AIを使うほど「ありきたりなアイデア」が増える?創造性を守るための使い方
生成AIがめっちゃ便利なのは言うまでもなく、私も企画書や提案文の作成などに使い倒しております。昔なら半日かかっていた仕事が秒で終わったりしますんで、まことにありがたい話です。
が、そこで気になるのが、「アイデア出しをAIに任せ続けたら、人間の創造性はどうなるの?」って問題でしょう。「使わないものは衰える」は世の習いなんで、そのうち自力で考える力まで失われそうな気もするわけです。
でもって、近ごろこの点について新たな研究(R)が、「人間にしか扱えない創造性とは?」ってところを考えておりまして、なかなか参考になりました。
まず前提として、研究チームは「創造性には大きく2つのタイプがある!」という考え方をしております。
ひとつ目は「相対的創造性」というもので、これはすでに存在する知識やアイデアを組み合わせて、新しいバリエーションを作る能力を意味します。たとえば、
- 過去の成功事例を、別の業界に応用する
- 同じ商品の売り文句を、10パターン考える
- 既存のサービスを、新しい顧客層向けに言い換える
- 複数の提案書から、使えそうな要素を合体させる
といった作業ですな。この手の創造性が、完全にAIの得意分野なのは言うまでもないでしょう。AIは大量の学習データからパターンを取り出し、それらを確率的に組み直すようにできてますからね。なので、「とりあえず候補を大量に出してくれ!」という仕事には非常に強いんですよ。
一方、もうひとつが「絶対的創造性」であります。こちらは既存のアイデアを組み合わせるだけでなく、問題の見方そのものを変える能力って感じです。
たとえば、顧客が「もっと効率のいいシステムが欲しい」と言っているときに、
本当の問題はシステムの遅さではなく、部署間の不信感なのでは?
と問い直したり、
そもそも、この業務は自動化するより廃止したほうがいいのでは?
と既存の前提を疑ったりするような能力のことっすね。
研究チームによれば、「こちらは依然として人間の仕事だ!」とのこと。AIは多様な回答を作れても、現場の文脈を深く理解し、倫理的な影響を考え、何を問題として扱うべきかを意図的に決める能力までは持ってないんで、問題そのものを新しく定義するのは人間の役目になるわけです。要するに、AIは「答えの候補」を増やすのは得意だけど、「そもそも何を問うべきか?」を決めるのは苦手なんだってことですね。
そこで研究チームは、Salesforce、Adobe、SAP、IBM、Siemensという5社の公開事例を分析し、生成AIが複雑な法人営業にどう使われているかをチェックしたんだそうな。その結果、なにがわかったかと言いますと、
- AIの影響は、営業活動の段階によって以下のように異なっていた。
- 顧客と会う前の準備段階では、AIはおおむね良い働きをしていた。営業担当者はAIに複数の提案文やストーリーを作らせ、そのなかから使えそうなものを選び、顧客に合わせて修正していたとのこと。この使い方なら、AIは人間の創造性を奪うというより、思考の材料を増やしてくれるっぽい。
- が、実際に顧客と話し合う段階では、結果が分かれた。AIの出力を参考資料として扱い、顧客の反応を見ながら取捨選択していた営業担当者は、より多くのアイデアを出しつつ、自分でも深く考えていた。
- その一方で、AIが作った説明をほぼそのまま採用していた人は、顧客特有の事情を考えなくなり、会話のなかで問題を捉え直す作業も減っていた。
みたいな感じだったそうな。要するに、AIを思考の材料にした人は創造的になり、完成品として受け取った人は考えなくなったってことですな。「頭を使う仕事をAIに任せると、自分じゃ考えなくなっちゃうぞ!」ってのは、このブログでも過去に書いたポイントで、いわゆる「認知的オフローディング」ってやつですな。
もちろん、頭の負担を減らすこと自体は悪くないんだけど、ここで問題なのは「何を外に任せ、何を自分で考えるか?」の区別がつかなくなるとこでしょう。文章の下書きや選択肢の作成みたいなものはAIに任せてもいいんだけど、
- 顧客が本当に困っていることは何か
- AIの提案はこの状況に適切か
- もっと別の見方ができないか
みたいな判断まで手放しちゃったら、提案はどんどん平均的になっちゃいますからねぇ。
でもって、この研究でチームが特に重視しているのが、管理職や組織の役割であります。というのも、この研究では、
- AIを「人間の判断を補助する道具」と位置づけ、研修や利用ルールを整備していた企業では、営業担当者がAIの出力を批判的に検討する傾向が見られた!
って傾向が出てるからです。AIの使い方は、個人の心がけだけでなく、組織のルールにも左右されるってことですな。
その一方で、
- 提案書をどれだけ早く作ったか
- AIを何回使ったか
- どれだけ多くの顧客に連絡したか
- 文書作成時間をどれだけ削減したか
みたいな効率ばかりを評価する組織では、AIへの依存が進みやすくなったそうな。社員としては、じっくり顧客の問題を考えるより、AIが出した案をそのまま使ったほうが高く評価されますから、これは納得の結果じゃないでしょうか。
ってことで、今回のデータを以上の話を実践に落とし込むなら、AIを使う際は、以下のような感じを意識するのがよさそうであります。
- AIに任せるもの
- アイデアの候補を大量に出させる
- 別の言い回しを考えさせる
- 過去の事例を組み合わせさせる
- 提案書の下書きを作らせる
- 自分が見落としている可能性を列挙させる
- 人間が判断するもの
- この答えは本当に相手の状況に合っているか?
- AIはどんな前提に立っているか?
- 顧客が口にしていない問題はないか?
- そもそも別の問いを立てるべきではないか?
- この提案に自分で責任を持てるか?
基本的には、AIが作った案を「思考の素材」として扱うことを意識してれば、まぁOKってとこじゃないでしょうか。
まぁ、この研究は5社の公開資料を分析した理論構築型の研究なんで、AIを使えば創造性が何%上がるとか、使いすぎると能力が落ちるとかを実験で証明したものじゃないあたりはご注意あれ。企業が公開する成功事例には宣伝的な偏りもありますし、中小企業や単純な販売業務にも同じ結論が当てはまるかは不明であります。
とはいえ、「AIで創造性が上がるか、下がるか?」という問いに対して、「何を任せるかで変わる!」と整理してくれたあたりは、非常にわかりやすくていいんじゃないでしょうか。少なくとも、AI時代には、AIが並べた選択肢を疑い、現実の文脈に合わせて問題を捉え直す能力かもなーってとこは、頭に入れとくのがいいんじゃないかと。



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