今週半ばの小ネタ:感情知性と運動能力、カフェインで頭はよくなる?、グリットを高めるには?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
感情知性が高い人は運動能力も高い?
IQは大事だけど感情知性も大事!とはここ十数年でよく言われるようになった話。もちろんIQが高い人は社会的に成功しやすいんだけど、それ以上に、「他人に共感できる」とか「相手の気持ちを読める」といった能力の影響も大きいのでは?みたいな話っすね。
正直、感情知性がどこまで社会的な成功を左右するかはわからないんですけど、新しいデータ(R)は、「感情知性は運動のパフォーマンスにも大事では?」って観点を示唆してて目新しい感じでした。
これはパドバ大学などの調査で、
- 237人のランナーを集めて、ハーフマラソンのレースに参加する前日にアンケートに答えてもらう
- アンケートでみんなの感情知性のレベルを調べる
- レースの結果とアンケートの回答を比べる
みたいになってます。すると、結果にはまずまずの違いが確認されまして、
- 感情知性が高い人ほどレースの成績が良い!
- 過去のマラソン体験や体調などの変数を調整しても、やっぱり感情知性が高い人ほど成績は良かった
という感じだったそうな。
かなりシンプルな観察研究なので「運動の成績を上げたきゃ感情知性も鍛えよ!」って結論にはならんのですけど、感情知性が高い人ってストレスのコントロールもうまいですからねぇ。普通に考えれば、感情知性の高さがスポーツの辛さをやわらげてる可能性は高いようにも思えるわけです。
チームいわく、
過去の文献でも、感情知性が高い人のほうが、感情的知能が低い人よりも精神的な回復力が高いとの結果が出ている。そのため今回の結果は、私たちがストレスや疲労を経験しやすい状況(職場環境など)にも一般化できる可能性がある。
ってことで、感情知性がストレス対策になるのでは?みたいな視点が強調されておりました。感情知性の鍛え方については、「EQ2.0」あたりを参考にしていただければ幸いです。
頭を良くしたいなら余計なことはせずカフェインだけにしとくのが無難説
スマートドラッグと呼ばれる薬はいろいろあるものの、いろいろ調べていくとたいていは眉唾もの。なんだかんだで認知のパフォーマンスアップにはカフェインがベストなのでは?ってのが、ここ数年の結論かと思います。有名なスマートドラッグと比べても、結局はカフェインのほうが有効なケースが多いもんですから。
ということで新しいテスト(R)は、「CAF+とカフェインの効果を比べてみたよ!」って内容になってて参考になりました。
CAF+って初耳だったんですけど、なんでも海外で売られるサプリのひとつで、「記憶力や認知機能の改善に効く!」として売られてるらしい。といっても変わった成分が入ってるわけではなく、
- カフェイン100mg
- ビンポセチン40mg
- チロシン300mg
- ビタミンB12 1mg
- ビタミンB6 20mg
って構成のサプリなんだそうな。どの成分も脳の働きに欠かせない栄養素でして、「これらをカフェインと組み合わせたらさらに凄いのでは?」って発想みたいですね。
実験は健康な成人20人が対象で、CAF+かカフェイン100mgだけを飲んでもらったあと、
- Nバック課題
- ストループ課題
- 数字記号置換テスト
みたいな複数のテストで、脳の働きがどう変わったかをチェックしたらしい。その結果はこんな感じでした。
- カフェインは、CAF+よりもワーキングメモリと反応時間、言語記憶のパフォーマンスを向上させた
- CAF+は主観的な注意力の増加とだけ相関していた
ってことで全体的にはカフェイン単体の圧勝だったみたい。CAF+にも同じ量のカフェインが入ってるのに、なんか不思議っすね
チームいわく、
カフェイン、ビタミンB6、ビンポセチンなど、CAF+にふくまれる全ての成分は、認知機能を向上させることが先行研究で証明されている。それにもかかわらず、すべてを組み合わせたからといって、より大きな向精神作用が得られるとは限らないようだ。
これには多くの理由が考えられる。たとえば、ある成分が別の成分の働きを変えているのかもしれない。カフェインは、それ自体で認知機能のいくつかの側面を改善するに十分だ。
とのこと。参加者が少ないんで断定はできないものの、「余計なことしないで、とりあえずカフェインだけ取ってればいいのでは?」って考え方は個人的にも賛成ですかねぇ。
グリットを高めるには何が大事なのか?問題
グリット大事!みたいな話を過去にも何度か書いております。グリットは「ものごとをコツコツこなす能力」のことで、これが高い人ほど金持ちだったり高い地位についてたりするんですよ。
まぁ心理学の世界では「誠実性と変わらなくないか?」って疑義もあるんすけど、どちらにしても「コツコツやる能力」が大事なのは間違いないんで、個人的にはどっちでもいいやーと思っております。
でもって新たな調査(R)では、「グリットが高い人の特徴は?」ってポイントをチェックしてていい感じでした。
ざっと研究デザインをまとめておくと、
- 251人の学生を集めて、質問紙でみんなのグリットを調べる(「私は簡単にはあきらめない」みたいな文章に同意するかどうかでチェックしてる)
- ついでに、みんながどんな場面でグリットを発揮できてるかも調べる
みたいになってます。つまり研究チームが知りたかったのは、以下のようなポイントです。
- グリットが高い人は、生活のあらゆる場面で忍耐強いのか?
- グリットを高める特性とは、どのようなものなのか?
グリットが高い人ってのは、スポーツでも勉強でもあらゆる場面で忍耐力を発揮できるのか?みたいな疑問っすね。
で、以下に結果です。
- グリットは、その人が情熱を持っている分野において強く発揮される(これは当たり前ですな)
- グリットを高めるためには、「成長マインドセット」「悪しき完璧主義の低下」の2つが効くと思われる
ということで、この結果を言い換えると、
- グリットは生まれついての特性ではなく、あとから伸ばすことができる能力だと思われる
- グリットは情熱のレベルと相関し、ものごとへの情熱を高めるには「成長マインドセット」と「悪しき完璧主義の低下」が大事である
みたいになりましょう。確かに「成長マインドセット」と「完璧主義のコントロール」はどちらもモチベーション改善に欠かせないポイントでして、具体的には、
ってエントリをご参照いただければ幸いです。どうぞよしなにー。