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今週半ばの小ネタ:記憶力を40秒で爆上げ、新型コロナで売れる商品、ゴシップって意味あるの?問題

Summary


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

 

 

40秒のリハーサルで記憶が格段に変わる?

歳を取るごとに長期記憶がボロボロになってる私ですが、サセックス大学の研究(R)では「40秒のリハーサルが超大事!」みたいな話になってておもしろかったです。リハーサルというと「本番前のけいこ」みたいに捉えられそうですが、ここで言うリハーサルは「覚えたいことを何度も唱えること」を意味してますんでご注意ください。

 

 

具体的にどんな実験だったかと言いますと、

 

  1. 参加者に26本のYouTube動画を見てもらう

  2. 一部の動画のみ40秒かけてリハーサルをしてもらう(動画の内容を頭の中で再生したり、声に出したりして実践したとのこと)

  3. 2週間後の記憶をチェックする

 

って感じでして、2週間後にはこんな変化が起きておりました。

 

  • リハーサルをしていない動画はほとんど忘れられていたが、40秒だけリハーサルをした動画の詳細は、多くの人が覚えていた

 

  • 上記のメリットは、頭の中で動画を再生した場合でも、声に出して確認した場合でも同じレベルの効果があった

 

ということで、たった40秒のリハーサルでこれだけの違いが出るならば、やっておいた方がいい気がしますね。

 

 

研究チームいわく、

 

新しい記憶は、定着期間が経過するまでは失われやすい。しかし、今回の研究では、短期間のリハーサルが、複雑で生き生きとした出来事を1〜2週間にわたって記憶する能力に大きな影響を与えることを明らかにした。

 

事故や犯罪の目撃者など、出来事を正確に思い出すことが重要な場面で大きな意味を持つだろう。

 

ってことでして、私も映画を見たあとなどには40秒ぐらいリハーサルをしてみようと思いました。なんせ近ごろは映画を観た後から内容を忘れていくもんで。

 

 

 

 

新型コロナ禍では「地に足がついた商品」が売れる?

新型コロナで人の意識が変わった!みたいな話はよく聞きますけども、ウィーン経済大学などのチームによる研究(R)は、「みんなパンデミックでどんなものが欲しくなったの?」といった問題にフォーカスしてておもしろかったです。

 

 

具体的には、COVID-19パンデミックが起きる前と後で「売れ方が変わったもの」の指標をチェックして、さらには商品社の幸福感なども調べつつ近年の消費の変化を調べてまして、その結果なにがわかったかと言うと、

 

  • 全体的に、パンデミックにより「地に足がついたように感じたい!」というニーズが高まっている

 

  • 地に足がついた商品とは、「場所、人、過去と結びついた商品」のことで、地域に根ざした製品、生産者を特定できる製品、伝統的な製品、幼少期や家族の成長を思い出させるような製品である

 

  • 例えば、ファーマーズマーケット、ハンドカットソープ、職人の手によるパン、ロカボムーブメント、昔から続く食品ブランドへの回帰が確認された

  • 具体的には、2019年から地ビールの消費量が増え、米国の総販売量に占める割合が13.6%となった。ビール全体の販売量は2%減少したにも関わらず、地ビールは4%増加したことになる

 

みたいになってます。ブランドもの!最先端ガジェット!といったフワフワした商品ではなく、全体的に「地に足が着いてる感」が好まれるようになったのではないか、と。パンデミックの不安がこういったニーズを引き起こすのは、なんだかわかりますねー。

 

 

研究チームいわく、

 

私たちは、デジタル化とグローバリゼーションという2つの力によって、社会生活や仕事がますますバーチャル化、高速化、モバイル化し、多くの消費者が自分のことを「根の弱い木」のように感じ、大地から引き離されるような感覚を報告している。

 

マーケターは、場所、人、過去とのつながりを感じられるような商品を提供することで、地に足がついていることを感じたいというニーズに応えることができる。地場産品を強調したり、伝統的な製品デザインを選択するなど、地に足がついた感覚を戦略的に活用していくのも手だ。

 

地に足がついているという感覚は、レジリエンスに関連する自己認識を向上させる。

 

とのこと。こうしてみると、もともと現代人のあいだでは「根無し草」みたいな感覚が強まってたのを、新型コロナが猛プッシュしたような感じなのかもですな。

 

 

実際、今回の研究でも、デジタル化、都市化、地球規模の変化みたいな大きなトレンドの影響を日常的に受けている消費者ほど、「地に足がついていると感じたい!」ってニーズが高かったんだそうな(特に大都市に住んでいる人ほどこの感覚が強い)。これはめちゃくちゃ現代的なテーマなので、なんか商売をしている方は心がけておくと良さそうっすねー。

 

 

 

 

ゴシップはただの無駄話ではない!根源的な意味があるのだ!みたいな話

ゴシップ好き」というと何だか卑しいキャラのようなイメージがありますが、ダートマス大学の新しい研究(R)では「噂話は健全なことだよ!」って結論になってておもしろかったです。ゴシップは決して罪悪ではなく、社会的なつながりや交流をうながし、さらには世界について学ぶチャンスにもなってるんだよ!みたいな話です。

 

 

まず研究のデザインをざっとまとめとくと、チームは「ゴシップ」を再現するために独自のゲームを考案してます。

 

  1. 数人の参加者を6人のグループに分け、オンラインで金銭をやりとりするゲームを10ラウンドやってもらう

  2. プレイヤーはラウンドごとに10ドルを与えられ、そのお金を貯金するか、グループファンドに投資するかを選ぶことができ、そのファンドは150%の倍率で参加者に均等に分配される

  3. ゲームの際に一部の情報は制限されており、参加者は自分のグループの他の数人のプレイヤーの行動しか見ることができない

  4. プレイヤーはグループ内の仲間と個人的に会話することができ、他の出場者の行動を伝えることができる

 

って感じでして、ざっくり言えば「全体のために協力するか?利己的に得するか?」って状況を作って、その中で人間の対話がどう変化するかをチェックしたわけですね。

 

 

で、ゲームの中でどんな行動が確認されたかと言いますと、

 

  • プレイヤーが得られる情報が少ないときは、自然とチームメイト同士の噂話が多くなる

  • 多くの参加者はパートナーに関する噂をを頼りに情報収集をしていた
  • 多く話をした人ほどグループ内で緊密な絆を築き、ゲームの最後に大きなつながりを感じていた

 

とのことで、他者の行動に関する噂話が増えるほどグループの仲は深まり、信頼感は増していくんだ、と。

 

 

研究者いわく、

 

ゴシップは誤解されがちだが、実は複雑なコミュニケーションの形態だと考えられる。ゴシップはネガティブな意味を超えて、社会的・実質的なつながりの手段となり得る。

 

他人と情報を交換することで、ゴシップは人間関係を形成する手段となるし、信頼と社会的な結びつきを促進し、さらにコミュニケーションを重ねることで強化されていく。ゴシップが有用なのは、他人の経験を通して学ぶことができ、その過程でお互いに親しくなることができるからだ。

 

とのこと。ゴシップを単なる無駄話ではなく、実際には「グループ間の絆を深めたい!」という根本的な欲求にもとづく基本的なツールなんじゃないの?みたいな考え方ですね。いかにもありそうな話ですな。

 

 

まー、とはいえ、現代ではこの欲求がデマの拡散や要らぬケンカの火種になってたりもするわけで、いちがいに善玉とは言えないのも事実ですからねぇ。「内と外を分割して欲望を掻き立てる機能」ではなく、ちゃんとグループの信頼感アップに使えれば、ゴシップもすばらしいんでしょうが……。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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