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コーネル大学「頑固な人の心を変えたければ、6つのポイントを意識しようぜ!」


 

「火事と喧嘩はネットの花」などと申しますとおり、なにかと争いが耐えないのがSNSでございます。そんな状況では、「ネットバトルで相手の意見を変えるにはどうすればいいの?」みたいなとこが気になりますが、コーネル大学などのチームが、おもしろい調査(R)をしてくれてたので、内容を簡単にメモっておきましょう。

 

 

この調査は「ChangeMyViewと」呼ばれるRedditのコミュニティを利用したもの。Redditはアメリカの掲示板型SNSで、あらゆるトピックに対してみんなで議論ができる場所として知られております。Redditにはモデレーターがいるし、誹謗中傷な投稿は表示されなくなっていくので、5ちゃんねるみたいに治安は悪くないですが。

 

 

で、このプラットフォームには、ちょっとしたルールがあって、

 

  1. ユーザーは自分の意見や理由を提示し、他の人にそれに対する論争を呼びかけられる
  2. そこで起きた議論によって元の見解が変わったときは、それを認める

 

って感じで設計されているんですよ。そのため、ここで起きた議論のてんまつをチェックすれば、「人間はどんな時に自分の意見を変えやすいのか?」をチェックできるわけですね。もちろん、このような場所に集まる人は、通常よりも知的好奇心が強くて柔軟性があるはずですが、この研究では、20万人強のアクティブメンバーをモニタリングしてまして、そこから得られる知見は貴重なものだと申せましょう。

 

 

でもって、分析の結果、「人間の意見を変えるポイント」は、以下のようになりました。

 

  1. どれだけ多くの人に反論されるか:元の投稿者の見解に大量の人から反論が集まるほど、その人が自分の意見を変更する可能性は上がる。これは「同調圧力が働くから」ってわけでなくて、いろんな人からの反応が集まると、より多様な見解が出てくるので、その結果として、多様な反論のうちのひとつが刺さる可能性が高まるってことらしい。要するに、人を説得したければ、とにかくいろんな意見をぶつけるのが大事ってことですな。

    ただし、おもしろいもんで、議論の時間の長さは、相手が意見を変えるかどうかとは関係がなかったとのこと。まぁ気に食わない意見を長々と聞かされても、意見を変えようとは思わないですもんね。



  2. 豊富なボキャブラリーを使えるか:相手の説得には文体の影響も大きく、「エモい言葉」「落ち着いた言葉」「いろんなパターンの単語」を使った人のほうが、相手を説得する確率が高かったそうな。一方で、「短くて鋭いコメント」にはまったく効果がなかったとのことで、そう考えると、よくツイッターで見かける「とんちの効いた短い一言で刺す!」みたいなやり方は悪手ってことなんでしょうな。

    また、相手の投稿と同じような言葉づかいをすることも、説得には非常に効果的だったとのこと。相手と似た言葉づかいをすれば、仲間意識をアピールできるからでしょうかね。



  3. ヘッジングを使うかどうか:「ヘッジング」ってのは断定を避けるものの言い方で、「このケースに限っていうならば……」とか「あくまで一意見ですが……」みたいなフレーズを使うやり方です。これによって口調が柔らかくなり、主張の激しさも削り取られるので、自分の意見を受け入れてもらいやすくなるとのこと。この点においても、よくツイッターで見かける「断定口調でバッサリ」みたいなやり方は、やっぱ逆効果だと申せましょう。



  4. 証拠を提示するかどうか:自分の意見を補強する証拠として、多数のURLを付けて回答した場合も、相手を説得する確率が上がったとのこと。なかでも「.com」のリンクは最も影響力が大きく、続いて「.edu」と「PDFのリンク」も非常に効果的だったとのこと。社会的証明や権威に訴える論証は効果が高いってことで、これは当然ですね。



  5. 事例を使うかどうか:効果的な説得の大半は、具体的な事例を提示していたとのこと。説得に成功したコメントには、必ずと言っていいほど「たとえば……」 や「具体例を挙げると……」というキーワードやフレーズが含まれていたそうな。事例で説得力が高まるのも、わかりやすい話ですね。



  6. 感情を煽り立てるかどうか:テキスト分析ツールを使ったところ、説得力のあるコメントには、ポジティブでもネガティブでもどちらでもいいので、感情を呼び起こすようなメッセージは全体的に説得力があったとのこと(「事故から助かった子ども」のエピソードを紹介したり、「犠牲になった動物」の話を持ち出したりとか)。もっとも、ネガティブな感情を煽る言葉のほうが、説得力のある反論にはなりやすい傾向があったそうな。

 

ってことで、個人的に気になったポイントを紹介してみました。このポイントは、おそらくリアルで誰かを説得したいときにも使えるはずでして、「頑固な人の心を変えたい!」ってときに意識してみるとよいでしょう。個人的にヘッジングや証拠の提示は常用してるので、感情に訴える論証はもうちょい意識したいとこっすね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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