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他人とのコミュニケーションがうまくいかない!を解決する4つのポイント#1「スキーマ探し」

 

 

対人問題ワークブック(The Interpersonal Problems: Act to End Painful Relationship Patterns )」って本を読みました。著者のマシュ−・マッケイ先生は「弁証法的行動療法」で有名な人で、日本だと「弁証法的行動療法 実践トレーニングブック」で有名な方ですね(これも良い本なのでおすすめ)。

 

 

で、本書はおもにACTの考え方を対人関係のトラブルに活かす方法をまとめたものなんですが、取り扱われている内容が「無(最高の状態)」に近いところがありまして、「そうですよねー」とうなずくことしきりでした。

 

 

ACTってのは「第三世代の認知行動療法」と呼ばれるメンタル改善法のひとつで、マッケイ先生いわく、

 

10週間のACTプロトコルの無作為化比較試験では、対人関係問題目録(IIP-64)において、対人関係の問題行動が有意に減少(Cohen’s D = 1.23)することが示された。

 

だそうです。IIP-64は「人間関係が苦手なんだよなー」って人の問題点を探るために使われる質問紙で、他人とうまく付き合えない人のパターンを、以下のように分類してます。

 

  • 横柄で支配的
  • 自己中心的
  • 冷淡でよそよそしい
  • 引っ込み思案
  • 自己主張ができない
  • 周りに合わせすぎる
  • 自犠牲的
  • おせっかいで要求が多い

 

確かにどれも対人関係のトラブルに結びつきそうな要素ばかりでして、私も思い当たるところは多々あるわけです(引っ込み思案とか)。

 

 

また、Cohen’s D = 1.23って数値はかなり良い結果でして、まだ研究例が少ないとはいえ、対人関係にお悩みの方にはかなり希望が持てる話ではないかと。

 

 

でもって、マッケイ先生は、人間関係がうまく行かない理由として「人間関係のスキーマ」を原因にあげております。スキーマってのは、「無(最高の状態)」の”悪法”に近い概念で、「自分自身や他人について無意識のうちに抱いている中核的な信念」ぐらいの意味っすね。

 

 

たとえば、他人と会話をしていると、ときに頭の中でこんな声が聞こえることがあるじゃないすか。

 

  • この人は信じられないな……
  • この人を喜ばせないと……
  • うわー、全然相手から気にされてないな……

 

これらの言葉が事実かどうかはさておき、いずれも脳内で変なプログラムが動いてるようなもの。人間のコミュニケーションを左右しているにも関わらず、たいていの人はその事実に気づいてないんだってことですね。いわば脳内マルウェアですな。

 

 

では、具体的にどうすりゃいいのかってことで、マッケイ先生が推奨している手法を見てみましょうー。

 

 

 

ポイント1. スキーマを発見する

先述のとおり、スキーマってのは成長の過程でを身につけるもので、スキーマが備わった当時は問題の対処に役立っていたのに、いまでは社会関係に問題が起こす原因になってしまうわけですね。

 

 

マッケイ先生いわく、

 

スキーマってのは、あなたの行動だけでなく、他人の行動をどう解釈するかにも影響する。あなたは自分のスキーマに照らして他人を見るので、自分の中核的信念に反するものはフィルターにかけてしまう。

 

スキーマは深く刻み込まれているうえに、世界を理解するのに役立つので、根強く残り続ける。

 

とのこと。スキーマは自分の行動だけでなく、他人の行動の動機の解釈も左右するんで、かなり対策が大変なんだよーって感じですね。

 

 

たとえば、子供のころに「弟の世話ばかりしていて自分の趣味に費やす時間がなかった」って体験をしたら、自分の脳内に「自分を犠牲にして他人を喜ばせるのが真実だ」ってスキーマがこびりついて、大人になっても自分の楽しみを犠牲にし続けちゃうわけっすね。具体的なスキーマのパターンについては「無(最高の状態)」の「悪法」を見ていただくとして、なんとも難しい問題でございます。

 

 

さらに悪いことに、スキーマは自己増殖する傾向がありまして、特定のスキーマを頻繁に使えば使うほど問題はこじれていきがちなんですよね。うーん、怖い。

 


ということで、まずは自分のスキーマに気づくのが最初の一歩。具体的にどうするかについて、マッケイ先生はこんなことを言っておられます。

 

最近のコミュニケーションのなかで、あなたがネガティブな感情を経験した状況を思い返してください。

 

その記憶を最初から最後まで映画のように再現し、あなたが言ったこと、聞いたこと、あなたがしたことをすべて脳内にイメージしましょう。

 

このシーンで、あなたは恐れていますか? この場面で、相手はあなたをどのように見ていますか? このシーンで、あなたは自分自身について何を感じますか? 恥ずかしさ、照れ、緊張、恐怖、苛立ち、怒り、恥、罪悪感など、そのとき抱いたのと同じ感情を自分自身で感じ直してください。

 

自分が「あのコミュニケーションはうまくいかなかったなー」と思ったら、それはスキーマが頭をもたげているサイン。出てくるスキーマの種類には一定のパターンがあるので、まずは自分のネガティブな体験を掘り下げて、特定のパターンがないかどうかを調べるのが重要なんですよ。

 

 

こういうパターンを掘っていくと、

 

  • 自分は批判されたと思いやすい
  • からかわれたと感じやすい
  • 圧力をかけられたと感じやすい
  • 無視されたと思いやすい
  • 評価されなかったと考えやすい

 

みたいに特定の反応が浮かび上がってきますんで、この作業をくり返して、自分なりのコミュ障パターンがわかってくるんじゃないかと。私の場合は、威圧的な人とかマウンティング系の人と話すと急激に気弱になる傾向がありまして、いまも会話中に「ああ、またいつものあのスキーマが出てるなな……」とか思ったりしています。

 

 

とか言ってたら、そこそこの長文になりましたんで、今回はこのへんで。次回は、このスキーマ問題に対処する方法を見ていきましょうー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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