行動経済学の目標達成テク「コミットメント・デバイス 」を正しく使うためのポイント
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以前に取り上げた「変わる方法(How to Change)」って本は、有名行動科学者のケイティ・ミルクマン先生が「いかに前向きな変化を起こすか?」をまとめた有用な1冊でありました。
前回は「ゲーミフィケーション」についてチェックしましたが、その続きで今回は「コミットメント・デバイス 」について触れたパートをメモしておきます。
コミットメント・デバイス ってのは、「より大きな目標のために自分の自由を奪う仕組み」のことで、
- レポートを仕上げるために「3日後の締め切り」を設定する
- 陶器の貯金箱を使って、中のお金を取り出したいときに割らなければならないようにしておく
- 小さなお皿を使って食事の量を減らす
- 「Moment」のようなアプリでスマホの使用を減らす
といった作業を意味してます。ダン・アリエリー先生の本などをお読みの方であれば、おなじみの発想ですよね。
本書でもダン・アリエリー先生の実験が紹介されてまして、99人のMIT学生を対象にした調査では、学生の半分に「自分で論文の締め切りを決めてねー。でも、設定した締め切りに間に合わなかったら、日の数だけ成績を下げるから!」と伝えたところ、レポートの提出率が段違いに改善したんだそうな。やはり「事前に自分で自分を縛っておく」ってやり方は有効性が高そうっすね。
で、このコミットメント・デバイスをうまく使う方法として、ミルクマン先生は以下のような提案をしておられます。
- コミットメント・デバイスの方法はいろいろあるが、なかでも推奨されているのは「キャッシュ・コミットメント・デバイス」。要は、計画を守れなかったらお金を払わなければならないというもの
- キャッシュ・コミットメント・デバイスを実践するには、明確な目標を設定し、その進捗状況を正確に把握してくれる人(または技術)を選び、成功しなかった場合には第三者にお金を没収される仕組みを作っておくだけでOK
- コミットメントの賭け金は数100円から可能だが、当然ながら賭け金が大きいほど成功率は高くなる。過去の事例では、ニック・ウィンターという起業家が、「3ヵ月で本を書いてスカイダイビングをしなければ、1万4,000ドルもの莫大な罰金を支払う」と決めたところ、見事に出版までこぎつけることができた
- 2,000人の喫煙者を対象にしたある研究では、キャッシュ・コミットメント・デバイス(6カ月後にニコチン尿検査に合格した場合にのみ預けたお金を回収できる)を利用したところ、30%が禁煙に成功した
- 同様のキャッシュ・コミットメントを使うことで、ジムに通う人の運動量を増やしたり、ダイエットをする人の体重を減らしたり、家族がより健康的な食料品を購入するのに役立つことが示されている
- キャッシュ・コミットメント・デバイスの最大の問題点は、多くの人たちが「そんな作戦が本当に効くのか?」と疑いを持ちやすい点にある。大半の人たちは、自分で自分に罰金を課すことに耐えられないか、自分は意志の力で問題を克服できると楽観的に考えているかのどちらかである
- しかし、もしキャッシュ・コミットメント・デバイスぐらいハードな作戦が嫌だった場合は、ミルクマン博士が「ソフトコミットメント」と呼ぶ手法を使ってみても良い。これは「目標の達成に失敗したときに心理的なコストを支払うだけの誓い」を意味しており、例えばロサンゼルスのクリニックでは、医師が「抗生物質を無闇に処方しないようにすることを約束する」と書いた紙を診察室に貼っておいたところ、不適切な抗生物質の処方が対照群に比べて約3分の1になった
- このように、自分で目標を書いた誓約書に署名しておくのも、ソフトなコミットメントとしての機能を持つ。ただし、これは罪悪感や不快感をコミットメントの起爆剤にしているので、当然ながらキャッシュ・コミットメントよりは効果が落ちる
- その他、ソフトコミットメントの手法としては、「来週までに500g減らす」や「毎週4時間だけボランティアする」のように、「達成可能な目標をできるだけ細かく設定する」といったやり方も考えられる
ってことで、いろいろ書いてきましたが、なんだかんだで「どんなことにも罰金を定めるのが最強!」って結論に落ち着きそうっすね。確かに、適当な友人に「半年後までに◯◯に成功しなかったら1万円あげます!」と言っておくだけなので、実践も楽ですしね(実際にやろうとすると心理的な抵抗は結構ありますが……)。