「お金のストレス」があなたを病気に追い込む理由
その昔、「もっとも『老けた見た目』になっちゃうストレスが特定された件」って話を書いたことがありました。老化の原因はいろいろありますが、「金の問題に悩んでいる人ほど見た目が老けやすい!」って仮説を提示したものです。 現代の人間にとっては、金銭的な問題が人生の問題に直結しやすいので、その分だけメンタルへの負担も大きくなるんだよーみたいな話です(もちろん、金に困ると見た目に注意を払わなくなるって問題もありますが)。
でもって、最近は、この知見を裏づけるような データがさらに出ていて、「金に困ると老ける」って 考え方に、いよいよ信憑性が出てきました。
直近だと、英国の研究チームが発表した研究(R)がありまして、高齢化の調査に参加した約5,000人の男女を調べ、血液中のタンパク質とホルモンを分析。その結果を、 みんなのライフスタイルと照らし合わせたんだそうな。
すると、 予想どおり、経済的なストレスが大きい人ほど深刻な病気を発症するリスクが60%も高かったんだそうな。 さらには、お金のストレスは、離婚、 身体の障害、介護、病気、死別といった 人生の困難よりも、健康に及ぼす悪影響が大きかったそうで、 金銭の不安は、健康の不安にもつながる可能性がさらに濃くなっております。
ちなみに、お金の心配ってのは、不安、うつ病、 体の痛み、炎症、心臓病、高血圧、頭痛、不眠症、潰瘍、背中の痛み、関節炎、喘息などの病気や早期死亡のリスクと相関していたそうな。 ここまでくると、もはやお金の悩みは万病の元ですなぁ。
さらに、近年の類似した研究をいくつか見ておくと、
- 2021年にミズーリ大学が発表したデータ(R)では、7850人の男女の経済状況調べたところ、借金がほとんどない人と比べて、借金を抱えている人は、50歳までに炎症や関節痛に悩まされ、その痛みのせいで仕事に支障が出る可能性が大きかった。
- 南フロリダ大学などの研究(R)では、医療費の借金がある人ほど、不安やうつ病のような精神的な問題を抱える可能性が、他の人の3倍高い傾向が見られた。
- バージニア大学などの研究(R)によると、経済的にストレスのかかることを考えるだけでも、健康に害を及ぼす可能性がある。例えば、「自分の会社は大丈夫なんだろうか」「 自分が住んでいる地域は失業率が高い」「大学を 卒業したらもっと良い暮らしができるだろうか」といった 不安に悩んだ被験者は、より身体の痛みに弱くなり、痛みへの耐性が下がってしまう傾向が見られた。
といった 報告が出てたりします。 一部の研究者は「経済的な不安は、実際に肉体的な苦痛をともなう」と指摘してまして、 なかなかしんどい結論になってますな。
それでは、「なぜお金の不安で 不健康になってしまうのか?」ってとこが 気になりますが、ほとんどの科学者は、「ストレスに対する身体の生理的反応が重要な要因じゃない?」と指摘しておられます。 金銭的な問題を抱えていると、常に神経系に負担がかかりやすいし、「 自分の人生はコントロール できない……」 みたいな感覚に襲われ続けるので、 体の中にコルチゾールとアドレナリンという2つのホルモンが出まくり、身体が正常に働くのを邪魔してくるんですな。その結果、炎症、免疫システムの不調、血圧の上昇など、長期的に健康を脅かす問題が発生しちゃうわけです。
さらに、金銭的なストレスが増えた人は、 体に悪い行動をどんどん取ってしまいがちなのも問題の1つ。例えば、金銭的に余裕がないと、医者への受診や治療を 先送りにすることが多いし、運動不足、飲酒量増加、ジャンクフードなどの不健康な生活行動にもつながりますからね。 これにより、一部の研究者が言うとおり「経済の悪化が健康の悪化を招き、健康の悪化が経済の悪化を招く」って 悪循環が始まってしまうんですよね。
ということで、 なかなか厄介な問題ではありますが、データを見てみると、経済的な問題を抱えるすべての人が不安や病気に陥るわけではないって結果も出ているのが救いですね。 このような人たちがどんな対策を取っているのかは、 まだ研究からははっきりしないんですが、多くの専門家は、「深刻な健康被害が出てしまう前に、最もやばい金銭問題に対処するのが最善の予防薬じゃない?」と 言っておられます。
簡単に言えば、 借金があるなら返済の負担を減らすためにできる具体的なステップを1つか2つ見つける、多額の医療費がかかっている場合は医療機関に電話してより管理しやすい支払いにする、クレジットカード会社に金利を下げられないか確認する、といったような話です。 非常に当たり前な話ではあるんですが、金銭的なストレスにさなわれていると、基本的な対策ですらできなくなってしまうケースが多いので、「金銭問題に対処するのが最高の病気予防!」って標語を頭の中に入れておくだけでもだいぶ違うんじゃないかと思います。なにかひとつ対策をすれば、 人生のコントロールの感を取り戻すことができ、それが健康面にも大きな効果をもたらすはずなので。