今週の小ネタ:有酸素運動よりも筋トレを先にしたほうが良い?ロディオラサプリで脳も筋トレもパワーアップ?加重ベストでリバウンド対策?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
有酸素運動よりも筋トレを先にしたほうが良い?
「筋トレと有酸素運動、どっちを先にやれば痩せるんだろう?」ってのは、運動好きの方なら一度は気になったことがあるテーマじゃないでしょうか。
この問題を調べた研究はいくつかあるんですが、新しい研究(R)では、若い男性を対象に「筋トレと有酸素運動の順番」による脂肪燃焼の違いをガッツリ調べてくれてて良い感じでした。
これは、肥満の若い男性45人を対象に12週間の運動を指示した実験でして、内容は以下のようになります。
- 1.参加者を3つのグループに分ける
- 筋トレ→有酸素運動グループ
- 有酸素運動→筋トレグループ
- 運動なしのコントロールグループ
- 2.週3回、それぞれ30分の筋トレ+30分の有酸素運動を実施(順番のみが異なる)
このシンプルな実験で、どちらの順番で運動をしたほうが、より効果的に脂肪を落とせるかを比較したわけです。
で、12週間のプログラムが終わってみると、どちらの順に運動をした時でも体脂肪は減ったものの、「筋トレ→有酸素運動」グループの方が脂肪の減り方が大きかったんだそうな。また、爆発的な筋力(エクスプローシブ・ストレングス)と筋持久力も、筋トレを先にやったほうが伸びていたらしいんですな。
一方で、最大酸素摂取量(VO2max)や脚の等尺性筋力(静的に踏ん張る力)は、どちらのグループも似たような伸び方だったらしいんで、これは「筋トレを先にしたほうが良いのか?」って気になるわけです。
ただし、この論文には注意点もいくつかありまして、たとえば、
- どんな筋トレメニューをやったのか、どんな方法で筋力や筋持久力を測定したのか、具体的な記載が少ない
- もともと「精子パラメータの変化」を主目的として登録されていた研究なのに、結果のメインが体脂肪や筋力になっている
- 統計解析もあやふやで、多重比較(いろんなデータを同時に比較するときの補正)がされていない
ってあたりは気になりました。その意味で、信頼度としては「やや弱い」部類に入る印象ですね。
とはいえ、これまでの研究でも「筋トレ→有酸素運動」の順番のほうが、脂肪燃焼や筋力アップにプラスになる傾向はチラホラ見られたりはしております。筋トレで筋グリコーゲン(筋肉のエネルギー源)を消費したあとに有酸素運動を入れると、脂肪の利用効率が上がるのでは?ってメカニズムも提案されてるんで、個人的にはとりあえず“筋トレ→有酸素運動”の順番でやってみるのもアリかなーと思っております。
ロディオラサプリで脳も筋トレもパワーアップ?
このブログではおなじみ「ロディオラ・ロゼア」に関する最新研究(R)が出てたんで、中身をチェックしときましょう。
ロディオラ・ロゼアは「イワベンケイ」という和名でも知られるハーブで、昔から「ストレス耐性アップ」や「集中力アップ」に使われてきた歴史があったりします。そのため、最近は筋トレ好きの間でも「パフォーマンスを高めるかも?」と注目されてたりするんですよ。
で、今回の研究(R)は、18人の参加者が4つの実験セッションを体験するクロスオーバーデザインになっていて、
- ロディオラ(1,200mg/日)または、プラセボを4日間服用する。
- 4日目に、① 精神的に疲れるタスク か ② ただの動画視聴をしてもらい、その後で全員に認知テストを実施。さらには、ベンチプレス+ベンチプルで筋トレセッションも行い、さらに再び認知テストをする。
みたいになってます。それぞれのセッション間には3日のウォッシュアウト期間(薬が抜ける期間)が設定されていて、全員がすべての条件を体験する形ですね。
では、その結果を見てみましょうー。
- 認知機能テスト:ロディオラを飲んでも明らかな改善なし
- 筋トレパフォーマンス:動画視聴(精神疲労なし)後のベンチプレス1〜2セット目で、プラセボより「1回多く」挙上できた(平均)。ただし、これはベンチプレス限定の現象で、ベンチプル(引く運動)や精神的に疲れた後の運動では効果なし。
つまり、「めちゃくちゃ効果あり!」というよりは、「ベンチプレスで1回多く上がった……かも?」くらいの小さな効果にとどまった感じですね。これだけ見ると、筋トレのためにロディオラを使うメリットはないかなー。ただし、過去の研究では「ロディオラで筋持久力が向上する」「疲労感が軽減する」といった報告がチラホラと出てはいるので、あくまで“軽めのサポート”として使えるレベルという印象もありますが。
加重ベストでリバウンド対策?
