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2023年4月に読んでおもしろかった5冊の本と、20冊分の漫画と、その他の3本の映画と1本のライブ

 

月イチペースでやっております、「今月おもしろかった本」の2023年4月版です。ここで取り上げた以外の本や映画については、TwitterInstagramのほうでも紹介してますんで、合わせてどうぞー。しかし、もう4月も終わりかぁ……。

  

 

 

 

ルポ 筋肉と脂肪 アスリートに訊け

 

ガチの身体づくりはアスリートに聞け!ということで、有名エッセイストが各界のプロへのインタビューを重ねた一冊。相撲、マラソン、プロレスなど、それぞれの競技に特化した肉体づくりのコツと、アスリートたちの徹底した肉体管理が掘り下げられていて、めっちゃおもしろいです。

 

なかでもプロレスラーの肉体づくりが興味深く、ちゃんと動けるための身体だけでなく、観客を楽しませるエンタメ要素を持った身体づくりの作り方まで熟考する様子には感動させられますね。プロレスにくわしくない私でも棚橋選手の名前は知ってましたが、観客が求めるエンタメ要素を掘り下げたあげく、そこにアジャストする肉体づくりを徹底していて、「なんて頭が良いのだ!」と、こちらにも感動した次第です。

 

 

 

人間のはじまりを生きてみる: 四万年の意識をたどる冒険

 

動物になって生きてみた」もおもしろかったジャーナリスト、チャールズ・フォスター先生の新刊。今作は、狩猟採集生活と同じような暮らしをしつつ、当時の暮らしをシミュレートしてみる内容になっております。

 

が、そう言うと、誰もが「なるほど。原始人の暮らしを再現するおもしろドキュメンタリーか」と思うでしょうが、そう思って読み進めると肩透かしをくらうのでご注意ください。というのも、著者の興味ってのは、「現代文明が当然となる前の人間はどのような感覚を抱き、どのようなフィルターで世界を見ていたのか?」ってとこに向けられていて、「ジビエを食べてみた!」とか「ゼロから火を起こしてみた!」みたいな話題が展開されるわけじゃないんですよ。

 

私の本でいうと「無(最高の状態)」に近いとこもありまして、要は「論理と抽象が当たり前になった時代では味わえない意識」みたいなもんを掘り下げてるんですな。なので、本書の記述には眠気を覚える人もおりましょうが、こういう話が好きな人にはガッツリおすすめ。

 

 

 

角川まんが学習シリーズ 世界の歴史 全20巻定番セット

 

世界の歴史マンガの角川版。この手の本には「小学館版」「学研版」「集英社版」などがありますが、従来版よりも「横の歴史」が強調されていて、「この事件が起きた時に、また別の地域では何が起きていたのか?」を意識した作りになってます。なので、「これから受験用に世界史の流れを押さえたい!」という用途で使うなら、この角川版がベストでしょうな。

 

ただし、角川版では、全20巻のうち半分が近現代史に当てられてまして、それ以前の時代は、ページの配分が超マッハなんですよね。特に中世のあたりは展開が速く、ツワモノどもの栄枯盛衰がハイペースでくり広げられていくもんで、「あれ?いまなにがどうなってるんだ?」と思わされることがしばしばでありました。18世紀より前の時代に興味がある方は、他のバージョンで補完したほうがいいでしょうね。

 

 

 

歴メシ! 決定版

 

古代メソポタミアから神聖ローマ帝国まで、各時代で食べられてきた食事を再現したレシピ集。前半が古代食のレシピ集で、後半は歴史メシに関するエピソード集になってて、読み物としても楽しかったです。

 

当たり前ですが、穀類系の料理を除けば、全体的に健康食のレシピとしても使える作りになってまして、普段は料理をまったくしない私も、ちょっと作ってみたくなりました。あと、コラムの中に「古代メソポタミア人はパンが好きで、『パンの後に食べる用のパン』を作っていた」って話が書いてあって、「古代メソポタミア人かわいいな!」って気分になりました。

 

 

 

 

蛇の言葉を話した男

 

西洋文明に追いやられた少数民族の男が、近代化に最後の戦いを挑む様子を描いた、エストニア産のダークファンタジー。全編にわたって社会風刺を散りばめつつも、バトル系ファンタジーとしてのエンタメ要素も保ちつつ、細部では「百年の孤独」的なマジックリアリズムを炸裂させて………って感じで、ありそうでなかったバランスがいいですね。「百年の孤独」は読みづらい!みたいな方が、マジックリアリズム入門として読むのもいいかも。

 

 

 

献灯使

 

大災害後の日本。老人が死ねない体になる一方で、若者は生まれつき病弱に変わり、政府は鎖国政策を行い……みたいな様子が描かれる短編。311にインスピレーションを受けた小説で、このタイプの文学は、放射線と遺伝子の扱いが雑だなーと思うことが多く、鼻白んだまま終わることが多いんですが、今作は「鎖国語の言葉の変化」や「身体の変容によって起きる関係性の変化」など、細かいところまで想像力が行き届いていて、ディストピアシミュレーションSFとして、めっちゃよかったです。

 

 

 

BLUE GIANT

 

世界一のジャズプレイヤーを目指す青年の話。原作未読で挑んだところ、上原ひろみ先生の音楽は最高だし、嫌な人間をほとんど出さずに「難しい目標に挑む際に必ずともなう困難」にフォーカスした作劇も好ましく、ガッツリ感動させられました(それだけに「事故の展開いるか?」とだけ思いましたが)。今作のように、フロー体験にとりつかれた人間を描く作品って、過去にもいろいろありましたけど(「孤高の人」とか)、「BLUE GIANT」はバランスがよいですよね。

 

ちなみに、ジャズの本職の方からは「ジャズはスポ根じゃないんだけどなぁ……」という意見も聞きましたが、フロー体験系の作品と考えれば、まぁ気持ちはわかるけどいいのでは?ぐらいの気持ちです。

 

 

 

バカリズムライブ「fiction」

 

配信で見ました。「ブラッシュアップ・ライフ」やった直後に、なんでこんな面白いものが作れるんだ……。

 

 

 

その他もろもろ
  • 生きる-LIVING:言わずとしれた名作のリメイク。演出、演技、撮影などすべてがハイクオリティで、下手すりゃ黒澤版より好きかもしれないレベルで良かったです。「生きがいがない……」と思いつつ日々を過ごしている方は、ぜひご覧ください。

 

  • ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り:予告編だけ見て完全になめてたら、超ウェルメイドな活劇でビビりました。キャラ描写はうまいし、どのシーンにもひねりがあるし、構成も練られているしで、このバランス調整は大変だったでしょうねぇ。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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