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今週の小ネタ:ストレスは紙に書いて捨てよう、安価なサプリで記憶力が上がる、紙の本のほうがやっぱ集中できる


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 
ストレスは紙に書いて捨てようぜ!という話

拙著「超ストレス解消法」には、「ネガティブ・ダストビン」という手法が紹介されております。ざっくり言うと、

 

  1. 学生の参加者に「自分の体の嫌なところを紙に書き出してください」と指示。

  2. 全体を2つのグループに分けて、1つのグループには、書いた紙をビリビリに破いて捨ててもらう。

  3. もう1つのグループには、書いた紙をそのまま持っておいてもらう。

  4. すると、書いた紙をゴミ箱に捨てたグループは、自分の体にポジティブな評価を下していた。

 

みたいな話です。どうやらネガティブな思考や感情を紙に書き出すと、私たちの脳は、あたかも思考がモノになったかのように錯覚。それを破いて捨てることで、本当に思考をゴミ箱に捨て去ったような気分なるみたいなんですな。

 

でもって、新たなこの研究(R)では、名古屋大学などの先生方が、同じような効果を深掘りしてくれていて、ためになりました。実験の内容をざっくりまとめておくと、

 

  1. 学生の参加者に、社会的な問題への意見を書いてもらう(公共の場での喫煙が違法化されたことについてどう思うかを?とか)

  2. 学生の文章を、内容の出来にかかわらず否定しまくる(「教養のある人間がこんな意見を抱くとは信じられない!」「この人は、大学にいる間に何か学ぶことができればいいね!」みたいな)

  3. 怒った学生たちに、このフィードバックについて自分の正直な考えや気持ちを書き出すように指示する。

     

  4. 書き終えた紙を、シュレッダーやゴミ箱で処分するか、そのまま机の上に置いておくかのどちらかを指示する。

 

みたいな感じです。学生たちへ直にストレスを与えてるので、ストレス対策の参考になりそうですねー。

 

その結果、「怒り」を書いた紙をシュレッダーかゴミ箱で処分した人は、怒りがほぼ完全に消えてしまったんだそうな。逆に、書いた紙を机に置いたグループは、その後も怒りを抱き続けたそうで、研究チームは、こんなことを言っておられます。

 

今回の実験で使われた方法により、「怒り」はある程度まで抑制されるだろうと予想していた。しかし、実際には、怒りがほとんどなくなってしまい、これには驚かされた。

 

ということで、思ったよりも「イライラを紙に書いて捨てる」方法は、ストレスの解消に効くらしい。これだけ手軽で効果が高いなら、試してみた方が良いっすね。

 

さらに研究チームいわく、

 

このテクニックは、ビジネスシーンで怒りを感じたときにも使える。怒りの原因をメモに書き出し、それを捨てれば応用できる。

 

とのことなんで、ぜひお試しください。

 

 

安価なサプリで記憶力が上がるぞ!

食物繊維サプリを3ヶ月使えば60歳以上の記憶力が改善するぞ!って研究(R)が出ておりました。

 

これは36組の双子を対象にしたRCTで、プラセボか食物繊維サプリのどちらかを12週間毎日摂取してもらったんだそうな。その結果について、筆頭著者のメアリー・ニ・ロクレン博士いわく、

 

食物繊維サプリを飲んだグループは、アルツハイマー病に関連する記憶テストの成績を向上させた。わずか12週間でこのような変化が見られることに興奮している。

 

この結果を見ると、高齢化社会において、脳の健康と記憶力の強化に大きな期待が持てる。

 

とのこと。まぁ、あくまで60歳以上だけを対象にした研究なんで、若い人たちにも同じ結果が出るかはわからんのですけど、食物繊維は安いものなんで、試すのもいいんじゃないでしょうか。

 

ちなみに、この実験で使われた食物繊維は「イヌリン」と「FOS(フラクトオリゴ糖)」だったらしい。どちらも腸内細菌の繁殖を助ける化合物で、そのおかげで改善した腸が脳にも良い影響を与え、記憶力の改善につながるかもしれないらしい。

 

どっちの食物繊維も安価で入手しやすいので、気になる方はお試しください。私は日常的にFOSを使っております。

 

 

紙の本のほうがやっぱ集中できるらしい

やっぱ紙の本のほうがタブレットより良いのかねぇ……と思わせる研究(R)が、また出ておりました。過去の研究でも、紙の本のほうが理解度や定着度が上がると言われてきたんですが、今回の研究では、主に子どもを対象に同じ現象を確認していてタメになります。

 

これはイスラエル工科大学などの研究で、6歳から8歳の子ども15人が対象。それぞれの児童に読書セッションに参加してもらい、その際に、紙の本とデジタルの本の2種類をわたした上で、みんなの脳波と文章の理解度を評価したんだそうな。

 

すると、結果はこんな感じになりました。

 

  • ほとんどの子どもたちは、紙の本を読むときのほうが、脳波が高い周波数帯、特にベータとガンマの帯域で高いスペクトルパワーを示した。これらの周波数は、より集中力が高まり、脳をよく使っているときに発生する。

 

  • 一方で、タブレットの読書は、特にアルファ帯域とシータ帯域で高いスペクトルパワーを示した。これらの帯域は、意の集中度が低い状態と関連していることが多い。

 

ということで、紙の本を読むほうが、全体的により高いレベルの集中や覚醒が促進された可能性があるわけっすね。

 

さらに分析を進めると、実際に、タブレット読書で見られる脳波が出ているときは、注意力テストの成績が低くなる傾向も見られたそうで、やはりデジタル機器を使うと、いまいち目の前の課題に集中できなくなるのかなーって気がしますね。

 

あくまでサンプル数が少ないし、子どもしか対象にしてないので、結果を一般化するのには限界があるでしょうが、集中したいときは紙を使うほうがいいのかもですね。私は近眼がヒドいので、いまではデジタルが中止になってますが。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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