脳のバリアが破れる恐怖の「リーキーブレイン」ってなに?#1
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脳のバリアが破れる恐怖の「リーキーブレイン」
当ブログでは、よく「リーキーガットは怖いよー」みたいな話を書いております。「リーキー」は「漏れる」って意味で、つまりは腸(ガット)から体内に毒素が入り込んじゃう状況を指した用語。腸のバリア機能がスッカスカになった状態とお考えください。
で、その流れで近ごろよく聞くのが「リーキーブレイン」って言葉です。こちらは腸じゃなくて脳のバリアがスッカスカになった状態で、こいつが起きると有害な物質が頭に入り込んじゃうんですな。
ご存じの通り、体の脳には「血液脳関門(BBB)」っていうフィルター装置がついていて、神経細胞を守っております。このバリアを通れるのは、アミノ酸、糖、ホルモン、酸素といった一部の物質だけ。
ところが、いったんバリアが破られると、有害な化学物質や炎症性のサイトカインが脳まで届いちゃうんですよ(1)。怖いですねぇ。
では、「リーキーブレイン」で何が起きるかといえば、以下のような感じです。
1.ブレインフォグ
直訳すると「脳の霧」で、要は頭にモヤがかかった ような状態のこと。なんか頭がボーッとして集中できないぐらいなら誰にでもありましょうが、この症状が進むと、感情が消えたり、考えることができなくなったり、ヘタをすると現実感まで失われちゃうんですな。
これは医学論文でも使われている言葉で、おもに脳の炎症が原因と考えられております。2015年のレビュー論文(2)によれば、アレルギー反応などが原因でマスト細胞が活性化すると、炎症を進める物質がドバドバと分泌され、リーキーブレインを引き起こすんだそうな。その結果、炎症性のサイトカインが脳まで達して、脳の機能が低下していくという流れ。
これは実感としてもわかる話で、私のハウスダストアレルギーが最悪だったころは、離人症みたいな状態になってましたからねぇ。当時はたんに呼吸困難のせいかと思ってたんですが、いま思えばブレインフォッグもあったのかもですな。
2.鬱病
以前にも書いたとおり、近ごろは「鬱病の原因は脳の炎症だ!」って説が多く、頭のなかで火事を起こすリーキーブレインも、当然ながらメンタル悪化の原因になるわけです。2017年にわかった話でいうと、リーキーブレインが起きると「ケモカイン」っていう炎症性のサイトカインが脳に侵入しちゃう模様(3)。脳のバリアが正常であれば、ケモカインは頭の中まで行かないようになっております。
さらに2013年のレビューでは(4) 、脳の酸化ストレスがバリアを破壊し、さらに炎症を起こすメカニズムが確認されてたりとか。実際、84人の女性を調べた研究では、鬱傾向の人ほど脳内のアルブミンレベルが高かったそうな(アルブミンはリーキーブレインの指標)。
3.認知症
リーキーブレインは脳にダメージを与えるんで、当然ながら認知症の原因にもなるわけです。アルツハイマーの原因はまだハッキリしてないものの、大きな原因のひとつと思われるのがアミロイドベータっていうタンパク質。こいつが脳にたまって、細胞を傷つけていくと考えられてるんですな。
で、脳のバリアに穴が開くと、そのすき間からアミロイドベータが入り込んでいき、細胞をガンガン殺していく次第(5)。まあ脳のなかに動脈硬化が起きたようなイメージですね。
まとめ
ってことで、近ごろよく聞く「リーキーブレイン 」の話でした。要するに脳のバリアが破れて炎症を起こすのが問題なので、最近は統合失調や自閉症スペクトラムなどにもリーキーブレインが関わってるとも言われてたりします。まだヒトの実験が少ない分野ではありますが、いろんな原因で血液脳関門がリーキーになるは間違いないところ。特にブレインフォッグは誰にでも心当たりがあるでしょうから、気にしとくといいかもしれません。
では、次回は「なぜリーキーブレインが起きるのか?」を掘っていきましょう。