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今週末の小ネタ:つまらなそうな人は人生のダメージがデカい、セレンが脳に良い、国民性ってあるの?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

    

 

つまらなそうなステレオタイプで印象が死ぬ

つまらなそうな人は他人からの印象が超悪いぞ!」ってデータ(R)がおもしろかったのでメモ。

 

 

エセックス大学の調査で、まずはオンライン参加者に「退屈な人ってどんな人だと思います?」や「あなたが退屈だと思う職業や趣味は?」ってのを尋ねたんだそうな。その後、みんなの回答を分類したところ、多くの人が「退屈だな」とか「つまらないな」と思う人たちのタイプはこんな感じになりました。

 

  • ユーモアのセンスがない
  • 自分の意見がない
  • テレビばっか見てる
  • 寝てばっかり
  • 何らかのコレクター
  • 銀行や金融業
  • データ分析
  • 会計
  • 税務・保険
  • 宗教家

 

実際にこれらの職業についてる方からすれば「うるせえな!」って感じでしょうが、全体的にはやはり数字を主に扱うような仕事は「つまんなそうだなー」って印象を与えやすいみたいっすね。これは日本でも当てはまりそうな感じはしますな。

 

 

でもって、さらに研究チームは、参加者たちに3パターンの人間のプロフィールを読んでもらってます。具体的には、

 

  1. 上の調査で「退屈な人のステレオタイプ」と判断された特徴、趣味、仕事を持っている人
  2. 上の調査で「退屈ではない人のステレオタイプ」と判断された特徴、趣味、仕事を持っている人
  3. 上の2つの人の中間

 

といった種類に分類した上で、それぞれの人物に感じた印象を答えてもらったんだそうな。その結果、どんなことがわかったかと言いますと、

 

  • 退屈度が高いと思われた人と、退屈度が中程度の人は、退屈度が低い人に比べて「この人は温かみがなくて能力も低い!」とみなされやすかった

 

  • 退屈度が高いと思われた人ほど「一緒に時間を過ごしたいくない!」「一緒に過ごすなら金をもらう!」と思われやすかった

 

だったそうです。ご存じの方も多いでしょうが、この実験で確認された「温かみ」と「能力」ってのは、私たちが他人を評価するときに使う2大要素であります。たいていの人は「温かみ」と「能力」という2つの軸を中心に他人を判断し、この2つがどちらも高い人ほど好感度は上がるし、カリスマ性が高いと思われやすくなったりするんですな。

 

 

つまり、この実験が正しいとすれば、たんに見た目だけで「つまらなそう」と思われた時点で、私たちは「能力が低い嫌なやつだ!」と思われるかもしれないってことっすね。ステレオタイプ怖い!

 

 

まー、あくまで米国または英国の参加者を対象にしたテストなんで、日本でも同じステレオタイプが当てはまるかは謎だし、個人によっても判断基準は違いそうですが(読書が嫌いな人は読書家をつまらないと思うかもしれない)、「つまらなそうに見える=能力と性格も低く見られる」ってのは本邦でも確認されそうな気はしますね。

 

 

 

必須ミネラルのセレンで運動に似た効果が得られる説

あくまでもまだマウス実験の段階なので、話半分に読んでいただければと思いますが「セレンを飲むと運動に似た効果を得られる……かも?」って話(R)が出ておりました。セレンはご存じ必須ミネラルの一種で、アンチエイジングの世界では「抗酸化パワーがめちゃくちゃ強い物質」として知られてたりします。

 

 

さらに、セレンとセレンをふくむタンパク質は、脳が酸化ストレスから身を守るためにかっている抗酸化物質として知られており、多くの研究で、血中のセレン濃度が低下すると認知機能も低下しやすいと報告されてたりするんですよ。

 

 

で、この文献がどんなことを言ってるかを簡単にまとめると、

 

  • マウスにセレンが豊富な食事を食べさせたら、脳の神経新生が効果的に回復した。ついでに、加齢や海馬の損傷に伴う認知機能の低下も回復させることができた

 

  • これを考えると、運動で脳の機能がアップするのは、血中のセレン濃度の変化によるものが大きいのかもしれない(マウスに運動をさせると、血液中ののSEPP1濃度が有意に上昇し、脳内のセレン濃度が維持される)

 

みたいな感じです。もしかしたら、セレンには運動の効果に近いメリットが得られる可能性があるんじゃないか、と。

 

 

くり返しになりますが、あくまでマウス実験の話ですし、セレンのサプリを高用量(900mcg/日以上)で摂取した場合は毒性の懸念があり、脱毛、爪の異常、皮膚炎、末梢神経障害、吐き気、下痢、疲労、イライラなどが起きる可能性もありますんで、安易にサプリに手を出そうとは思わない方がよろしいかとは思います(そもそも日本人は大半がセレンは足りてるんで)。

 

 

ただ、普段からセレンが豊富な食品を心がけておくのは悪いことではありませんで、サーモン、マグロ、、卵、鶏肉、カッテージチーズ、マッシュルームあたりを意識して食べておくと良いかもしれません。

 

 

 

日本人は真面目!とかイタリア人は情熱的!みたいなのって正しいの?

国のステレオタイプってあるじゃないすか。「日本人は時間に正確」とか「イタリア人は情熱的」とか「フランス人はプライドが高い」みたいなやつです。

 

 

正直、個人的にはあんま国のステレオタイプを感じたことがなく、「どの国でも良い人と悪い人が同じぐらいの割合でいるなぁ……」みたいに思うことが多いんですけど、果たして「そのようなステレオタイプはどれほど正確なのか?」ってのを調べたデータ(R)が出ておりました。

 

 

具体的にどんな調査なのかと言いますと、

 

  1. 49カ国から3989人に協力してもらう

  2. みんなのビッグファイブ(精度が高い性格テスト)を調べる

  3. 国ごとの違いをチェックする

 

みたいになります。おそらく、このタイプのテストとしては最大規模でして、現時点ではそれなりに信頼できる内容になってるんじゃないかと。

 

 

で、その結論をざっくりとまとめると、

 

  • 各国のステレオタイプと実際の人々の性格特性との間には対応関係がない!

 

だったそうです。うーん、やはり私の個人的な印象は正しかったのか……。

 

 

ちなみに、さらに具体的なポイントも掘り下げておくと、

 

  • 日本人は、世界的に「神経質で内向的で閉鎖的だ!」みたいなステレオタイプを持たれることが多いが、実際の日本人は、神経質、外向性、開放性、協調性、誠実性といったすべての特性において、世界の平均スコアとそんなに変わらなかった

 

  • 他の国でも同じようなもので、「カナダ人は善人が多い!」とか「アメリカ人はわがままだ!」みたいなステレオタイプがあるが、両国民の好感度スコアの平均は、やっぱり世界平均に近いものだった

 

  • 逆に、一部ではステレオタイプとは異なる結果も出ていて、日本人の誠実性(まじめで勤勉)は世界でも最低レベルだった。さらに、フランス人は「いけすかない」と言われがちだが、実際の好感度スコアはかなり高かった

 

ということで、基本的には「国民性」みたいなもんは当てにならないと考えた方がよさそうであります。心理的な特性ってのは、世界中でほぼ同じように分布していると考えた方がいいんでしょうな。これって日本国内の「県民性」とかも同じなんだろうか……。

 

 

 

 

 

 

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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