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どんな目標でも「やり遂げる」にはどうすりゃいいの?をシカゴ大学の先生が語っておられます#1「目標のコストよりもベネフィット」

 
 

やり遂げる(Get It Done)」って本を読みました。著者のアイェレット・フィッシュバッハ先生は存じ上げなかったんですが、シカゴ大学で行動科学の教授をやってる先生らしい。

 

 

本書はタイトルのとおり「モチベーションを維持して目標を達成する方法」について、近年の行動科学をベースに手際よくまとめてくれてまして勉強になりました。「明日の幸せを科学する」のダニエル・ギルバート先生や「THINK AGAIN」のアダム・グラント先生などのそうそうたるメンツが絶賛してますね。

 

 

では、フィッシュバッハ先生がどんなことを仰っているのか、ざっくり見てみましょうー。

 

 

 

 

ポイント1. 目標のフレーミングが超大事

 

目標のコストよりもベネフィットに意識する

  • フィッシュバックは、まず「目標のフレーミング」の威力を強調している。これは、「目標のコストよりもベネフィットに注目する」って考え方で、そこに至るまでにかかる苦労やコストよりも、達成したい結果や成果に目を向けることを意味する。

 

 

  • 「目標のフレーミング」の事例としては、「司法試験の勉強をする」はコストだが「弁護士になる」はベネフィット、「求人に応募する」はコストだが「営業職に就く」はベネフィット、「塩分を控える」はコストだが「病気リスクを下げる」はベネフィット、「テレビを見るのをやめる」はコストだが「家族と過ごす時間を増やす」はベネフィット。

 

 

  • シカゴ大学のMBA学生を対象にした調査では、「著名な経済学者のサイン入り書籍(学生にとっては超嬉しいアイテム)」と「同じサイン本をトートバッグに入れたもの」の2種類をオークションサイトに出品し、好きなように落札してもらった。その結果、サイン本の平均落札価格は23ドルだったが、トートバッグに入ったサイン本の平均落札価格は12ドルと、ほぼ半額になった。

    このような現象が起きたのは、学生たちが手段への投資をより嫌ったからだと考えられる。通常、トートバッグは無料で本を持ち運ぶための手段というイメージがあるので、「本が欲しいだけなのにトートに金を出したくないなぁ……」という気分が生まれ、それによって逆に額が低下してしまった。このように、目標のどこに意識が向くかによって、個々人のモチベーションは大きく変わる。

 

 

  • ただし、著者は決して「目標を曖昧にせよ!」とか「具体的な手段は無視せよ!」と言っているわけではない。事実、目標は具体的でないと行動に移せなくなってしまうことは複数の研究であきらかにされている。しかし、一方で目標のベネフィットを思い起こすことで、モチベーションを保つことができるのも事実である。

 

 

ベネフィット意識を実践するには?

  • 「ベネフィット意識」を実践するには、自分に以下のように問いかけてみるとよい。

    • 目標を達成した後、何が起こると考えられるだろうか?

    • なぜ私はこの目標を追い求めているのだろうか?

    • 私が達成したい結果や成果は何なのか?

    • この目標を達成することで、私の生活がどのように改善されるか、あるいは私にどのような利益がもたらされるのか?

    • この目標を達成するために、私を最も動機づけるもの、興奮させるものは何だろうか?

 

  • このように、目標達成までの道のりでは、あまり細かいことにとらわれない方が吉。目的地に到達するまでの努力ではなく、到達したときの気持ちよさに焦点を当てることで、モチベーションを再び高めることができる。

 

 

 

ポイント2. 「やる目標」と「やらない」目標の区別が大事

 

目標には「やる目標」と「やらない目標」の2種類がある

  • 目標には、「やる目標」と「やらない目標」の2種類がある。このふたつは目標達成への影響が大きく異なるので、この区別をするのが非常に重要になる。

 

 

  • 「やる」目標は「アプローチ目標」とも呼ばれ、あなたが達成したいポジティブな結果に向かっていく状態を表す。例えば「健康的な食事をする」「教材を学んでテストに合格する」「不安をコントロールするテクニックを学ぶ」といった目標の立て方を意味する。

    基本的には、「やる目標」の方が望む状態に近づけるので、長期的に見るとより刺激的でモチベーションが上がりやすい

 

 

  • 一方で「やらない目標」は回避目標とも呼ばれ、ネガティブな結果や状態を避けるタイプの目標を表す。例えば「ジャンクフードを食べるのをやめる」「テストに落ちないようにする」「心配するのをやめて、考えすぎないようにする」といった目標の立て方を意味する。

    研究によると、「やらない目標」は「やる目標」よりもずっと継続するのが難しいことが分かっている。なぜなら「やらない目標」は、望ましくない状態から遠ざかることを目指すので、どうしても面倒に感じられてしまい、長期的な動機付けにならないからである。

    また、人間の中には、何かをするなと言われると、まさにそれをしたくなる心理があるため逆効果になりやすい。人間の脳は「何かをい確認する」という行為をするだけで、その思考に意識が向かってしまう。

 

 

目的によって目標のフレーミングを変えるのが大事

  • ただし、「やらない目標」は、危害を防いだり、すぐに危険から逃れねばならない状況では、短期的な緊急性を作り出すことができるメリットもある。そのため、目標を設定するときは、意図的かつ戦略的に行わねばならない。


    例えば、仕事に行くときは「自分はプロジェクトを成功させたいのか? それとも失敗しないことを一番の目標にしているのか?」を考える。新しい人に会うときは「自分は社会的なつながりを求める体のか? それとも孤独にならないようにすることが主な目的なのか?」を考える。

    長期的に目標を持ち続けたいのであれば「やる目標」の視点から目標をフレーミングし、短期的なモチベーションを上げたいなら「やらない目標」の視点から目標をフレーミングするのが良い。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。