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今週末の小ネタ:プロバイオティクス・トローチの威力、ビタミンD&亜鉛は肌トラブルに効くか?問題

Summary

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

     

 

 

プロバイオティクス・トローチで口の中が健康に?

プロバイオティクス・トローチで歯肉炎や歯周病がやわらぐ?みたいな話(R)が出ておりました。プロバイオティクス・トローチって目新しいアイテムですが、その名のとおり乳酸菌などをトローチ状にして、口のなかの健康を改善してくれるアイテムであります。iHerbでもチュアブルのタブレットが売ってますね。

 

 

腸内と同じく口のなかでも微生物は暮らしてて、彼らが口腔内の健康に大事な役割を果たしているのは有名な話。たとえば、洗口剤や歯磨き粉にプロバイオティクスを添加したら歯肉炎や歯周病がやわらいだってデータもあったりするんですよ。近ごろは「口の健康をおざなりにすると脳がやられる!」みたいな知見も多いので、プロバイオティクスが役立つならまことにありがたいわけです。

 

 

で、新しいテストは42日間のランダム化比較試験で、ドイツ海軍の船員72人に協力をお願いして、

 

  1. ラクトバチルス・ロイテリをふくむトローチを1日2回使う
  2. 微生物がふくまれてないトローチを使う

 

って2つのグループに分けたんだそうな。そのうえで、試験開始から14日目と42日目に、歯ぐきの出血、歯肉の健康レベル、プラークコントロールのレベル、歯周ポケットの深さなどを測定して、口のなかの健康が改善したかみたらしい。

 

 

すると、結果はこんな感じです。

 

  • プロバイオティクス入りのトローチは、14日目と42日目の両方で、プラセボよりも歯ぐきの出血を有意に減少させた
  • 同様に、プラセボグループは、歯肉の健康レベル、プラークコントロール、歯周ポケットの深さなどが全て悪化していたが、プロバイオティクスを使ったグループには改善が見られた

 

とのことで、全体的に「おっ?思ったよりも良い感じでは?」みたいに思ってしまいました。

 

 

まぁ、この研究の残念ポイントとしては、「スウェーデンのBioGaia社からプロバイオティクスのトローチを無料で提供されている」ってとこがあるんで、そこはご注意ください。必ずしも調査結果の信頼性が下がるわけじゃないものの、ちょい眉唾感は出るかなーって感じで。

 

 

 

ビタミンDで湿疹が改善する?

ビタミンDで湿疹がやわらぐかも?みたいな話(R)が出ておりました。もともと「ビタミンD不足って湿疹のリスクと重症度を高めるのでは?」みたいに言われてまして、サプリメントで症状を緩和する可能性はよく指摘されてたんですよね。

 

 

ってことで研究チームは3ヶ月間の二重盲検ランダム化比較試験を行いまして、重度のアトピー性皮膚炎と診断された86人(5~16歳)を集めて、

 

  1. 標準治療(1%ヒドロコルチゾン外用クリーム1日2回)を行いつつ、1日1,600IUのビタミンD3を飲む
  2. 標準治療+プラセボサプリを飲む

 

って感じで、湿疹の重症度に違いが出るかどうかを見てます。子供に1日1,600IUのビタミンD3ってのは、そこそこ多めなレベルですね。

 

 

でもって、湿疹面積と重症度指数(EASI)を使って症状の変化を調べたら、結果は以下のようになりました。

 

  • 試験が終わった段階では、ビタミンD3を飲んだグループはプラセボよりも平均EASIスコアが低く、ベースラインよりも改善が見られた(つまり湿疹の重症度が改善した
  • EASIスコアの変化率は血中のビタミンD濃度の変化と相関していた

 

という感じでして、そこそこ希望が持てる内容になってますね。もちろん湿疹にビタミンDを使う際は医師のアドバイスに従っていただければと思いますが、ビタミンDレベルが症状と関係してる可能性は高そうですねぇ。

 

 

 

ニキビに亜鉛が効く?

最後は「亜鉛がニキビに効くかも?」ってデータ(R)のお話です。と言いますのも、昔から亜鉛不足と皮膚トラブルには関係があることがわかってまして、かねてより「亜鉛サプリは炎症性の皮膚トラブルの治療に使える!」みたいに言われてたんですよ。

 

 

そんなわけで研究チームは、過去に行われた「皮膚トラブルと亜鉛」に関するデータを集めまくって系統的レビューを実行。

 

  • にきび(n=14)
  • 汗腺膿瘍(n=3)
  • アトピー性皮膚炎(n=2)
  • おむつ皮膚炎(n=1)
  • 乾癬(n=1)
  • 酒さ(n=1)

 

といった症状に亜鉛サプリが効果はあるのかって問題について、そこそこ精度の高い知見を出してくれております。22試験のうち、7つがグルコン酸亜鉛(10~90mg/日)を使用、14が硫酸亜鉛(375~1,800mg/日)、残る1つは酸化亜鉛(12mg/日)を使ってたそうな。

 

 

でもって、どんな結論が出たかと言いますと、

 

  • いまんとこの証拠では、ニキビの治療には亜鉛が役立つかもしれないが、この結論はまだ予備的なものでしかない
  • アトピー性皮膚炎、おむつ皮膚炎、乾癬、酒さについては、現在のところ研究が少なすぎて結論は出せない

 

みたいな感じでした。これを見てると、もしかしたらニキビに効くかもだけど、別に積極的に推奨するようなレベルでもないかなーってとこですね。まぁ、亜鉛が大事な点は変わらないので、不足してる方はぜひ補っていただきたいとは思うわけですが。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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