2022年12月に読んでおもしろかった6冊の本と1本の映画
月イチペースでやっております、「今月おもしろかった本」の2022年12月版です。今月は読めた25冊ぐらいの本を読みまして、そのなかからおもしろかったもののご紹介です。ここで取り上げる以外の本や映画については、TwitterやInstagramのほうでも紹介してますんで、合わせてどうぞー。
人体の全貌を知れ
「美しき免疫の力」がおもしろかったダニエル・M・デイヴィス先生の最新刊。技術の進化によって、いかに人体の謎が解き明かされてきたのかを描いた本で、GFP、ゲノム編集、マイクロバイオームなどの先端の生命科学をわかりやすく教えてくれるうえに、その過程で起きた熱い人間ドラマの描写もうまく、エリック・ベツィグ博士のノーベル賞スピーチは感動の一言。生命科学に興味がない人えも、プロジェクトX的な作品が好きであれば、お楽しみいただけるでしょう。
「新型うつ」とは何だったのか
「ネガティブ・マインド」で有名な坂本真士先生の近著。とにかく謎が多い「新型うつ」をちゃんと定義し、その内実を定量的に分析し、この問題が起きやすい人の特徴まで特定してくれるナイスな本でした。
ざっくり言えば、「人間関係に過敏な人」と「自己を優先する志向が強い人」の両方をあわせもった人ほど、新型うつ病になりやすいようでして、「それ、わしのことやないかい……」とか思いましたねぇ。
マスメディアとは何か-「影響力」の正体
「マスコミってどこまで影響あるの?」という誰でも一度は抱いたことがある疑問について、できる限りのデータをもとに真正面から分析した本。その結論をざっくり言えば、「みんなが言うほど影響ないよ」って感じでして、マスメディアの影響力を過度に憂える人には良い解毒剤になるでしょう。
また、後半ではネットの影響についても触れられていて、こちらの結論も「みんなが言うほど影響ないよ」って感じ。これまた、ネットの問題を過大にとらえがちな現代人には、役立つ知見じゃないかと思った次第です。おすすめ。
私たちはどう学んでいるのか: 創発から見る認知の変化
「人間の能力ってどうやって伸びるの?」「知識ってどうやって身につくの?」という問題を、認知科学の視点から解剖していく一冊。その知見はかなり複雑なんですが、「非認知能力なんてないんだよ!」とか「そもそも『◯◯力』とか何言ってんの?」と、世俗的な学習観を撫で切りにしていく“鈴木節”がキレッキレで、非常に楽しめました。
そこで提示される結論は、すぐに日常の勉強に活かせるような内容じゃないんですけど、本書の知識を知っておくだけでも、これからスキルアップを目指す際の心がまえが変わってくるはずであります。
政治家の専門予測
「超予測力」で有名なフィリップ・E・テトロック先生が、「専門家の予測って意味あるの?」という疑問について、政治のフィールドにしぼって調べぬいた本。その結論は「超予測力」と同じく「専門家の意見は当てにならん!」ってことになるんですけど、そのうえで「それでも精度が高い専門家はどこが違うのか?」を定量分析してくれてて参考になります。
かなり専門的な本なので、手軽に予測力アップのポイントを知りたい方は「超予測力」を手にとったほうが良いでしょうが、実は本書のほうが日常的に実践しやすい知見が披露されてまして、そこは悩んでしまうとこですね(なにせ高価な本だし)。
絵巻物に見る日本庶民生活誌
宮本常一先生の名著。過去の絵巻物から「昔の日本人ってどういう暮らしをしてたの?」を深堀りしていく本で、ゴシップが大好きだったり、祭りにおおはしゃぎしたりと、現代とあんま変わらない過去の日本人の可愛らしさが浮かび上がってきて楽しいですねー。
「こんなところに注目するのか!」という宮本先生の視点もおもしろく、「アートをいかに鑑賞するか?」みたいなとこに関心がある人にも参考になるところが大きい一冊じゃないでしょうか。
THE FIRST SLAM DUNK
わたくし、スラムダンクに思い入れがなく、原作のストーリーもキャラもほぼ忘れていた人間なのですが、それでもいざ見始めたら2時間があっという間。とにかく臨場感ある試合シーンと音楽の相乗効果がすばらしく、個人的には、1980年代のMTV映画(「トップガン」とか「フラッシュダンス」とか)の最新アップデート晩のような印象を受けました。
映画としてはかなり変な構成の作品なんですけど、NBAの名試合を見ても「速くてよくわからんなー」ぐらいの感想しかなかった私に、最後には「バスケおもしろいな!」と思せたんだからすごいもんです。原作未読の方にもおすすめ。