「せっかく痩せたのに気づけば元通り……」って経験は“ダイエットあるある”でしょう。いわゆるリバウンド問題ですが、近ごろ見た研究(R)はちょっと新味がありまして、
- 加重ベスト(ウェイテッドベスト)を着るだけで、体重維持がしやすくなるかも?
って内容になってました。加重ベストってのは、外側に重りが仕込まれたベストのことで、Amazonでもいろいろ売ってますね。私は使ったことがないんですけど、少年漫画っぽくていいっすよね。
で、この研究は、肥満と関節炎に悩む高齢者37名を対象に、6カ月間のランダム化比較試験を行ったものです。ざっくりとまとめると、
- 全員にカロリー制限ダイエットをしてもらいつつ、一部の参加者には「加重ベスト」を1日10時間着てもらう。
- このベストの重さは週ごとに増やされ、失った体重分だけ重くなっていく仕組みです(平均で約6kg)。ちょっとした筋トレ気分ですね。
みたいになります。こんな感じで加重ベストグループとコントロールグループ(ベストなし)を比べたところ、体脂肪率や筋肉量の変化には大きな差が出なかったんだそうな。「目に見える」体型の変化は意外となかったってことですな。
ただ、個人的に興味深いのは「安静時代謝率(RMR)」への影響でして、通常は体重が減ると基礎代謝も下がりがちなんだけど、コントロール群は1日あたり約238キロカロリーも代謝がダウンした一方で、加重ベスト組はほぼ変化がなかったというんですな。この「基礎代謝の維持」が、もしかするとリバウンド予防のカギかもしれませんねぇ。
では、本当に加重ベストでリバウンドしにくくなるのかってことで、18カ月後の追跡調査の結果も見てみましょう。こちらのデータによると、
- 加重ベストグループ=減った体重の約半分だけリバウンドした。
- コントロールグループ=体重がほぼ元通りになっていた。
って感じで、加重ベストに有利な結論が出てたりします。ただし、この差は統計的には有意とは言えない(p=0.1)ので、「決定的な証拠!」というほどじゃないですが。
このような傾向が出た理由としては、だいたい以下のようなものが考えられるでしょう。
- 加重ベストでエネルギー消費が維持できる: 重りを身につけて生活することで、日常動作の消費カロリーがアップ。これが基礎代謝の低下を食い止める要因になっているんだろうなぁ。
- “体重セットポイント”の調整:人間の身体には「このくらいの体重が自分の標準だ!」という“セットポイント”が備わっている。加重ベストをつけることで「身体的に重い状態」を再現し、脳が「まだ太っている」と錯覚→代謝を維持しやすくなる、という説も考えられる……かも。
とはいえ、今回の研究はサンプル数も少ないんで、「みんな加重ベストを買おうぜ!」ってレベルの話じゃないあたりはご注意あれ。「減量後、どうしてもリバウンドしてしまう!」「基礎代謝の低下が気になる!」みたいな方は、日常生活の中で“少し重い負荷”を加える工夫をしてみるのもアリかもしれませんけども。