リスクを避けすぎると、かえって将来が不安になるぞ!という本を読んだ話
『挑戦の価値があるリスク(Worth the Risk)』って本を読みました。著者のアリソン・シュレーガーさんは、マンハッタン研究所の上級研究員で、経済や金融のリスクについて研究している先生なんだそうな。
で、本書は「私たちは、リスクを避けすぎて可能性を狭めていないか?」って問題を扱ってまして、これは多くの人に響きそうなテーマじゃないでしょうか。なにせ現代は、仕事の先行きは不透明だし、AIで世の中は変わりそうだしで、「こんな時代に挑戦なんてできないよなぁ」なんて空気感もありますからね。
もちろん、リスクを取れば必ず報われるわけではないものの、ここで著者は「必要なリスクまで避けると停滞につながる!」と言ってまして、個人的にはいろいろと納得した次第です。
では、いつもどおり、本書から勉強になったところをチェックしてみましょうー。
本書の基本的なメッセージは、「リスクを考える前に、自分にとっての安全を定義しよう」というものである。私たちは日常的に「それは危ない」「安定した生活がしたい」と口にするが、その意味は必ずしも明確ではない。
たとえば、仕事の安全性を考える場合でも、「毎月の収入が変わらないこと」「失業する可能性が低いこと」「仕事を失っても次を見つけられること」では、それぞれ目指す状態が違う。現在の収入は安定していても、ほかの職場で使いにくい能力しか身につかないのなら、その仕事の将来には不安が残る。
このように、まず自分が何を守りたいのかを決めなければ、どの選択が危険なのかは判断しにくい。なので、「安全なほうを選びたい」と思ったときには、まず「自分は何を失いたくないのか?」を具体的にする必要がある。
著者は、「安全性が高まっても、私たちが安全だと感じるとは限らない」と指摘している。というのも、たとえどれだけ医療や技術が進歩し、以前なら避けられなかった危険に対処できるようになったとしても、私たちはすぐにその状態に慣れてしまい、さらに高い安全性を求めるようになるからである。安全性の改善とともに、安全に対する期待も上がっていく。いかに自分が強い不安を感じているからといって、実際の危険が増えたかどうかは判断できない。
私たちの多くは、「もっと余裕ができたら挑戦しよう」と考えがちである。十分な貯金ができたら、仕事が落ち着いたら、失敗しない見通しが立ったら……という考え方である。
しかし、著者は「条件が完全に整うのを待っていると、状況を改善する機会まで失ってしまう」と指摘する。転職、引っ越し、事業の立ち上げなどは、不確実さを伴う一方で、収入や働き方を変えるきっかけにもなりやすい。
もちろん、生活に余裕がある人ほど失敗に耐えやすいのは事実だが、それでも「いまの自分には挑戦する資格がない」と考える前に、現在の条件で試せることがないかを検討する余地はある。
ここで気をつけたいのは、「大きなリスクを取れば成功する」とは言えない点である。「成功した人は大きなリスクを取った」などとよく言われるが、成功には能力、資金、人脈、運なども関わるため、リスクをとればいいというものではない。
そのため、リスクを取る際には、自分が引き受けられる失敗の範囲を決め、その範囲で何を試せるか考えるしかない。
たとえば、別の仕事に興味があるなら、まず経験者に話を聞き、関連する作業を小さく体験する。事業のアイデアがあるなら、多額のお金を使う前に、少人数に試してもらう、などである。挑戦の規模を調整すれば、選べる行動は増える。
さらに、著者は「高齢者ほどリスクを取るのがうまい」と指摘する。若い人は新しい刺激を求め、大胆な行動を取りやすいが、それと適切にリスクを判断できることは別。経験を積んだ人には、過去の事例と照らし合わせて状況を判断したり、問題の兆候に気づいたりできる能力がある。特に、自分が長く関わってきた分野なら、「どこに落とし穴があるか」「何を確認すべきか」といった知識が役立つことは多い。
ただし、当然ながら、これは「年齢を重ねれば、どんな分野でも判断がうまくなる」という意味ではない。大事なのは、「もう若くないから無理だ」と決めつける前に、「自分の経験を使える挑戦は何か?」と考えることである。
また、人間のリスク判断には偏りがあり、複雑な確率や仕組みを使ってリスクを説明されると、とたんに判断できなくなってしまうことがある。そのため、リスクを判断する時は、わかりにくい説明を、自分が理解しやすい具体的な状況に置き換えると、判断力が上がることは多い。
具体的には、「失敗するかもしれない」という不安がわきあがったら、いくつかの問いに分けてみるとよい。
1.何が起きたら失敗なのか?:お金を失うことか、時間がかかることか、人間関係が悪くなることか。
2.失敗した場合、どの程度の負担になるのか?:生活に影響するのか、予定の変更で対応できるのか。
3.負担を小さくする方法はあるか?:使う金額や期間を限定したり、事前に確認したりできるか。
4.途中でやめたり、やり直したりできるか?:一度の決断で、すべてが決まってしまうのか。
このように、漠然とした不安を細かくすれば、実際に試してみてもよさそうな部分を考えやすくなる。
最後に、著者が強調しているのが、「リスクを取るか、まったく取らないかの二択で考えない」という点である。挑戦には、規模、期間、回数、準備の程度など、調整できる部分がいろいろとある。
たとえば、新しい分野を学ぶにしても、最初から長期の講座に申し込む方法もあれば、入門書を読んだり、短い体験講座に参加したりする方法もある。小さく試して得られた情報をもとに、次にどれだけ時間やお金を使うかを決めてもいい。
不確実さを完全になくすのは難しいが、自分が引き受けられる範囲に調整することはできる。そう考えると、リスクの検討が具体的な行動につながりやすくなる。
ということで、『Worth the Risk』って本の要点でした。「リスク不足こそ停滞の原因だ!」という著者の主張は強めなので、すべてをそのまま受け取る必要もないでしょうけど、「自分にとって安全とは何か?」「どこまでなら試せるか?」ってのは、確かに日常で使ってみるといいんじゃないでしょうか。



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