改善サプリによく含まれる成分を17種類 ピックアップして、それぞれの有効性について論じておられます。

 

すべて詳しく説明していると長大になるので、本校でピックアップされた成分を簡単に説明しておきます。

 

  1. アポエクオリン:特定のクラゲに含まれるカルシウム結合タンパク質。サプリメント「プリバジェン(アポエクオリン)」って 商品名で販売されている。残念ながら、プリバジェンのメーカーが提供する情報以外には、アポエクオリンに関する実験データはほとんどない。


  2. アシュワガンダ:伝統的なインド医学でよく用いられている有名なハーブ。抗炎症作用と抗酸化作用があることで知られ、アシュワガンダが健康な成人および軽度認知障害者の認知機能を改善する可能性を示唆する証拠がいくつかある。


  3. カルニチン:エネルギー代謝と生産において主要な役割を果たすアミノ酸の一種。ある系統的レビューでは、認知機能が低下している人にカルニチンのサプリを飲ませて効果があるかどうかは、十分な証拠がないので判断できないとしている。


  4. コリン:必須栄養素であるコリンには多くの機能があるが、特に記憶力の調節に重要な働きをしている。コリンのサプリメントは、健康な成人、記憶力の悩みがある人、認知症の人の記憶力を改善する可能性を示したデータが一定数存在する。


  5. コエンザイムQ10:ユビキノンとも呼ばれるCoQ10は、抗酸化作用が高いことで知られている。しかし、CoQ10のサプリメントが神経変性を改善し、認知症を予防するという証拠はない。


  6. コーヒー抽出物:コーヒー抽出物とカフェインには、短期記憶力を高めることを示したデータがいくつかある。しかし、コーヒーが認知機能の低下を防いだり、アルツハイマー病のリスクを軽減したりなど、記憶力に対して長期的な効果を持つのかどうかはわからない。


  7. ショウガ:料理でおなじみショウガの成分は、抗炎症作用などの健康効果が高く認知機能を高める可能性がなくもない。あるRCTによると、ショウガは健康な中高年女性のワーキングメモリーを改善したと報告している。


  8. イチョウ葉:イチョウの葉エキスは様々な代替医に利用されているが、記憶力の低下や認知症を予防できるという確かな証拠はない。


  9. L-テアニン:緑茶に含まれるL-テアニンはアミノ酸の一種で、いくつかの研究で、記憶力向上の可能性が示されている。ただし、緑茶には他の精神活性化合物(カフェイン、フラボノイドなど)が含まれているため、L-テアニンがこれらの効果の原因であるかどうかはわからない。


  10. ヒューペルジンA:中国産のコケモモ由来のハーブで、強力なアセチルコリンエステラーゼ阻害活性がある。 この作用により、アルツハイマー病の認知機能を改善する可能性はあるが、研究の質は低い。


  11. ヤマブシタケ :薬用として使われるキノコの1種。3つのランダム化比較試験によって記憶力の改善効果が研究されており、いずれも高齢者の認知機能を改善したと結論づけている。しかし、 どの研究もサンプル数が少なく、効果量も小さいので、 そこまで期待はできない。


  12. その他のポリフェノール: いくつかのポリフェノールには、アルツハイマー病やパーキンソン病などの予防効果があることが複数の研究で示されている。


  13. ホスファチジルセリン:ホスファチジルセリンは脂質の一種で、細胞膜の構成成分。 まだ限られた研究しかないが、高齢者の記憶障害や認知機能障害を軽減する可能性がある。


  14. ウコン:ウコンは カレーによく使われるスパイス。2021年の系統的レビューにより、クルクミンのサプリメントは、ワーキングメモリーの改善と関連すると結論づけられている。しかし、対照群と比較すると、クルクミンを摂取している人は、胃腸のトラブルが起きやすいことも報告されている。


  15. ビタミンB:ビタミンB9やB12など、一部のビタミンは神経や脳の健康に重要な役割を果たしている。ただし、健康な成人の認知機能が、ビタミンBのサプリで上がるのかは不明。


  16. ビタミンD: 人体のあらゆる機能に関わるビタミン。脳機能にも関与している可能性があり、2021年の系統的レビューによると、50%の試験で 「認知能力に対するビタミンD補給の効果はまちまち、4分の1は否定的、最後の4分の1は肯定的 」と報告している。


  17. ビタミンE:脂溶性の微量栄養素で、抗酸化作用が 高いことでも知られている。 ただし、 現時点でのデータでは、ビタミンEは健康な成人の認知力には効果がないっぽい。アルツハイマー病の進行を遅らせる可能性を示すデータならある。

 

ということで、 このレビューを見ていると、大まかに以下のようにまとめられるでしょうね。

 

  • 現時点で証拠がないもの:アポアエコリン、コエンザイムQ10、コーヒー抽出物、L-テアニン、ビタミンB6、ビタミンB9、ビタミンB12。

 

  • いくつかの証拠があるもの:アシュワガンダ、コリン、クルクミン、ショウガ、 ヤマブシタケ、ポリフェノール、ホスファチジルセリン。

 

  • 結果が割れているもの:カルニチン、イチョウ葉、ヒューペルジンA、ビタミンD、ビタミンE。

 

個人的には、ビタミンD、アシュワガンダ、 クルクミン、ショウガ、 ポリフェノールの5つについては、 記憶の改善以外にもいろいろな健康効果が示されているので、普通にサプリを 使ってみてもいいんじゃないかと思っております。私がいま常用してるのビタミンDとポリフェノール、ショウガの3つですが、 今後のデータの積み重ねによっては、 アシュワガンダとクルクミンも常用するかも……ぐらいの 感じですねー。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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