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【質問】キシリトールってどれぐらい虫歯予防に効くものなんですか?


こんなご質問をいただきました。

 

基本的な質問で恐縮ですが、キシリトールってどれぐらいの科学的な証拠があるんでしょうか? 砂糖の代わりに使えるけど、虫歯を予防できるとか言われていますが、どこまで効果があるのか気になりました。

 

世の中にはキシリトールを配合したガムなどが売られているけど、これにはどれぐらいの効果があるのか、と。確かに、キシリトールってよく聞く成分ですが、具体的なデータがどれぐらいあるのかは気になるところですねー。

 

 

で、まず基本的なところからいくと、「キシリトールが虫歯予防に良い!」って話になったのは、いくつかの試験で、「キシリトールが口のなかの細菌を減らすよー」って報告されたからです。ここには、それなりのデータがあるので、おそらくキシリトールは虫歯予防になるんだろうなーという印象ですね。

 

 

ただし、あくまで私見ですけど、キシリトールの研究には問題もありまして、

 

  • キシリトールの効果を示した研究の多くでは、めっちゃ大量のキシリトール(1日あたり約2~15グラム)を使っている。これは、ほとんどのキシリトール製品に含まれる分量を超えているため、試験と同じレベルのキシリトールを私たちが摂取するのは難しい

 

  • また、有効性を示した研究の多くは、キシリトール入りのチューインガムを調査したものだったりする。ガムを噛むと唾液の分泌が増えるので、そのせいで虫歯の予防効果が出ている可能性も高い。ゆえに、キシリトールが入った歯磨き粉などでも同じ効果を得られるのかは不明(R)。

 

ってあたりが、キシリトールの実力を判断しづらいものを感じております。ここらへんをふまえたうえで、2020年には、米国小児歯科学会も「キシリトールが虫歯を本当に予防するかどうかは結論を出せない」と結論してまして、個人的にも「まぁそうですよねぇ……」って印象でした(R)。

 

 

というわけで、キシリトールの虫歯を予防する効果は判断が難しいんですが、もうひとつ「キシリトールのドライマウス改善効果」も見ておきましょう。ドライマウスで唾液の機能が低下している人には、キシリトールが有効な場合があるんですよ(R)。

 

 

というのも、キシリトールは、味覚の受容体を刺激して唾液の分泌量を増やす可能性が指摘されてるんですね。事実、「キシリメルツ」って商品(口の中に貼り付けてキシリトール放出するタブレット)などは、使ってから40分後の唾液量が2倍以上に増え、ドライマウス症状の改善が見られたんだそうな。めっちゃ小規模な試験(R)なので、ドライマウスにはキシリトールだ!とは言えないものの、お困りの方は試してみても良いのではないでしょうか。

 

 

また、米国小児歯科学会が「ドライマウスの症状を一時的に緩和するのに役立つ」と認めた商品として、「バイオティーン  ドライマウス オーラルリンス」ってのがあります。こちらは、グリセリンで唾液の粘度を高めつつ、キシリトール、ソルビトールなどで唾液を増やす構成になってまして、やはりドライマウスにお悩みの方は試す価値があるかもしれません。

 

 

ということで、ここまでの話をまとめると、こんな感じになります。

 

  • キシリトールが虫歯予防になる可能性はあるが、現時点でのデータだと判断はしづらい。

 

  • キシリトールでドライマウスが改善する可能性もあるが、こちらはさらにデータが少ない。いちおう米国小児歯科学会が認めた商品はあるので、ドライマウスに悩んでいる人ならつかっても良いとは思う。

 

まー、いまのところ間違いなく虫歯予防の効果が認められた成分はフッ化物だけなので、個人的には、キシリトールにこだわるよりはフッ化物がちゃんと入った歯磨き粉を使うのを優先したほうがいいよなーとは思う次第です。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。